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Scene03 七鮎川円花と俺の車

第21話

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「アイスビュレットは何発くらい使えるんだ」
「10発くらいなら。
 それ以上は分かりませんわ」

氷を腹に受けたゾンビはそのまま近づいてくる。

「いやー、血まみれなのが近付いてくるー」
「そろそろ、慣れろよ」

「無理です。
 まったく動じない草薙先輩の方がおかしいんですわー」

そうなのか。
確かにホラー映画では男だってゾンビに襲われたら怯えていたな。

「むっ、何故死体が動いているんだ。
 恐ろしい、俺は恐ろしいぞ」

・・・・・・。
やめたバカバカしい。
死体が動くくらいどうだと言うんだ。

しかしどうするか。
先頭のヤツをバットで打って倒す。
それは出来るだろう。
しかしその間に後ろから来るゾンビに襲われる。

おい、ウツ。
見てるんじゃないのか。
何かフォローしろよ。
チリ紙くらいの役には立って見せろ。

俺が考えると同時にアイツも呟いたかもしれない。

嫌だよ、真悟君の真価を見るチャンスだもの。
こんな機会はそうそうないもの。
それに。
僕は真悟君のシモの世話はいつでも引き受ける。
喜んで股間だって尻の穴だって舌で舐めとってあげる。
けれど。
ピンチの時に助けたりはしないんだよ。
だって真悟君にとって僕はティッシュ。
体液を拭き取ってポイと塵箱に捨てる。
それ位の存在なんだ。

六体のゾンビが近付いてくる。
こちらは俺と円花、二人だけ。
傍から見たら絶体絶命のピンチかもしれない。

しかし助けが入る。
魔法少女がピンチの時は助けが入る。
大体そう決まってる。

それは銃声だった。
パン。
パン。
乾いた音が響く。

ゾンビが頭部から体液を吹きこぼしながら倒れる。

と同時に人影が飛び込んでくる。
人影はゾンビに凶器を突き立てる。
小型の槍のような物。

ゾンビの頭を抜けて凶器が飛び出る。
素早く人影は凶器を引き抜き、次のゾンビの頭部を貫く。

槍と言うには短い。
60センチ程度。
先端が鋭く尖る金属。

凶器を両手に持っているな。
もう片方の手で更にもう一体のゾンビを刺す。

頭部に穴の開いたゾンビはゆっくりと倒れる。

パン。
また銃声が響く。

瞬く間に六体のゾンビが動かなくなっていた。

「お前、七鮎川円花だな。
 本人で間違いないか?」

凶器を持ったヤツが言う。

「俺は五古河逆。
 お前の護衛を頼まれた」

五古河逆、ごふるかわさからう。
俺は名乗るのを聞いたが、どういう字を書くのかまだ知らない。
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