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Scene05 高天原宇宙と俺の地下室

第26話

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地下室へと降りる俺達。
初めて来た者は正面のモニターに目を奪われる。

俺も初めて来た時は驚いた。
部屋の壁一面のモニター。
画面にはいくつもの光景が映し出される。
校庭、俺の車が停めてある。
屋上、正面入り口、下駄箱、階段、駐車場、食堂。
先程までいた保健室も映ってる。

スーパーなどでバイトした経験が有る者なら見た事が有るだろう。
防犯カメラの映像をモニターに分割して映し出す。
目の前に有るモノはその巨大版。
見上げ無ければいけない高さ。
首を横に移動させなければ見れない横幅。
映し出される光景も16分割どころでは無い。
幾つあるのか数える気にもならないが、少なくとも100は越えている。

「やあやあ、草薙先輩。僕の部屋にようこそ。
 久しぶりに来てくれたと言うのに、女性を三人も連れて来るとはツレナイじゃないか。ご主人様の来訪を今か今かと待ちわびていた僕に対してあんまりな仕打ちじゃないか」

ソファーに腰掛けてモニターを眺めていた人物が俺の方を振り返る。
高天原宇宙。

顔色が悪いな。
日に当たった事など一度も無いかのような白い肌。
目の下には隈が出来ている。

「ウツ、顔色が悪いぞ。
 ちゃんと食事をしているか」
「もちろんだよ、真悟君。
 今朝もダークモカチップフラペチーノを飲んだし、ゴディバのバーミルクマカダミアを食べたんだよ」

「チョコだけじゃないか。
 それは食事と言わない」
「そんな事はないさ。チョコレートを食べれば生きていくための栄養なんてだいたい補給できるよ。チョコの栄養成分はポリフェノールだけじゃないんだよ。アーモンドチョコを食べれば食物繊維だって含まれてるし脂質だって摂れるのさ」

チョコレート万能説か。

俺はウツのソファーに近付く。
少しビクっとする彼女。

「ブラシ有るか」
「ああ、もちろんさ」

ウツの髪はボサボサ。
長い髪を恐ろしく適当にゴムでまとめてる。
俺はゴムを外して髪の毛にブラシをかける。
長いストレートの黒髪。

「毛先が傷んでるぞ。
 美容師さんに来てもらえ」
「嫌だよ。先輩が切ってくれ」

「女性に鋏を向けたくない。
 前にも行ったはずだぞ」

ウツは目を閉じて俺に頭を預けてる。
親猫が毛先を舐めて整えるのに身を任せた仔猫のよう。
 
「このモニターは。
 このカメラは何ですの」

七鮎川円花は騒ぎ出す。

「何だい。騒がしいね。
 今僕は草薙先輩との逢瀬を楽しんでいるんだよ。
 邪魔しないで欲しいな」

「貴方、宇宙さんと仰いましたか。
 このモニターはあなたの物ですの?」

「このここのところの映像。
 これは女子の更衣室です。
 それにこちらに映ってるのはおトイレですわ。
 女子だけじゃなくて男性用まで有るじゃありませんか!」
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