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Scene03 七鮎川円花と俺の車

第17話

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俺はコンビニのレジ台側に入る。
レジスターは打ち壊されてた。
中に入っていたであろう現金が奪われてる。
残ってるのは一円玉くらい。

五円以上は全部持っていったのか。
セコイ盗人だ。
生き残りの仕業だろう。
多分ゾンビは現金を欲しがらない。

レジ台内部を円花は物珍しそうに眺める。

「へー、こんな風になってるんですのね。
 ビニール袋に割りばし、ウェットティッシュも有りますわ」

俺はレジ奥の扉を開ける。
店内にはロクな物が残って無かった。
チョコもスイーツも無い。
カップ麺の類も無い。
俺はコンビニのシュークリームは結構好きなのだ。
バックヤードに残って無いだろうか。

残念ながらバックヤードにシュークリームは無かった。
有ったのはペットボトルのケース位。
他にはゾンビ。
コンビニの制服を着たゾンビが二体いた。

ゾンビが一体俺に向かってくる。
コンビニの制服を着た男。
俺はバットを頭に打ちつける。
頭蓋骨が奇麗に二つに割れた。
頭から体液と脳漿を飛び散らせる。
そのまま男ゾンビは動かなくなった。

やはり頭だな。
頭部を破壊すれば動かなくなる。

俺はもう一体のゾンビを眺める。
こちらは女性ゾンビ。
何故女性と分かったかと言えば。
ズボンが脱げてる。
下半身には女性物の下着。
ブルーの縞模様。
なかなか可愛らしい。

惜しむらくは履いてる人型の存在の肌が蒼黒い事だ。
これで健康な人間の肌だったら素敵な光景だったハズ。

女性ゾンビが立ち上がる。
ノロノロと俺に近付く。
スボンだけでは無い。
制服が半分脱がされている。

何が有ったのか。
夜ゾンビから逃れバックヤードに隠れた。
どちらかその前に噛まれていたのか。
片方がゾンビ化してしまった。
そうなる前に二人でお楽しみしようとしていたのかもしれない。
生命の危機に生物は性欲が旺盛になると言う。

胸元に身分証がヒラヒラする。
健康そうな若い女性の写真が写ってる。
目の前の蒼黒い死体とは似ても似つかない。

「草薙先輩、何か有ったんですか」

レジ台を物色してた円花が入ってくる。
ゾンビを見て血相を変える。

「円花、ウォーターエクスプロージョン使えるか」
「はい、先輩」

俺は女性ゾンビの始末を円花に任せる。
いくら死体と成り果てていても。
健康そうな若い女性の写真。
元あの女性だったモノをバットで打ちたくないのだ。
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