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1-6 白黒
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偶然、植物の化け物と出くわす。
「またか!」
「げーっっ」
根っこを張って針山を作り出す。
「大生は逃げる」
省吾は我先にと逃げる。
本来ならば怒るべきなんだろうが、逆に俺は戦いやすかった。
「どうしましょう、青菜様。
あれでは近づけません」
「俺の能力は遠距離は出来ないからな」
「従私もです」
「うーん」
案を考える。
「・・・」
俺はあることに気づく。
それは植物の怪物が近づいてこないことだ。
「なぁ、ミクリ」
「はい、従私も同じ考えです」
「敵意が無い・・・いや、違うな」
「遠ざけてる、ですね」
「あぁ」
「何かを守ってるんでしょうか」
「奥が気になってきたな」
「倒しますか?」
「そうしなきゃ、前に進めなさそうだ」
「げー・・・」
植物の怪物は観察するだけで追加の攻撃はしてこない。
「行くぜ」
俺は木の板を取り出して、根っこの針山の上にかぶせる。
「げっ?」
敵はそうやって突破して来ると思わなかったんだろう。
トランプタワーのように木の板が支えられて俺の体重でも移動が可能になる。
そうして俺は距離を詰める。
「アルトラズ!」
俺は鳥かごを出す。
すると、中からキツツキが出現する。
「げーーっ」
キツツキは木の怪物に向かっていき、穴を開ける。
そして、そのまま倒れる。
「やりましたね、青菜様」
「よしっ」
然程、手ごわい相手では無かった。
「もう、終わりましたかね」
省吾が出てくる。
「あぁ、大したことなかったさ」
「それは良かった」
「先に進もう、気になる所があるんだ」
「分かりました」
俺たちは、アトリエに向かう。
「あら、どちら様?」
年齢は50代ぐらいだろうか。
性別は女性で、身長は165cm。
体重は45kgだと思えた。
冷静で落ち着いた雰囲気。
地味な模様の無いワンピースを身に着けてる。
そして、優雅に紅茶を飲んでいた。
「金子さん」
「あら、初めて見る顔ね」
「冗談がきついですよ」
「ごめんなさい、最近物忘れが酷くて」
「いえ、構いません」
「省吾、この人は?」
「木霊金子さん、この館の主人の奥さんです」
「主犯の妻・・・」
身体には異常が見られない。
植物が生えてないのだ。
「それで、貴方たちは?」
「俺の名前は青菜、こっちはミクリ」
「初めまして、ディセトの1人、ミクリです」
「そう」
金子さんは紅茶を飲む。
かなり落ち着いてる。
「見た目の異常はまるでない、あんたが犯人だからか?」
「ワタクシが?」
「俺はあんたの主人が怪しいと思ってる」
「そうかもしれないわね」
「やっぱり・・・それじゃ止めてくれないか?」
「嫌よ」
「嫌って・・・俺は出れなくて困ってるんだが」
「これが主人の仕業なら、納得だもの。
外に植物の怪物が居て、最初は驚いたけれどワタクシを守ってくれてるのだもの。
貴方たちの話を聞いて、どうりでと思ったわ」
「それじゃ悪に加担すると?」
「この異常現象が悪と断言するのは早いと思わない?」
「それは」
「まずは事情を理解してから判断するべきよ」
「・・・」
俺はその通りだと思い、黙る。
「でも、主人が悪いことに加担してると理解したならば、
止めなくてはならないわ。わたくしは悪になる気はありませんもの」
「金子さん」
「悪いけれど、調べて下さる?」
「分かった」
「お願いね、もしも事情を理解できたのなら協力してあげられるかもしれないわ」
「青菜様、ここは離れてもよろしいのでは?」
「そうだな」
俺たちは廊下に出る。
「協力的でしたね」
「あぁ、話は通じそうだ」
「大生も、そう感じた」
「・・・・!」
悲鳴が聞こえる。
「向かうぞ!」
俺たちは現場に向かう。
すると、廊下で優身が倒れてるでは無いか。
「大丈夫ですか、返事は出来ますか?」
ミクリが話しかける。
「うぐぅうう・・・」
優身は返事が出来そうにない。
「ダメです、とても苦しそうです。
おでこに触ってみましたが、体温も高いです。
汗も出てるし、あまりよくない状況だと判断します」
「くそっ、どうして」
「だ、大生に心当たりが」
「なんだ、教えてくれ」
「病名は分からない。
しかし、どういう症状かは分かる」
「早く言ってくれ」
「優身さんは体内の一部が壊死する病を患ってる。
しかし、人間の持つ治癒能力で回復可能なレベルだ」
「それじゃ、何が問題なんだ?」
「壊死した細胞は液状化し、通常であれば体外に排出される。
トイレや、汗でそれを行っていた。
しかし、それだけでは足りないんだ」
「どういう意味だ?」
「あ、あのヒマワリが・・・彼女の治癒に貢献していたんだよ!」
「なんだと?」
「植物を枯らせるべきでは無かった!」
「バカな・・・そんなことがあり得るのか?」
寄生した植物が主人を助けてる?
