上 下
53 / 191
Scene09 五古河逆と俺の夜の保健室

第53話

しおりを挟む
「横に少し前、侵入者が入ってきた時からの映像を出すよ」

モニターに別のウインドウが開く。
同じ保健室。
しかし、円花も逆も寝ている。
保健室のベッドは四つ。
逆が窓際に、その横に円花、そしてネコだった死体。

「およそ15分前だね、音声も出すよ」

寝息だけが聞こえる保健室。
その隅に何かが現れる。
何も無かった空間に幾何学的な模様。
更には見た事が有るような象形文字。

「魔法陣なのかな、図形自体は見た事の有るパターンだ。でもこの文字は、何だろうルーン文字では無いね。ヘブライ語かな。それとも天使の文字と言われるエノク語の方かな。
 天使の文字からヘブライ語が作り出されたと霊視者エドワード・ケリーとジョン・ディーは主張してたんだけど。研究するとヘブライ語を元に二人が創作した言語じゃないかと、今ではそう言われてたりもするね」

ウツはヒトコト五月蝿い。
ヒトコトと言うか百コトくらいは五月蝿い。

映像には空間に映し出された幾何学模様の中に現れる何かが映し出される。
四角い人影。
更にもう一人、黒いフードを被った細身。
細身の方はフードで顔を隠している。
四角い方は……
人間ではない。

「ダンボーかな。『よつばと!』でみうらちゃんが作ったロボット。
 段ボール製なのがカワイイよね。世界最強の段ボールでミサイルも発射できるし、空も飛べるんだ。チートロボットだよね」

そのマンガは俺も読んだ。
ウツがオススメの最有力と言って押し付けてきたのだ。
確かに面白かった。

しかし画面に居るのはその小学生が作ったロボットでは無い。
石製だろうか、ゴツゴツした素材で出来た人影。
パッと見、全身鎧を着ているように見えなくも無い
だが、鎧から覗く生身が無い。
顔まで角ばっており、目に当たる部分は空洞、光る二つの物体が浮かび上がる。
これは寧ろ。

「嫌だなー。ダンボーちゃんはジョーダンだよ。ゴーレムだね、ゴーレム」

「所沢市はどうなっちゃったんだい。ゾンビはうろつく。宇宙刑事は現れる。魔法少女は出現。更にゴーレムが出て魔術師らしいのまで出てきたのかい。
 KADOKAWAの仕業かな。さすが大企業の総力。所沢も都会の田舎、トトロの森が似合う憩いの場所からサブカルチャータウンへ。サブカルの聖地に相応しい場所になろうとしているのかい」

だからウツは百コト多いと言うのだ。
しおりを挟む

処理中です...