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午後13時。
町中を歩いてると、イリンクスに声をかけられる。
「管理者、靴が」
「ん?あぁ・・・」
急に何だろうと思い、確認してみる。
すると汚れてることに気づく。
「汚れてます」
「歩いてるからな、それに雪が降ってるし、
泥がついても可笑しくはない」
「ですが、血の匂いが」
「何だって?」
確かに、僅かではあるが鉄臭い気もする。
「怪我してるのでは?」
「そうかもしれない」
俺は靴を脱いで確認する。
釘でも刺さったのかと思い、焦る。
けれど、怪我してるようには思えなかった。
「怪我が無くて良かったです」
「それなら、この血は一体」
地面をよく見ると、血の川が出来てることに気づく。
それは幅1cmほどの小さなものだったが、今も流れてる。
「どうしますか?」
「追いかけてみよう」
「・・・」
イリンクスはこくりと頷く。
血を辿っていくと、犬が見える。
一瞬、水たまりの水を飲んでるのかと思ったが、
そうではなかった。
血だまりの池を飲んでるのだと気づく。
それは渇きを癒そうとする吸血鬼のようにも見えた。
「失せろ!」
俺は怒声を上げる。
「きゃうん!」
犬は去っていく。
「管理者」
「分かってる、これは・・・」
俺は血の池の正体に気づく。
それは1人の少女が倒れていたからだ。
身長155cm。
体型は瘦せて見える。
胸のサイズはBカップぐらいだろうか。
白のワンピースを身に着けている・・・はず。
確信を持てないのは、血の所為で赤く染まってるからだ。
白よりも赤の面積が多くて、どちらか判断がつかない。
出血の原因は、恐らく背中の・・・羽。
刃物で切断されたであろう羽は根本だけしか残ってなかった。
それにしても普通の人間が羽なんて生えてるものなのか?
「天使・・・?」
イリンクスは呟く。
この世界に天使は存在する。
いくつものフィクション作品に登場する種族ではあるが、
その役割は作品によって異なる。
恋人、キューピッド、善性、色々あるが、
この世界においては治安維持のような役割を持つ。
現代において近い役職は警察だろうと思う。
「その天使がなぜ、ここに?」
「処女にはわかりません」
「・・・」
「どうしますか?」
「放っておく」
「分かりました」
ミクリなら聞き返したかもな。
なんてことを思う。
イリンクスは命に対して興味は薄いのかもしれない。
「行こう」
「はい」
誰かを助けるとか面倒だ、そんなことは他の人にやらせておけばいい。
そんな風に考えての事だった。
それよりも、聞き込みをしよう。
俺にとって大事なのはラットボーイを探すことだ。
人助けじゃない。
俺はこの場を後にした。
周囲の人間に聞き込みを行う。
でも、答えは得られない。
2時間ぐらいだろうか、聞き込みを行ったのは。
「・・・」
「管理者?」
イリンクスは俺が急に立ち止まったから気になったのだろう。
「やはり、先ほどの場所へ戻ろう」
「はい」
「聞かないのか、どこの場所とか」
「処女は管理者についていくだけですので」
「そうか」
機械的な反応。
クールなだけなのか、それとも心を失ってるのか。
まぁ、そのうち分かるだろう。
ともかく今はある場所へ向かおう。
「放っておくのでは?」
「そのつもりだったんだがな」
天使の元へ俺は戻ってくる。
誰かがやってくれる、そう思って見捨てた。
でも、ここに戻ってきても天使はそのまま。
何も変わらなかった。
「変化が無いですね」
「あぁ・・・」
「怒ってるのですか?」
「そうだ」
「なぜ?」
「皆、見てるだけで行動には移さない。
他の人間が助けてくれるだろう、自分じゃなくていい。さっきの俺みたいにな・・・傍観者効果ってやつだ」
「そうですか」
イリンクスは理解したのか、興味ないのか、
素っ気なく返事するのでよく分からなかった。
「・・・」
周囲で人がじぃっと見ている。
そこには老若男女様々な人が居た。
「お前らは見てるだけか!?」
俺は怒りをぶつける。
すると、周囲の人間は面倒くさそうに去っていくだけだった。
彼らの行動にイラついたのではない。
先ほどの自分を思い出してイラついてるのだ。
矛盾してる、本当に馬鹿げてる。
そのことが俺の心に暗い影を落とす。
俺は本来はそっち側なんだ。
人を助けない側。
でも、誰もしないって思ったから助けようって。
そう、思ってしまったんだ。
少し時間がズレたら、助けるのは俺じゃなくて、
見てるあいつ等の誰かかもしれない。
そのことが誰かに理解されるのが怖くて、
俺は怒ったのだ。
「・・・」
イリンクスはそんな俺を見つめる。
否定するでもなく、侮蔑的な目を向けるでもなく、
空虚な目を俺に向けてくる。
「何を考えてるんだ?」
「・・・」
イリンクスは答えない。
些細なことには答えてくれるが、彼女自身のことは質問しても答えようとはしない。
今はまだ・・・信頼されてないのだろうか。
それとも語るほどの過去を持たないのか?
今はどうでもいいか、
そんなことよりもこの天使の事だ。
「少し手伝ってくれ」
「はい」
イリンクスに手伝ってもらい、
俺は天使の少女を背負う。
48kgぐらいだろうか?
