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Scene06 猫屋敷三毛寝子と俺のトイレ

第37話

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俺はカップ焼きそばを食べながらモニターを眺めてた。
地下のモニタールーム。
昼飯時の楽しみとしてウツの勧める映像を見せられたのである。
高天原宇宙、通称ウツだ。

「なんだ結局ゾンビ映像じゃないか」
「カップ焼きそば美味しいよね。真悟くんはUFOかい。僕はやっぱりペヤングだね。この栄養は無いのにカロリーのカタマリという食べ物。深夜に食べるカップ焼きそばなんて自分の肉体を虐めるだけと分かっていても食してしまう魅惑の一品、至高の快楽と言えるよ」

いやカップ焼きそばにそんな拘りは無い。
ネコ耳メイドが作ったサンドイッチは絶対俺にやらんと言うのでウツの用意してたインスタント食品から適当に食べただけだ。

しかし食事時にゾンビ映像も向かないだろうと言うから見てたのに。
文化部の少女とその取り巻きが次々死んでいく。
にしても、屋上に居た生徒。
一人は女子だったのか。
なら、助けてやるべきだったか。

「なかなか、青春してるムービーだと思ったのに。
 真悟くんのお気に召さなかったかい」
「あの男はダメだろう。
 怯えている女子を安心させてもやれないとは。
 俺なら抱きしめてゾンビの事など忘れさせてやったぞ」

「はははは。
 真悟くんならあのまま屋上でアオカンだったかい。
 男4対女2の6Pだね」

そんなのはゴメンだ。
むさ苦しい。
男女比を逆にしてくれ。

七鮎川円花が猫屋敷三毛寝子を睨む。

「ネコどういうことですー。
 あんな辛い目に遭ってる一般市民を見捨てるとは。
 恥ずかしく無いのですかー」

「いえ、あのその。
 えーと、お嬢様の無事を確かめるのに頭がいっぱいで。
 他の人間の事など、気にしてる余裕は無かったといいますか。
 正直に言うと眼中に無かったと言いますか」

「正直に言ってどうすんだよ」

五古河逆のセリフだ。

「貴方もですわ。
 貴方ならあの二人を助けるくらい簡単だったでしょう。
 何故助けてあげなかったんですの」
「そりゃ、オレの仕事じゃ無いな。
 お前の親からの依頼でオレはここに来てる。
 目的は七鮎川円花の護衛。
 そのためにこのメイドも連れて、メイドの指示は聞くよう言われてる。
 このメイドだって、余計な人間を助けろとは言わなかったぜ」

「貴方だって、五古河の令嬢でしょう。
 一般市民を助ける意識くらい持ってる筈ですわ」
「あのな、七鮎川の。
 オレは兵士だ。武力だ。暴力であり凶器なんだ。
 武器が自分の意思で人を切ったり助けたりするか。
 オレは命じられた通りに動く。
 武器は余計なコトは考えない。
 五古河家ってのはそういう家だ」

逆【さからう】はオレ等と言ってるが女だ。
Tシャツの胸元は盛り上がっているが女性らしい丸みをあまり感じさせない。
鍛え上げてるのであろうゴツイ身体なのだ。
しかしウエストから尻にかけてのラインは女性のモノ。
俺の目に間違いはない。

「七鮎川円花を横須賀まで連れて行く。
 それでオレの仕事は終わりだ」
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