壊死した細胞を体外に排出するのを助けていたのか。
ヒマワリの種から白濁液が流れ出ていたのは、
彼女の治療の一環だった?
てっきり、彼女に悪影響を及ぼしていたと思い込んでいた。
寄生するのは奪うだけではないのか?
生命の不思議に俺は間違った答えを出してしまったらしい。
「か、彼女にもう一度、ヒマワリを生やそう・・・」
省吾は怯えた声で言う。
「もう一度、外に出せば」
「同じ植物が生える保証はあるのか?」
「それは」
「違う植物が生えたのなら、今度は悪影響を及ぼしかねない。
例えば、クワズイモだったのなら毒が身体に回るのでは?」
「・・・」
名前の通り、毒性のある植物だ。
漢字で書くと分かりやすい。
食わず芋。
確かに、それが彼女に宿れば危険だ。
「それじゃ、どうするんですか?」
「肥料を与えて、植物が蘇えらせる」
省吾はそんなことを言う。
「出来るのか、そんなこと」
俺は疑問を口にする。
「悪くなった部分を切除して、栄養を与えれば人間と同じように良くなるかもしれない」
「それで、どうする?」
「リン酸が肥料に適してると聞いたことがある」
「そんなもの何処で」
「大生に思い当たる節がある」
「何処だ?」
「食堂」
「食堂?」
俺たちは食堂に向かうことになった。
「あった、これだ」
「これは、骨?」
「チキンステーキでも食べたんだろう、これをすりつぶして骨粉にする」
「なるほど、それじゃこいつをすり鉢か何かで粉にするんだな」
「従私が手伝いましょうか?」
「頼めるか」
「はい」
ミクリがごりごりとやってくれる。
「良い調子だ」
「ありがとうございます、人の役に立てて嬉しいです」
ミクリは奉仕の精神が強いらしい。
「大変だったら言ってくれ、俺が代役を務める」
「いえ、すぐに終わりますので」
「そうか?」
「はい」
「好奇心で聞くから嫌な気分になったら謝る。
どうして、人のために尽くそうって思うんだ?」
「・・・」
ミクリの手が止まる。
「やっぱり、言いにくいか。
悪い、忘れてくれ」
「いえ、そういうんじゃないんです・・・ただ」
「ただ?」
「昔を思い出していたんです、どうしてだったかなって」
「・・・」
「ごめんなさい、やっぱり忘れちゃいました。
ドジですね、従私ってば・・・あはは」
ミクリは苦笑する。
本当に忘れたのだろうか?
