19 / 46
2-11
しおりを挟む
俺たちはフィリップさんに案内されてゴミ処理場へと向かっていった。
そこは鉄の城と呼ぶに相応しい、巨大な施設だった。
「大きいな」
「これでも小さいくらいだ、この国には世界中のゴミ委が集まるからな」
「だが、どの国にもゴミ処理場はあるだろう」
「それはあるだろう、しかし人間の出すゴミは処理するスピードを遥かに凌駕する」
「それは可笑しくないか?」
「何が可笑しいって言うんだ」
「この世界を全て見て回った訳じゃないが、
俺が最初に行った国は綺麗だった。
ゴミをちゃんと処理してるからじゃないか?」
「あぁ・・・」
フィリップさんは悟ったような顔をする。
「何か変なことを言ったか?」
「言ったさ、あぁ、言ったとも」
「何が変なんだ」
「美しく見える国はどうして美しく見える?」
「それは、その国に生きる人間が努力してるからで」
「いいや、足りない。足りるわけが無いんだ」
「何故、言い切れる?」
「人間は生きてるだけで汚す生き物だ。
しかし、同時に面倒くさがりでもある。
自分でゴミを処理できるのならばそれでいい。
だが、世の中の連中はゴミの処理を他人に任してる」
「それはそうだろう、みんな忙しく生きてるから」
「つまりは他人が人のゴミを処理しなければいけない」
「そうだ」
「1人で手一杯のものをだ」
「あ・・・」
「一個人が世の中から集められたゴミを完全に処理しきれるか?いいや、出来ない。全ての個人が己のゴミを全て己で処理できるのならばこの世界は何処もかしこ綺麗でいられる。しかしそれが出来ない。なら、どうなるか。必然的にゴミは何処かに溜まり続ける。
だが、どの国も己の国は綺麗でいたいと願う。
それを形にするにはどうしたらいいのか。
答えは簡単、他人に押し付けるだ。
ゴミ処理場の人間じゃない、他の国にだ」
「・・・」
「どこか国が綺麗で居続けるには他国にゴミを押し付けるしかないんだよ、そうしてたらい回しにして、他に押し付けることの出来ない国が、汚れ役を引き受ける。他国はこう言うだろうな、あぁ、あそこの国は汚いって、私たちの国のように綺麗になる力が無いんだわと、違うね、弱者に押し付けられてるだけさ。強者の言い分。自分でゴミを処理しきれないうちは世界のどこかでゴミは増え続ける。減ることは永遠にない、強いて言うのならば文明を捨て去ることが出来るのならば、全ては自然に還りゴミはゴミではなくなり、世界は綺麗で居られる、まぁ、現実的ではないがな」
「フィリップは怒ってるのか?」
「怒り・・・とは少し違う。
因果のようなものを感じる」
「因果?」
「皮肉なものだが、こうして世界中のゴミが集められることによってワシは居場所を見つけたんだからな。
世界一汚れた国がワシにとっての安住の地だったのだから」
「幸せだと?」
「世界で一番幸せなのはこのワシだ、家族も居るしの・・・くっ、くっ、くっ」
フィリップさんは楽しそうに笑う。
「家族?」
そうか、家族が居るのか。
幸せというのも頷ける。
「それより、パーツを探してるんだろう」
「どうやって見つけるんだ?」
「ベルトコンベアを止める」
「稼働中なんだろ」
「まぁ、ついてこい」
俺はフィリップさんについていく。
ベルトコンベアがある所に行くと、ゴミが焼却炉に向かって動いてるのが分かる。
時折、扉が開いてテロリストよりも真っ赤な炎が見えた。
「ああやって燃やしてるんだな」
「そうだ」
「ベルトコンベアはどう動かしてる?」
「あれだ」
フィリップさんが指さすと、数人の男たちが走っていた。
「人力かよ!」
「結構、効率が良いんだ」
「そうなのか」
現代よりも古い時代の世界観だから、
電気ではないと思っていたが、まさかの人力だ。
まぁ、自転車で発電できるぐらいだし、不可能ではないのだろう。
「おーい、探し物があるんだ。止めてくれ」
フィリップさんが声を上げると、男たちは素直に同意して走るのを止めてくれた。
「助かる」
「わしらも協力しよう」
「本当か?」
「ここまで案内したんだ、せっかくだから最後まで付き合うさ」
「本当に助かるよ」
俺はフィリップさんたちと共にパーツを探す。
あぁでもない、こうでもないと探し続けて2時間ほど
経った頃だろうか。
ようやく、目当ての物を見つける。
「それが使えるやつなのか?」
「その筈だ、ウィンに聞いたらこれがいいと」