それでも重いことには変わりない。
意識ある人間ならばそれほど重いとは感じないだろうが、意識が無い人間なんてのは米俵と一緒だ。
かなり重い。
走るのは無理そうだ。
「どこに向かいますか?」
「キノコの生えた家があるだろう、そこに行く」
「分かりました」
俺はあの紅衣の男の元へと歩を進めた。
町中を歩いてると、イリンクスに声をかけられる。
「管理者、靴が」
「ん?あぁ・・・」
急に何だろうと思い、確認してみる。
すると汚れてることに気づく。
「汚れてます」
「歩いてるからな、それに雪が降ってるし、
泥がついても可笑しくはない」
「ですが、血の匂いが」
「何だって?」
確かに、僅かではあるが鉄臭い気もする。
「怪我してるのでは?」
「そうかもしれない」
俺は靴を脱いで確認する。
釘でも刺さったのかと思い、焦る。
けれど、怪我してるようには思えなかった。
「怪我が無くて良かったです」
「それなら、この血は一体」
地面をよく見ると、血の川が出来てることに気づく。
それは幅1cmほどの小さなものだったが、今も流れてる。
「どうしますか?」
「追いかけてみよう」
「・・・」
イリンクスはこくりと頷く。
血を辿っていくと、犬が見える。
一瞬、水たまりの水を飲んでるのかと思ったが、
そうではなかった。
血だまりの池を飲んでるのだと気づく。
それは渇きを癒そうとする吸血鬼のようにも見えた。
「失せろ!」
俺は怒声を上げる。
「きゃうん!」
犬は去っていく。
「管理者」
「分かってる、これは・・・」
俺は血の池の正体に気づく。
それは1人の少女が倒れていたからだ。
身長155cm。
体型は瘦せて見える。
胸のサイズはBカップぐらいだろうか。
白のワンピースを身に着けている・・・はず。
確信を持てないのは、血の所為で赤く染まってるからだ。
白よりも赤の面積が多くて、どちらか判断がつかない。
出血の原因は、恐らく背中の・・・羽。
刃物で切断されたであろう羽は根本だけしか残ってなかった。
それにしても普通の人間が羽なんて生えてるものなのか?
「天使・・・?」
イリンクスは呟く。
この世界に天使は存在する。
いくつものフィクション作品に登場する種族ではあるが、
その役割は作品によって異なる。
恋人、キューピッド、善性、色々あるが、
この世界においては治安維持のような役割を持つ。
現代において近い役職は警察だろうと思う。
「その天使がなぜ、ここに?」
「処女にはわかりません」
「・・・」
「どうしますか?」
「放っておく」
「分かりました」
ミクリなら聞き返したかもな。
なんてことを思う。
イリンクスは命に対して興味は薄いのかもしれない。
「行こう」
「はい」
誰かを助けるとか面倒だ、そんなことは他の人にやらせておけばいい。
そんな風に考えての事だった。
それよりも、聞き込みをしよう。
俺にとって大事なのはラットボーイを探すことだ。
人助けじゃない。
俺はこの場を後にした。
周囲の人間に聞き込みを行う。
でも、答えは得られない。
2時間ぐらいだろうか、聞き込みを行ったのは。
「・・・」
「管理者?」
イリンクスは俺が急に立ち止まったから気になったのだろう。
「やはり、先ほどの場所へ戻ろう」
「はい」
「聞かないのか、どこの場所とか」
「処女は管理者についていくだけですので」
「そうか」
機械的な反応。
クールなだけなのか、それとも心を失ってるのか。
まぁ、そのうち分かるだろう。
ともかく今はある場所へ向かおう。
「放っておくのでは?」
「そのつもりだったんだがな」
天使の元へ俺は戻ってくる。
誰かがやってくれる、そう思って見捨てた。
でも、ここに戻ってきても天使はそのまま。
何も変わらなかった。
「変化が無いですね」
「あぁ・・・」
「怒ってるのですか?」
「そうだ」
「なぜ?」
「皆、見てるだけで行動には移さない。
他の人間が助けてくれるだろう、自分じゃなくていい。さっきの俺みたいにな・・・傍観者効果ってやつだ」
「そうですか」
イリンクスは理解したのか、興味ないのか、
素っ気なく返事するのでよく分からなかった。
「・・・」
周囲で人がじぃっと見ている。
そこには老若男女様々な人が居た。
「お前らは見てるだけか!?」
俺は怒りをぶつける。
すると、周囲の人間は面倒くさそうに去っていくだけだった。
彼らの行動にイラついたのではない。
先ほどの自分を思い出してイラついてるのだ。
矛盾してる、本当に馬鹿げてる。
そのことが俺の心に暗い影を落とす。
俺は本来はそっち側なんだ。
人を助けない側。
でも、誰もしないって思ったから助けようって。
そう、思ってしまったんだ。
少し時間がズレたら、助けるのは俺じゃなくて、
見てるあいつ等の誰かかもしれない。
そのことが誰かに理解されるのが怖くて、
俺は怒ったのだ。
「・・・」
イリンクスはそんな俺を見つめる。
否定するでもなく、侮蔑的な目を向けるでもなく、
空虚な目を俺に向けてくる。
「何を考えてるんだ?」
「・・・」
イリンクスは答えない。
些細なことには答えてくれるが、彼女自身のことは質問しても答えようとはしない。
今はまだ・・・信頼されてないのだろうか。
それとも語るほどの過去を持たないのか?
今はどうでもいいか、
そんなことよりもこの天使の事だ。
「少し手伝ってくれ」
「はい」
イリンクスに手伝ってもらい、
俺は天使の少女を背負う。
48kgぐらいだろうか?
それでも重いことには変わりない。
意識ある人間ならばそれほど重いとは感じないだろうが、意識が無い人間なんてのは米俵と一緒だ。
かなり重い。
走るのは無理そうだ。
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