「出来たか?」
省吾が確認しにやって来る。
「大分、出来たように見えるが・・・」
俺はすり鉢を確認する。
「まぁ、これぐらいなら平気だろう」
「それじゃ、終わりですね」
「大生が持っていこう」
「お願いしますね」
「これで優身を助けられたらいいが」
俺は不安を口にする。
そして、彼女の居た廊下へと戻って行った。
「大生が助けに来たぞ」
省吾が心配そうに駆け寄る。
俺たちの中で誰よりも心配してるのかもしれない。
彼の優しさが垣間見えた気がした。
「うぐうぅう・・・」
「何処か休める所は無いだろうか」
「ここでいい」
「いいのか?」
「下手に動かして悪化させるよりも、この場で処置するべきだ」
「自信があるのか?」
「あぁ」
「根拠は?」
「医療分野に詳しいわけじゃないが、植物には詳しいつもりだ」
確かに、彼にはその分野の知識が豊富だと思われた。
別に俺やミクリが医療知識が豊富な訳でも、植物に詳しいわけでもない。
それなら、多少なりとも知識を持ってる彼に任せた方がいいのかもしれない。
出来るならば医者が傍に居てくれたと思うが、今は無理なのだ。
彼を頼るほかないと思った。
「分かった」
「身体を横にしよう、ヒマワリが出てきやすいように」
「身体に触るが、構わないな?」
俺は優身に尋ねる。
「嫌・・・はぁ・・・触らないで・・・」
「お前なぁ、こんな時にも」
「こんな・・・時だからよ・・・触られたくないの。
2人に・・・」
2人ってことは省吾もか。
「仮面を被ってて得体が知れないのは理解できるが、
別にお前をどうこうしようって思ってるわけじゃない」
「信用・・・できないわ・・・」
「それなら誰ならいいんだ?」
「執事か弟を連れて来て・・・あったでしょう?」
「分かった」
「大生が触れるのもダメか?」
「いやよ、いちばん・・・あなたがダメ」
「俺よりも、こいつの方が心配してるんだぞ?」
「いいんだ客人」
「でも」
「彼女の気が済むやり方で頼む」
「お人よしはどっちだよ全く・・・執事を連れてくるからな」
俺は一旦、この場を離れて執事を探す。
そして、連れてくる。
「お嬢様」
「毒蝮・・・私様を寝室へ運んで」
「分かりました」
「俺たちもついて行く」
「ついて・・・来ないで」
「部屋の前までだ、中には入らない。
それならいいだろ?」
「好きにしたら?」
「そうさせてもらう」
優身が少しだけ許してくれた。
弱ってるから仕方ないと判断したのかもしれない。
寝室の前まで行き、俺たちは廊下で待機する。
「これ、あの良かったら」
「ありがとう、えーと誰だったかな」
「案内人の省吾」
「そうか、分かったよお嬢様に渡して置く」
毒蝮は部屋の中へと入る。
「何を渡したんだ?」
俺は気になって尋ねる。
「食事さ、さっき食堂に行ったときにちょいとね」
「なるほど」
おかゆか何かだろう。
それからしばらくして、執事が部屋から出てくる。
「一応、お嬢様の身体を拭いておいた」
「それで容体は?」
「省吾・・・だったかな、君の言う通りヒマワリが生えたら体調が良くなったよ」
「そっか」
省吾は安心した表情を見せる。
「今は落ち着いて眠ってる。
悪いな、お嬢様を守ってもらって」
「別にそんなつもりはないさ、扉の前に居るだけなんだからな」
俺はそんな風に言う。
「ふっ、面白いことを言う」
毒蝮は笑う。
「皆さん、そろそろ休憩しませんか?
従私が食事を用意したので」
ミクリが軽食を作ってくれたようだ。
サンドイッチだ。
外も暗い、恐らく17時くらいだろう。
お昼休憩にしては大分遅いが休めるのはありがたい。
「そうしようか」
俺たちは休憩に入る。
「かつてこの屋敷は建築御殿と呼ばれ栄えていた」
毒蝮が語り始める。
「建築御殿?」
「ここの主人は父から譲り受けた山を持っていた。
食べ物が取れるわけでもなく、持て余していた。
しかし、ある転機を迎える」
「転機?」
「そこに生えてるヒノキが丈夫で建築に利用できると知った。
そこで売り出してみると、見事にヒット。
人間が居る以上、建物は作るからな。
彼は成功を収めて、この木霊館を作った」
「そうだったのか」
「執事たちは成功を収めてから・・・つまりは後から雇われた人間なんだ」
「なるほどね」
そういう過去があったのか。
俺はサンドイッチを食べながら話を聞く。
「お嬢様と知り合ったのはそこからだよ」
「へぇ・・・」
「生まれは平民だった父と比べて、
生まれながらにして金持ちだったお嬢様。
周りは父に媚びへつらう人間ばかりだ。
叱る人間なんて居なかったんだろうな」
「・・・」
あの傲慢さは、そういうことだったのか?
