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Scene12 七鮎川円花と俺の部室棟

第67話

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俺は昨日乱暴にしてしまった分、優しくウツを扱う。
高天原宇宙の肉体に指を這わせる。
丁寧に、慎重に、ネットリと。
ウツの体中を耳元から足の指先まで。
ソフトタッチで撫で上げ、軽いキス。
緩急をつけ、たまに強い愛撫も混ぜていく。
ウツが自分からねだるまで徹底的に。


「真悟くん、朝から時間かけ過ぎだよ。
 円花ちゃん達が起きてきたらどうするつもりだったのさ」
「しばらくは起きて来ないと言ったのはお前だ」

俺とウツはシャワーを浴びる。
ウツはドライヤーも使わず、長い髪を放っておく。

そんな彼女を俺は鏡の前に座らせる。
ドライヤーを当てながら髪をブラッシング。

「ううー。この生暖かい風が頭に当たる感じが気持ち悪いんだよね。
 真悟くんがするんだから我慢してるんだよ」

終わった頃、円花たちが寝ぼけ眼で起きて来た。


俺達は部室棟に行く。
魔法少女で財閥のお嬢様で俺のセフレ・七鮎川円花【ななあゆかわまどか】。
一見美少年その正体は凶器を隠し持つ美少女・五古河逆【ごふるかわさからう】。
ウツは残って情報収集。
学校中を盗撮する変態、余計な知識ばかりのチリ紙女・高天原宇宙【たかまがはらうつ】。

円花が部室棟に武器が有ると言うのだ。

「以前は文化部の方の活動場所だったのですけれど、
 今は運動部の方たちの用具置き場になってますわ」

「第二校舎が出来たのが三年前。
 そちらに職員室、PC部屋、視聴覚室やらを移したんだ。
 その分第一校舎の空いたスペースを文化部の部屋として開放したんだよ」

何故かウツまで詳しかった。
保健室から出た事など無いくせに。

「この学校に第二校舎作ったのは僕の為だからね。
 今ある校舎に地下施設作るのは手間だろう。
 最初から地下施設付きの新設校舎を建造する方が面倒が無いってモノさ」

ウチの学校に校舎が新設されたのはウツのせいらしい。
いったい幾ら金がかかってるんだ。


「高天原ですからね。造作も無い事でしょう」

部室棟に向かいながら、円花は言う。
そうなのか。

「無理だぜ、七鮎川の。
 俺達五古河に七鮎川、二澄友、六家の名前はみんな知ってるだろうが、
 高天原は表に名前を出さない。
 一般の人間は聞いた事も無い筈だ」

「そうでしたわね。
 逆さん、円花と呼んでくださいと言ったでしょう」
「うん?ああ、まだ慣れないんだよ、円花」

「お前もさんを付けるな。
 逆でいいぜ、円花」
「はいっ、逆」

ずいぶん仲良くなったみたいだな。

「はい、昨夜は女子三人でずっとお喋りしてましたから」
「円花は酔っぱらってただろ」

「逆だって呑んでいたでは有りませんか」
「オレは酔うほど呑んじゃいない。
 非常時に対応できないからな」

円花が足を止めて、逆の方に向き直る。
真剣な口調で言う。

「わたしあんな風に同世代の友人たちと夜を過ごしたのは初めてなのです。
 楽しかったです。
 感謝しますわ、逆」

「フッ、改まってなんだ。
 そういう時は『又呑みましょう』でいいんだ」

逆はカッコつけてそっぽを向くが耳が赤くなってる。

「分かった。
 酔っぱらってからの介抱は俺がしよう」

「お前はダメだ」
「そうです。
 逆の身体には指一本触れさせません」
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