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Scene02 七鮎川円花と俺の部屋

第14話

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俺は円花にも酒を勧める。

「ええーっ、お酒ですの。
 草薙先輩、不良ですわ不良」
「一度も呑んだこと無いのか?」

「まあ、お正月に日本酒くらいは親戚に勧められて……」
「日本酒が呑めりゃ、ワインもいけるさ」

顔には吞んでみたいと書いてある。
なのに、いやでも駄目ですわ等と言う。
俺は強引に呑ませる。
円花はまだ情緒不安定気味。
酒でも呑ませて寝かしちまおう。
ああ、もちろん寝る前にやることはやった。
酔ってトロンとした円花に何度も言わせた。

「真吾さん好き。好き、大好き。
 円花はあなたのモノです」

蕩けた表情の美少女が俺に言うのだ。
俺は興奮した。
七鮎川円花 蕩れー、と言うヤツだ。

俺は最初に一杯呑んだだけ。
呑み過ぎはしない。
二階にゾンビが押し寄せてきたらどうする。
2人とも酔って良く寝てましたという訳にいかない。
それに呑み過ぎると男性機能にも支障をきたす。
それだけは避けたい。

あくる朝、俺は早めに目を覚ます。
スマホを見るとまだ五時半だ。
昨日は早めに寝てしまったので睡眠時間はタップリ。
俺がゴソゴソしてると円花も起きて来た。

「おはようございます、真悟さん。
 なんだか照れますわね」

2人きりの時は先輩じゃ無く真悟と呼ぶように言ったのだ。
円花は顔を赤らめている。
ちなみに彼女は俺の家に泊まった事は無い。
少しばかり遅い時間になっても必ず家まで帰った。
家の者が心配しますのでと円花は言っていた。
お嬢様らしいしな。
両親も厳しいのだろう。
しかし昨日の夜帰るのは軽く見積もっても自殺行為だったのだ。
重く見積もった場合、ゾンビの仲間入りして動く死体として永遠に呪われて過ごす事になる。

「コーヒー淹れますわ」

円花は言う。
夜明けのコーヒーを恋人と飲む。
憧れていたらしい。
一階にコーヒーメイカーは有った。
しかし彼女は使い方を知らないらしい。
結局俺がほとんどやるハメになった。

コーヒーメイカーがポコポコと音を立てる。
後は待つだけ。
香りを楽しみながら一階を家探し。
この辺の収納にDIY道具が有った気がする。

武器に使えそうなのは。
ハンマー。
折りたたみ式ノコギリ。
そんなもんか。
チェーンソーでも欲しかったところだが。
生憎DIYにあまり興味は無かった。
アウトドアにも興味ない俺はリュックサックも持ってない。
両肩に背負える3WAY革バッグが有った。
そこに使えそうなものを放り込む。

「草薙先輩、包丁は?」

円花が台所から包丁を持ってくる。
いや、包丁の刃先を俺に向けるなよ。

うーん。
ゾンビに包丁は効くだろうか。
あまり刺して倒せそうな気はしない。
それに包丁じゃリーチが短い。
相手に近付かないと刺す事が出来ない。
バットと同程度にはリーチの有る武器が望ましい。

「じゃあ、置いていきますか」

鞄には入れておこうか。
包丁の刃を仕舞える鞘が無いかな。

「タオルで包みましょうか」

だから、包丁の刃先を俺に向けるなってのに。
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