チート能力「看守」を使って異世界で最強と言われる

唐草太知

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午後17時。
俺はキノコの家の前まで行く。
ここに来たのは知ってる人間がウィンしか居ないからだ。他に頼る人はいない。
「イリンクス、先に入るから後で来てくれ」
彼女は体格が大きいので同時には入れなかったから。
「・・・」
イリンクスは頷く。
扉を足で蹴って中に入る。
背中に少女を背負っていたから、手が塞がってるのだから。
「邪魔するぜ」
「またあんたか・・・って誰だその子は」
彼は水を飲んでいた。
「けが人だ、退けるぜ?」
テーブルの上に寝せるために、物を蹴散らす。
「随分と乱暴じゃないか」
「悪いが急いでるんだ、それで助けて欲しい」
「吾人は医者じゃないんだが」
「医者じゃなくてもいいから何とかしてくれ」
「何とかって・・・そんな無茶苦茶な」
「この町のことは俺は知らない、ルールも、何があるのかも、そして医者の居る場所も」
「この国には医者なんていないさ」
「なぜだ、国なんだろう?」
「ここはジャンクタウン。思い出を探し求める場所。他の社会で上手く生きれず逃げてきた場所が集まるような、そんな所に医者や薬があることを期待する方がどうかしてる」
「それじゃ、この子は見捨てるっていうのか?」
「あぁ」
「くそ、期待した俺がバカだった!」
「世の中そんなものさ、他人を助ける方が可笑しいのさ、他人に優しくしたから優しくするなんてのは誰かが作り出した幻想、甘い夢なんだ」
「勝手にやらせて貰う」
「そうしてくれ」
俺は扉をバンと閉める。
そして出て行った。
外で待機していたイリンクスが俺に尋ねてくる。
「どうでした?」
「ダメだった、背中を見れば分かるだろう」
八つ当たりに近いものをイリンクスに行う。
「すみません」
「医者が居ないなんてことあるか、絶対に何処かに居る筈なんだ、イリンクス探すのを手伝え」
俺の中で根拠のない自信があった。
希望的観測。
初めから無いと否定して切り捨てて考えるのは嫌だった。そうしたら何も動けなくなる。
それは俺が怖いと思ってるものだ。
「・・・」
イリンクスは同意したのか良くわからない。
でも、ついてきてくれるのだから同意したと勝手に判断した。
「医者は居ないか、いや、医者でなくてもいい。
誰か薬を・・・怪我してるこの子のためにくれ!」
周りの人間たちは冷ややかなものだった。
「うるさいな」
地面で寝そべる男は起き上がる。
そして、うっとおしそうな目をしてる。
「頼む、助けてくれ」
「うるさいって言ってるだろ!」
男が怒鳴る。
「こっちはけが人なんだ」
「知るかよ、助けて欲しいのはこっちだっての」
男は立ち去る。
「くそ、誰も居ないのか。助けてくれる奴は・・・どこも居ないのか?」
ずっと背負ってるのも大変だ。
体重がかかってる。
それに血が流れてるも気になる。
全血液量の約40%(体重50kgの人で1600mL)
の出血で意識がなくなり、生命の危険があるらしい。
彼女はすでに意識はなく、血液のどれほど奪われてるのかが俺には分からない。
もしかしたら手遅れ・・・そんな風にも思えた。
「人助けなんて古臭いこと止めなよ」
女性がそんなことを言う。
「黙れ!」
「偉そうに!」
女性は俺のことを殴って、何処かに去っていく。
俺は殴り返すことも出来ずに、不満だけが溜まる。
「くそ・・・」
何で俺がこんな面倒なことをしないといけないんだ。
そんな苛立ちが沸いて出てくる。
「見捨ててしまうのはどうですか?」
イリンクスがそんなことを言う。
「なに・・・?」
「管理者は面倒だと感じてるのでは?」
「・・・」
確かにそうだ、彼女に心を見抜かれてる。
あってる、間違えない。
「命じれば、処分しますが?」
イリンクスは背中に背負ったハンマーに手を伸ばそうとする。
「面倒くさいよ、あぁそうだ、君の言う通り面倒くさいって思ってる」
「でしたら」
「だけど!」
俺は否定する。
「・・・」
イリンクスは動かない。
「一度関わると決めた以上、最後まで見捨てたくない・・・そう思ったんだ」
自分で言ってて思う。
青臭いなって、馬鹿らしい。
何でこんなことを言うのだろうか。
「分かりました」
イリンクスはハンマーから手を放す。
「探すぞ、絶対に」
「はい」
イリンクスと共に医者を探しに歩くのだった。
「随分と必死だな」
カップに入った水を飲んでるウィンと出会う。
「ウィン」
「どうして救おうとする?」
水をすする。
「俺が動くしかないから」
「助けられるとは限らないのに?」
「そう・・・かもな」
「無駄な努力かもしれない」
「分かってるさ」
「それでもなぜやるんだ」
「まだ・・・あっち側になる気はない」
「そうか、うちに連れてこい」
「ウィン?」
「どうした、助けるんじゃなかったのか?」
「あ、あぁ!」
俺はうれしい気分で一杯になる。
なんだよ、この国にも救いがあるじゃないか。
俺はこうしてウィンの家に戻っていったのだった。
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