「見つかってよかったな」
「一緒に探してくれた人たちもありがとう!」
従業員たちは照れくさそうに笑う。
何だ、この国にも温かいものがあるじゃないか。
そう思うと心が嬉しくなる。
「持っていけ、助かるといいな。
その嬢ちゃん」
「ああ!」
俺はパーツを手に、ウィンの居るキノコの生えた家に戻った。
「お帰り、青菜」
「これでどうだ!?」
俺は長針を見せる。
「ふむ、これなら良さそうだ。
後は任せてくれ」
そう言って、ウィンは手術室へと入っていった。
俺は終わるまで祈りを捧げたのだった。
そこは鉄の城と呼ぶに相応しい、巨大な施設だった。
「大きいな」
「これでも小さいくらいだ、この国には世界中のゴミ委が集まるからな」
「だが、どの国にもゴミ処理場はあるだろう」
「それはあるだろう、しかし人間の出すゴミは処理するスピードを遥かに凌駕する」
「それは可笑しくないか?」
「何が可笑しいって言うんだ」
「この世界を全て見て回った訳じゃないが、
俺が最初に行った国は綺麗だった。
ゴミをちゃんと処理してるからじゃないか?」
「あぁ・・・」
フィリップさんは悟ったような顔をする。
「何か変なことを言ったか?」
「言ったさ、あぁ、言ったとも」
「何が変なんだ」
「美しく見える国はどうして美しく見える?」
「それは、その国に生きる人間が努力してるからで」
「いいや、足りない。足りるわけが無いんだ」
「何故、言い切れる?」
「人間は生きてるだけで汚す生き物だ。
しかし、同時に面倒くさがりでもある。
自分でゴミを処理できるのならばそれでいい。
だが、世の中の連中はゴミの処理を他人に任してる」
「それはそうだろう、みんな忙しく生きてるから」
「つまりは他人が人のゴミを処理しなければいけない」
「そうだ」
「1人で手一杯のものをだ」
「あ・・・」
「一個人が世の中から集められたゴミを完全に処理しきれるか?いいや、出来ない。全ての個人が己のゴミを全て己で処理できるのならばこの世界は何処もかしこ綺麗でいられる。しかしそれが出来ない。なら、どうなるか。必然的にゴミは何処かに溜まり続ける。
だが、どの国も己の国は綺麗でいたいと願う。
それを形にするにはどうしたらいいのか。
答えは簡単、他人に押し付けるだ。
ゴミ処理場の人間じゃない、他の国にだ」
「・・・」
「どこか国が綺麗で居続けるには他国にゴミを押し付けるしかないんだよ、そうしてたらい回しにして、他に押し付けることの出来ない国が、汚れ役を引き受ける。他国はこう言うだろうな、あぁ、あそこの国は汚いって、私たちの国のように綺麗になる力が無いんだわと、違うね、弱者に押し付けられてるだけさ。強者の言い分。自分でゴミを処理しきれないうちは世界のどこかでゴミは増え続ける。減ることは永遠にない、強いて言うのならば文明を捨て去ることが出来るのならば、全ては自然に還りゴミはゴミではなくなり、世界は綺麗で居られる、まぁ、現実的ではないがな」
「フィリップは怒ってるのか?」
「怒り・・・とは少し違う。
因果のようなものを感じる」
「因果?」
「皮肉なものだが、こうして世界中のゴミが集められることによってワシは居場所を見つけたんだからな。
世界一汚れた国がワシにとっての安住の地だったのだから」
「幸せだと?」
「世界で一番幸せなのはこのワシだ、家族も居るしの・・・くっ、くっ、くっ」
フィリップさんは楽しそうに笑う。
「家族?」
そうか、家族が居るのか。
幸せというのも頷ける。
「それより、パーツを探してるんだろう」
「どうやって見つけるんだ?」
「ベルトコンベアを止める」
「稼働中なんだろ」
「まぁ、ついてこい」
俺はフィリップさんについていく。
ベルトコンベアがある所に行くと、ゴミが焼却炉に向かって動いてるのが分かる。
時折、扉が開いてテロリストよりも真っ赤な炎が見えた。
「ああやって燃やしてるんだな」
「そうだ」
「ベルトコンベアはどう動かしてる?」
「あれだ」
フィリップさんが指さすと、数人の男たちが走っていた。
「人力かよ!」
「結構、効率が良いんだ」
「そうなのか」
現代よりも古い時代の世界観だから、
電気ではないと思っていたが、まさかの人力だ。
まぁ、自転車で発電できるぐらいだし、不可能ではないのだろう。
「おーい、探し物があるんだ。止めてくれ」
