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Scene07 猫屋敷三毛寝子と俺の屋上

第44話

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「円花お嬢様はどうしたのだ!」

ネコが逆に向かって騒ぎたてる。

「上だ」

屋上を指さす逆。

「俺だって三人は連れて降りられない」

ははあ。
屋上まで円花を連れて上がり、そこで降ろす。
そして二人を連れて降りて来た訳だ。

「円花お嬢様を連れて行く必要が無かろう」
「煩いな、七鮎川のが一緒に上がると言って聞かなかったんだ。
 文句は七鮎川に言え」

俺はそんな事より気になっていた事を尋ねる。

「逆、お前少し体が細くなっていないか?」

逆は上半身Tシャツ。
少し前まで筋肉で押し上げられゴツイ男の様な肉体だった。
それが今、少しダボっとしたシャツ。
胸元からは胸の谷間らしき物も見える。
少し前までそんな魅惑の谷間は無かった筈なのだ。

「ん、ああコイツだよ。
 ロープを身体に巻き付けてたんだ」

逆は屋上から垂れたロープを指さして言う。
ロープを上半身に巻き付けてた。
だからゴツクなっていたと。
Tシャツの上からロープなんて見えてなかった。
円花は言っていたような気がする。
暗器、服の中に隠しておく武器。
五古河はその専門家だと。

良く分からんが、普通にロープを巻き付けただけでは無い。
それで目の前に有る魅惑の肉体が筋肉質な男に見える筈も無い。
何かしら特殊技能。
専門家と言うのはそういうモノなのか。

「なら逆、私もつれて行け。
 二人までなら連れて降りれるのだろう」

ネコが言う。

屋上までネコを背負ってく。
屋上から円花とネコ、二人を連れて降りて来る。
そういう計画のようだ。

「重いんだよ、今七鮎川だけ連れて来る。
 それでいいだろ」
「駄目だ。
 お嬢様が今どんな心境でいるか。
 世を儚んで飛び降りでもしたらどうする。
 屋上の金網には扉が開いているのだろう。
 ああっ、円花お嬢様早まらないでください。
 ネコが今すぐおそばに参ります」

俺のポケットでスマホが鳴り出す。
俺は革ジャンからスマホを取り出す。
ん、これじゃ無いな。
俺のスマホは呼び出し音が鳴らない設定。
ズボンのポケットに有った新しい端末。
ウツに貰った衛星スマホ。

出て見ると聞こえづらい。
ブッブッと音が飛ぶ。
それでもウツの声が聞こえる。

「真悟くん、気を付けて。
 その周辺何かがおかしい。
 こんなに衛星の電波が乱れる筈が無いのに電波が。
 何かが起こってる」
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