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Scene03 七鮎川円花と俺の車

第15話

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「食料やお水も要るのでは有りませんか」
「とりあえず、学校までだ。
 そんなには必要ない」

最初の目的地は高校と決めている。 
学校は公共施設。
非常用食料なども置いてあるだろう。

「学校ですか。
 そうですわね。
 わたしたちは学生でしたわ。
 勝手に授業を休む訳にいきませんわよね」

いや。
授業を受けに行くんじゃないぞ。
それに通常授業をしている可能性は低い。
99パーセントやってないだろう。

「でしたら、何をしに?」

知り合いがいる。
保健室の主。
普段はティッシュ位の役にしか立たないが。
こんな時にこそ役に立ちそうな人材。

「学校へ行ってから、
 円花の家に行こう」

円花も家族が気になっている様だが、高校の方が近いのだ。
現在、俺達ははかなり特殊な状況に置かれている。
恐らく学校で情報収集も出来ると思うのだ。

俺は車に向かう。
家の裏口が駐車スペースへ繋がっている。
駐車スペースのシャッターを上げる。
シャッターの表には打たれた様な跡が有る。
ちゃんと役目を果たしてくれたらしい。
壊されずにゾンビの侵入から防いでくれたのだ。
シャッターを上げた途端。
ゾンビに襲われる。
そんな事も無く、車で車庫から出た。

外は明るい。
住宅街に動く死体は見当たらない。
だけど昨夜の事は夢じゃない。
何故なら、辺りは血で溢れてる。
通りに人間の肉片らしきものが落ちている。
隣の家が燃え落ちている。
そう言えば焼け移る心配をしなかった。
隣の家は塀で覆われてるし、俺の家と離れてる。
あまり気にせず寝てしまった。
下手したら寝たまま蒸し焼きにされていたかもしれないな。

向いに突っ込んだ宅急便のトラックが邪魔。
俺の車が通る事が出来ない。

「ちょっ、ちょっ。
 草薙先輩ー!
 何するんですのー」

「いやー!
 やめて、やめて」

俺が円花を襲ってるみたいな悲鳴を出すなよ。
車でぶつかってトラックの車体をずらしただけだ。
トラックの荷台部分は狙い通りズレた。
これで大通りに出られる。
円花も俺もシートベルトはしていた。
大したことは無い。

「大した事有ります。
 大した事有りますわー!」

「車が壊れてしまいますわ」

確かに車体の先が少しへこんでる。
がその程度。
走行に影響無い。

「外国の車ですのね。
 小さい割に頑丈そうですわ」

小型車じゃないと日本の車道は走りにくい。

「ああ。
 ボルボXC40。
 小型車の割にトップクラスに頑丈だと言うんで買った物だ」

「先輩の御父上は海外に赴任中でしたわね。
 現地で買った車なのですか」

ああそうか。
父親が買った車なんだっけ。
いつも家に両親が不在なので不審に思った円花にそんな事を言ったかもしれない。

「そんなところだ」

俺は大通りへと車のハンドルを切りながら、そう言った。
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