フィリップさんが声を上げると、男たちは素直に同意して走るのを止めてくれた。
「助かる」
「わしらも協力しよう」
「本当か?」
「ここまで案内したんだ、せっかくだから最後まで付き合うさ」
「本当に助かるよ」
俺はフィリップさんたちと共にパーツを探す。
あぁでもない、こうでもないと探し続けて2時間ほど
経った頃だろうか。
ようやく、目当ての物を見つける。
「それが使えるやつなのか?」
「その筈だ、ウィンに聞いたらこれがいいと」
「見つかってよかったな」
「一緒に探してくれた人たちもありがとう!」
従業員たちは照れくさそうに笑う。
何だ、この国にも温かいものがあるじゃないか。
そう思うと心が嬉しくなる。
「持っていけ、助かるといいな。
その嬢ちゃん」
「ああ!」
俺はパーツを手に、ウィンの居るキノコの生えた家に戻った。
「お帰り、青菜」
「これでどうだ!?」
俺は長針を見せる。
「ふむ、これなら良さそうだ。
後は任せてくれ」
そう言って、ウィンは手術室へと入っていった。
俺は終わるまで祈りを捧げたのだった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
狼狼3
ファンタジー
男女比1:1000という男が極端に少ない魔物や魔法のある異世界に、彼は転生してしまう。
街中を歩くのは女性、女性、女性、女性。街中を歩く男は滅多に居ない。森へ冒険に行こうとしても、襲われるのは魔物ではなく女性。女性は男が居ないか、いつも目を光らせている。
彼はそんな世界な為、男であることを隠して女として生きる。(フラグ)

転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
月風レイ
ファンタジー
普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
そして、異世界転移をした先は、入ることが禁断とされている場所、神の園というところだった。
そんな慣習も知りもしない、春人は神の園を生活圏として、必死に生きていく。
そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
そして、それは世界では幻と言われている祝福の果実であった。
食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!

神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
月風レイ
ファンタジー
グロービル伯爵家に転生したカインは、転生後憧れの魔法を使おうとするも、魔法を発動することができなかった。そして、自分が魔法が使えないのであれば、剣を磨こうとしたところ、驚くべきことを告げられる。
それは、この世界では誰でも6歳にならないと、魔法が使えないということだ。この世界には神から与えられる、恩恵いわばギフトというものがかって、それをもらうことで初めて魔法やスキルを行使できるようになる。
と、カインは自分が無能なのだと思ってたところから、6歳で行う洗礼の儀でその運命が変わった。
洗礼の儀にて、この世界の邪神を除く、12神たちと出会い、12神全員の祝福をもらい、さらには恩恵として神をも凌ぐ、とてつもない能力を入手した。
カインはそのとてつもない能力をもって、周りの人々に支えられながらも、異世界ファンタジーという夢溢れる、憧れの世界を自由気ままに創意工夫しながら、楽しく過ごしていく。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。

せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
霖空
ファンタジー
クラス転移に巻き込まれてしまった主人公。
得た能力は悪くない……いや、むしろ、チートじみたものだった。
しかしながら、それ以上のデメリットもあり……。
傍観者にならざるをえない彼が傍観者するお話です。
基本的に、勇者や、影井くんを見守りつつ、ほのぼの?生活していきます。
が、そのうち、彼自身の物語も始まる予定です。
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる