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翌朝、俺は眠れた。
昨日は命が危険ということもあって、
心配で眠れなかったが、今日は別にそんなことはない。峠を越えたと言ってたので、大丈夫だろう。
目覚めて、俺はイリンクスの元へ向かう。
彼女は今日も外だった。
「起きてたのか」
「はい」
マントに雪が積もってる。
「中に入らなかったのか」
「壊してしまいますので」
「屈んで入ればいいのに」
「平気です」
彼女は頑なに入ろうとしない。
迷惑をかけると思ってるのだろう。
「ウィンの奴も気にしないと思うがな」
「いえ・・・」
やはり、イリンクスは嫌なようだ。
これ以上はしつこいかもしれない。
俺は引き下がる。
「眠れたか?」
「はい」
雪空の下で立って眠るって、かなりの身体能力だ。
普通なら凍死するんじゃないか?
1日くらいは平気なのだろうか。
まぁ、でも我慢できなくなれば家に入るだろう。
「焚火はしないのか?」
「無くても寒さは感じません」
「俺ならするけどな」
俺は普通だと思う。
ウィンの家で寝泊まりさせてもらえるから、
寒さは平気だ。
しかし誰も泊めてくれないとなると寒すぎて、
焚火するのが普通に思える。
「管理者が共に居るときはそうします」
「自分が焚火をしたいとは言わないんだな」
「必要ないので」
彼女はやはり素っ気なかった。
「飯はいいのか、って言ってもここの飯はアレだが」
カビたパンを思い出す。
「まだ平気です」
「まだ・・・ってことは限界があるのか」
少しだけ人間らしい部分を見た気がする。
機械のような雰囲気というだけで、本当に機械。
と言うわけではないらしい。
「水のみであれば一か月は持ちます。
拷問を加えられても平気です」
「拷問って、俺は別にイリンクスをイジメる気は」
「仮定の場合です」
「仮定って、普通は拷問とか考えないけどな」
「そうですか?」
「あぁ、俺の居た世界では拷問とかは馴染みが無かったな」
イジメはあったが、それでも血が出るほどではなかったな。だけど、あまりにも苛烈で自殺を考える人間は出るから、全くの平和とも言えないが。
「それは良いことです」
態度こそ素っ気ないが、質問すれば返事はしてくれる辺り律儀なんだなと思う。
顔の表情が豊かに変わるミクリと比べて付き合っていけるかどうか不安だったがこれなら大丈夫そうだ。
「好きな食べ物とかはあるのか?」
「ありません」
「じゃ、嫌いな食べ物は?」
「食事と判断できるのであれば、頂けます」
「食事に対する楽しみみたいなのは無いのか?」
「ありません」
「俺はおからが好きなんだ、食べると楽しい気分になる。イリンクスにはそういうのは無いのか?」
「食事は栄養補給に過ぎません、人が活動するのに必要な行動であることは理解しています。しかし、それを楽しむ必要性は処女には感じません」
「勿体ない生き方に思えるな」
「そうでしょうか?」
「俺は食事は嫌いじゃないな」
「そうですか」
「それじゃ、何を楽しみに生きてるんだ?」
「楽しみですか?」
「あぁ、何かあるだろう」
そう言って、俺は自分で矛盾してることに気づいた。
俺はそういえば何を目的に生きてるのだろうか?
夢が無いのに、何を偉そうに説教してる?
「生きることは楽しいことですか?」
「イリンクスは違うのか?」
「生命には与えられた義務が存在するはずです。
それをいかに果たすかが重要であり、心の豊かさは二の次であるべきではないのですか?」
「だが、楽しくないと辛いだろう」
「辛さは感じません、故に楽しさも必要ありません」
「なんだか寂しい生き方に思えるな」
「処女は寂しいとは思いません」
「それじゃ、義務を見つけられない人間はどうすればいい?」
「来るべき日のために研鑽を積めば誰かが貴方を必要としてくれる日が来るでしょう、その時を処女ならば待ちます」
「それが、イリンクスの生き方であり、考え方なんだな」
「はい」
「・・・」
共感はされない生き方かもしれない。
多くの人は幸せや楽しさを求めて生きてるのに、
イリンクスは何処か違う方向へ行ってる気がする。
納得できる個所もあれば、否定したい部分もある。
俺はそう感じた。
「よぉ、お二人さん」
ウィンが外に出ていた。
手には温められたコップがあった。
湯気が出ており、飲んでいた。
「白湯?」
「まぁ、そんな所だ。
それよりいい報告だ」
「どうした?」
「彼女が目を覚ました」
「本当か!?」
「あぁ」
「話を聞きたい、イリンクスはどうする?」
「外で待ってます、用があれば呼んでください。
すぐに駆け付けます」
「分かった」
俺は家の中へと入っていった。
昨日は命が危険ということもあって、
心配で眠れなかったが、今日は別にそんなことはない。峠を越えたと言ってたので、大丈夫だろう。
目覚めて、俺はイリンクスの元へ向かう。
彼女は今日も外だった。
「起きてたのか」
「はい」
マントに雪が積もってる。
「中に入らなかったのか」
「壊してしまいますので」
「屈んで入ればいいのに」
「平気です」
彼女は頑なに入ろうとしない。
迷惑をかけると思ってるのだろう。
「ウィンの奴も気にしないと思うがな」
「いえ・・・」
やはり、イリンクスは嫌なようだ。
これ以上はしつこいかもしれない。
俺は引き下がる。
「眠れたか?」
「はい」
雪空の下で立って眠るって、かなりの身体能力だ。
普通なら凍死するんじゃないか?
1日くらいは平気なのだろうか。
まぁ、でも我慢できなくなれば家に入るだろう。
「焚火はしないのか?」
「無くても寒さは感じません」
「俺ならするけどな」
俺は普通だと思う。
ウィンの家で寝泊まりさせてもらえるから、
寒さは平気だ。
しかし誰も泊めてくれないとなると寒すぎて、
焚火するのが普通に思える。
「管理者が共に居るときはそうします」
「自分が焚火をしたいとは言わないんだな」
「必要ないので」
彼女はやはり素っ気なかった。
「飯はいいのか、って言ってもここの飯はアレだが」
カビたパンを思い出す。
「まだ平気です」
「まだ・・・ってことは限界があるのか」
少しだけ人間らしい部分を見た気がする。
機械のような雰囲気というだけで、本当に機械。
と言うわけではないらしい。
「水のみであれば一か月は持ちます。
拷問を加えられても平気です」
「拷問って、俺は別にイリンクスをイジメる気は」
「仮定の場合です」
「仮定って、普通は拷問とか考えないけどな」
「そうですか?」
「あぁ、俺の居た世界では拷問とかは馴染みが無かったな」
イジメはあったが、それでも血が出るほどではなかったな。だけど、あまりにも苛烈で自殺を考える人間は出るから、全くの平和とも言えないが。
「それは良いことです」
態度こそ素っ気ないが、質問すれば返事はしてくれる辺り律儀なんだなと思う。
顔の表情が豊かに変わるミクリと比べて付き合っていけるかどうか不安だったがこれなら大丈夫そうだ。
「好きな食べ物とかはあるのか?」
「ありません」
「じゃ、嫌いな食べ物は?」
「食事と判断できるのであれば、頂けます」
「食事に対する楽しみみたいなのは無いのか?」
「ありません」
「俺はおからが好きなんだ、食べると楽しい気分になる。イリンクスにはそういうのは無いのか?」
「食事は栄養補給に過ぎません、人が活動するのに必要な行動であることは理解しています。しかし、それを楽しむ必要性は処女には感じません」
「勿体ない生き方に思えるな」
「そうでしょうか?」
「俺は食事は嫌いじゃないな」
「そうですか」
「それじゃ、何を楽しみに生きてるんだ?」
「楽しみですか?」
「あぁ、何かあるだろう」
そう言って、俺は自分で矛盾してることに気づいた。
俺はそういえば何を目的に生きてるのだろうか?
夢が無いのに、何を偉そうに説教してる?
「生きることは楽しいことですか?」
「イリンクスは違うのか?」
「生命には与えられた義務が存在するはずです。
それをいかに果たすかが重要であり、心の豊かさは二の次であるべきではないのですか?」
「だが、楽しくないと辛いだろう」
「辛さは感じません、故に楽しさも必要ありません」
「なんだか寂しい生き方に思えるな」
「処女は寂しいとは思いません」
「それじゃ、義務を見つけられない人間はどうすればいい?」
「来るべき日のために研鑽を積めば誰かが貴方を必要としてくれる日が来るでしょう、その時を処女ならば待ちます」
「それが、イリンクスの生き方であり、考え方なんだな」
「はい」
「・・・」
共感はされない生き方かもしれない。
多くの人は幸せや楽しさを求めて生きてるのに、
イリンクスは何処か違う方向へ行ってる気がする。
納得できる個所もあれば、否定したい部分もある。
俺はそう感じた。
「よぉ、お二人さん」
ウィンが外に出ていた。
手には温められたコップがあった。
湯気が出ており、飲んでいた。
「白湯?」
「まぁ、そんな所だ。
それよりいい報告だ」
「どうした?」
「彼女が目を覚ました」
「本当か!?」
「あぁ」
「話を聞きたい、イリンクスはどうする?」
「外で待ってます、用があれば呼んでください。
すぐに駆け付けます」
「分かった」
俺は家の中へと入っていった。
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