「ある意味、あのお嬢様は不幸だって言える」
「どうして?」
「あの傲慢さで人に愛されるとは思えないからな」
「随分とキツイことを言うんだな」
「内緒にしてくれよ?」
「分かった」
俺は微笑んで見せた。
「そう言えば、人探しはまだやってるのか?」
「やってるが、上手く行ってないな」
「ほう?」
「木霊金子と呼ばれる人物が協力してくれなくてな」
「あぁ、館の主人の奥さんか」
「どうしたらいいと思う?」
「オセロにでも誘ってもたらどうだ?」
「好きなのか」
「よく、人とやってるのを見かける」
「ありがとう」
「娯楽室にあると思う、お嬢様は任せて行ってくるといい」
「分かった・・・ミクリ、行くぞ」
「ふぉはい(了解)」
ハムスターみたいにサンドイッチを口に含んで喋りにくそうだ。
「食べてから行こうか」
俺は苦笑する。
「大生もついていく」
「分かった」
そうして3人で向かう。
娯楽室の前には木の化け物が並んでいる。
「どうしましょう、客人」
「なにか案は無いのか?」
「今が昼間なら太陽の光で誘導できるんですけど」
「今は夜だ」
19時ぐらいだろうか。
外は暗く、日光には期待できない。
「そういえば客人は不思議なアイテムをお持ちだ。
それで、どうにか出来ないのか?」
「やってみるか」
俺はアルトラズを起動しようとする。
しかし、何も起こらない。
「あれ、何も起きないですね」
省吾は不思議そうにする。
「・・・」
どうしてだ?
俺は焦燥感に駆られる。
「青菜様、その道具は無限では無いのです」
「どういうことだ」
「一日の使用制限があります。
拳銃に弾丸が十数発しか入らないように、
力には制約が存在するのです」
「そんな」
「平均して10回ほど、それは従私の能力も例外ではありません」
「力の補充は出来ないのか?」
「1時間ほど休めば1~2回は使えるようになると思います」
「客人、待ちましょうか?」
「面倒だな」
俺はため息をつく。
「他に案が?」
「中庭に行こう」
「中庭ですか、青菜様?」
「あそこには植物の怪物たちが居た。
何故か、植物を含めて生物たちは共通の悩みが存在する。
それは生きてるということだ。
生きていれば必ず身体を維持するための栄養素が必要となる。
わざわざ中庭でうろついていたわけは何か」
「なるほど、理解したよ客人」
「従私もです、青菜様」
「それじゃ行こう」
「はい」
俺たちは中庭へと移動し、再び娯楽室の前に戻って来る。
そして、手に入れたものを使う。
「これでも喰らえ!」
俺は鉢植えを投げる。
するとパリンと割れる。
その音に反応したのか、怪物たちは振り返る。
「げーーっ♪」
栄養豊富な土。
木の化け物たちは嬉しそうに近づく。
「今のうちに娯楽室に入ろう」
俺たちはバレないように扉の中へと入って行った。
「ビリヤード、ダーツ、トランプ・・・遊ぶ物がいっぱいだな」
「目的のオセロを探しましょう、客人たち」
「どういう見た目をしてますか、青菜様?」
「そうだな、白と黒のコマを交互に配置するゲームだから・・・白黒を探せばいいんじゃないのか?」
「分かりました」
俺たちは物を探す。
「青菜様、これではないですか?」
「それはコネクトフォー、縦じゃなくて平面の盤面を探してくれ」
「あう」
ミクリはシュンとする。
「客人これじゃないか?」
「それは囲碁、和風じゃなくて西洋的な」
「青菜様、これなら間違えないですよね!?」
「それはドラフツ!」
「難しいです」
ミクリは困った顔をする。
「くそっ、無駄に種類が豊富だ」
中々、見つからない。
「ほっ」
中心、ど真ん中にダーツの矢が刺さる。
どうやら省吾が投げたようだ。
「遊んでないで探してくれ!」
「全然見つからないんだ、ちょっとぐらい休んでもいいだろう」
「まったく」
俺はため息をつく。
「あーーっ、従私もやってみたいですって、どっはーーっ!」
ミクリがダーツに興味を示して近づく。
しかし躓いて思いっきり転ぶ。
「平気か?」
俺は手を差し伸べる。
「あはは、すみません」
「なぁ、客人。探してるのってそれじゃないのか?」
「なに?」
ミクリが躓いた物を拾い上げる。
そこにはリバーシと書かれていた。
「違いますよ、省吾様。
これはリバーシです、リバーシ。
オセロじゃないですよ」
「これを探していたんだ!」
俺は喜ぶ。
「あれぇ?」
ミクリは不思議そうな顔をする。
「オセロのことをリバーシとも言うんだ。
良かった見つかって」
俺はリバーシの箱を抱きしめる。
「見つかったのなら何よりです」
