チート能力「看守」を使って異世界で最強と言われる

唐草太知

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俺はショップに戻る。
「お帰り・・・おっ?」
エコは暗い顔をしていたが、
俺の顔を見るなり、笑顔になる。
それもそうだろう。
隣に見知らぬ男が連れられていたのだから。
誰だってそう思う。
財布を盗んだ男なのだと。
そして、同時にこうも思う。
「エコ・・・」
「分かってる、皆まで言うな。
その男なんだろ、財布を盗んだのは」
「あぁ・・・そうなんだが」
「いやぁ、よかったなぁ。
帰ってくるって信じてたんだよ。
やっぱり神様ってのは良いことした人間に
見返りをくれるんだなぁ」
エコは嬉しそうだ。
その顔を見せられると、余計に言いづらくなる。
「あのな、聞いてほしいんだが」
「これで・・・店が商人の元に来るんだ。
夢が叶うんだ、あはは!」
エコは楽しそうに笑う。
俺は我慢できずに声を荒げてしまう。
「聞いてくれ!」
「どうしたんだよ・・・良い報告なんだろ?」
「それは」
俺が暗い顔のままなのを見て、ようやく察する。
「なんだよ・・・おい。
なんなんだよ、おい!」
「お前の口から言え・・・ボロ」
男は口を開く。
「えぇっと、その、何だ。悪いけど使っちまった」
「はぁ?」
エコの顔が変化していく。
それはとても醜悪なものに。
「この国にもギャンブルみたいなのはあるんだ。
自分はさ、結構そういうの好きでね。
最初見たときは、こんな場所にあるんだって驚いたんだけどさ、でも、あったら、やってみたいなって」
「そういうことじゃねぇだろ!?」
エコは苛立つ。
「でもよ、どうしてもやりたくて」
「どうして商人の金でやるんだよ!」
「怒りは分かるが、抑えてくれよ、な?」
「盗んだてめぇが言うんじゃねぇ!」
エコは怒り出す。
止めなくては。
エコが暴力を振るおうとしたから止めるのではない・
いや、勿論こっちも止める必要がある。
でも優先すべきはこっちだ。
そう、ボロの方だ。
彼はナイフを隠し持っていた。
「ぐっ」
「それは・・・違うだろ?」
俺は足に引っ掛けてある手錠を引っ張る。
すると、ボロは転ぶ。
「この野郎、人の金を盗んでおいて商人も殺そうとしたのか?」
「落ち着け、エコ」
「落ち着けだと、被害者でもない第三者が!
だから冷静で居られるんだろうが!」
「正論どうこうってより、
そういうのは嫌いなんだ」
「アンチ暴力ってか?」
「そういうんじゃない、ただ復讐心ってのが好きじゃないんだ」
「屁理屈はうんざりだ」
「それでも殺させるわけにはいかない」
俺は神具を起動させる。
手のひらに力を込めて、握りこぶしを作る。
すると手の中に違和感が発生する。
手を開いて確認すると、
手の中に手錠が出現したことに気づく。
俺はその手錠を投げて、
店の支柱と彼の腕をつなぎ合わせた。
「この・・・!」
手錠が引っかかって殴りかかろうとしても届かない。
「エコ、やめろ」
「くそっ!」
エコはその場で座り込むことしか出来なかった。
あまりにもその姿は哀れで同情を誘う。
「エコ」
「なんだよ・・・笑えよ。
夢を追いかけて失敗した滑稽な男よ」
「そんなつもりはない」
「じゃあ、なんだってんだ」
「何か対策を考えよう」
「そんな戯言は聞きたくない」
「何もしないよりかマシだろ?」
「放っておいてくれ」
「エコ」
「何処か行けよ、その馬鹿を連れてよぉ!」
エコは子供っぽく、その場で暴れてみせる。
だけど、自分の店は壊さないあたり、
店というのに愛着を持ってるんだろうなと感じた。
「あぁ、何処かに行くよ。
行くぞ、ボロ、イリンクス」
俺は彼らを連れて、この場を離れた。
ゴミの山を背景に、街を歩きながら話しする。
「それにしても、何でギャンブルなんかしたんだ」
俺はボロに尋ねる。
「えぇっと・・・面白そうだから?」
「手持ちの金は無かったのか?」
「来たばかりでね」
「なるほど、俺たちと似たようなものか」
「それなら、ギャンブルをしたいって気持ち分かってくれるだろ?」
「人の金を盗んでまではやりたいと思えないな」
「いいんだ、自分にとっては意味あることだし」
「事情を話して、そのギャンブル相手から金を返してもらうってのは出来ないものだろうか」
「さぁ、誰と対戦したのかも覚えてない」
「おいおい、盗んだ金とはいえお前から大金を奪った金だろう。忘れたなんてあり得るのか?」
「人から盗んだ金なんだ、思い入れも無いからな」
「変な説得力があるな」
あまり良い説得力ではないが。
「それで、自分をどうするんだ?」
「金策が上手くいけば開放するさ」
俺はボロにつけた手錠を見る。
「まぁ、犯罪者は犯罪者らしく大人しくするさ」
ボロはやれやれって感じて手を広げる。
「当然だが、お前にも手伝ってもらうぞ?」
「分かってますよ、旦那」
「それにしても、どうすっかな」
良いアイディアが思いつかない。
「誰かから盗むとか」
「バカ野郎」
俺はボロの頭を叩く。
「ってぇ~」
ボロは頭を抑えて痛そうにする。
「先生に相談しては?」
「イリンクスの言う通りだな、先生の所に行くか」
「先生?」
「ボロは知らないか、医者だよ、医者」
「へぇ、こんな錆びれた国に医者ねぇ」
「優秀なんだ、友達を助けてくれる」
「なるほど、損する性格の人物ってわけだ」
「ウィンの所に行ってみるか」
俺たちはウィンの居る場所へ移動する。



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