ミクリは微笑んだ。
「金子さんに協力を仰げるかもしれない。
向かおう」
そう言って俺は皆を連れて行った。
「調べは終わったのかしら?」
金子さんはアトリエで優雅に寛いでいた。
「いや、終わっては無い。でも、あるものを持ってきた」
「なにかしら」
「これだ」
俺はオセロを出す。
「へぇ、ワタクシが好きなの知ってたの」
「執事に聞いたんだ」
「そう、彼が・・・」
「取引ってほどじゃないが、これと引き換えに協力してくれないか?」
「そうね、それじゃ、こうしましょう。
ワタクシにゲームで勝ったら、というのは」
「悪いが、そんな状況じゃ」
「あら、断るの?」
「オセロ盤だけで十分だろう」
「でも、ワタクシの協力が必要なんでしょ?」
「それはそうだが」
「それならいいじゃない」
「分かった・・・その勝負乗るよ」
俺は席に座る。
「ノリがいい人は好きよ、ワタクシ」
金子さんも準備を始める。
「従私は見守ってます」
「大生はゲームは得意じゃないからな、傍で見てるさ」
「ルールは知ってる?」
「知ってる、始めようぜ」
「ちなみにルールはオセロだけじゃないわ」
「どういうことだ」
「ワタクシとのルールがまだ聞いてないでしょう?」
「罰ゲームでもしようってのか?」
「そんなところね」
「負けたら死ぬ・・・とでも言うのか?」
「面白そうね、でも残念ながらそこまで重くはないわ・・・ただ」
「ただ?」
「勝負は一回切り、再戦は無いわ」
「勝つまで続けてはいけないのか?」
「勝負に2回目は存在しないの、それが自然のルールでしょ?」
「分かった」
「パーフェクトよ、貴方」
席に座り、ゲームの準備を始める。
一番最初に白2、黒2でコマを配置する。
「楽しそうだな」
「そうね、そうかもしれないわ」
「それじゃ、ゲームを始めよう」
「ワタクシが黒ね」
「俺が白ってところか」
横=A~H。
縦=1~8。
でコマを配置していく。
ゲーム1。
白:2=D4、E5
黒:2=D5、E4
「最初は盤面は動かないわね」
「あぁ」
ゲーム2。
黒:3=D3、D5、E4
白:3=C3、D3、E5
それからというもの、ゲームの変化は薄かった。
ゲーム3。
黒:3=C4、D4、D5
白:5=C3、D3、E3、E4、E5
ゲーム4。
黒:4=C4、D4、D5、F2
白:6=C3、D3、E3、E4、E5、F3
ゲーム5。
黒:6=C4、D4、D5、F2、F3、F4
白:6=C3、D3、E3、E4、E5、F5
拮抗状態が続く。
ゲーム6。
黒:7=C4、D3、D4、E2、F2、F3、F4
白:7=C3、C6、D5、E3、E4、E5、F5
ゲーム7。
黒:10=C4、D3、D5、E2、E3、E4、E6
F2,F3、F4
白:6=C3、C6,D4、E5、F5,F6
ここで少し点差が開く。
「少し・・・困って来たんじゃない」
「まだ・・・大丈夫だ」
ゲーム8。
黒:12=D3、D5、E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、G5
白:6=C3、C4、C5,C6、D4、F6
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だって言ってるだろ」
「ふふ・・・ゲームよ、たかが・・・ね」
「うるさい、分かってる!」
落ち着け、そうやって心を揺さぶって油断させる作戦だ。
乗らないぞ・・・そう、心に誓う。
ゲーム9。
黒:14=B4、C4,D3、D4、D5
E2、E3、E4、E5、F2、F3、F4、F5、G5
白:6=C3、C5,C6、D6、E6、F6
「点差が開いたままよ」
「巻き返すさ」
「このままじゃ負けてしまうわ、あおさ君」
「俺は青菜だ!」
俺はバンとテーブルを叩く。
「青菜様、挑発です、乗ってはダメです」
「くそっ、分かってるよ」
俺は座り直す。
「うふふ、若いわね」
金子さんは微笑を浮かべる。
ゲーム10。
黒:14=B2、D3、D4、D5、D6
E2、E3、E4、E5、F2、F3、F4、F5、G5
白:8=C3、C4、C5,C6、C7、C8、E6、F6
点差が埋まらない。
ゲーム11。
黒:16=D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:8=A3、B4、C3、C4、
C5,C6、C7、C8
もう2倍の点差だ。
「不味いんじゃないのか、客人」
省吾に心配され始める。
ゲーム12
黒:18=B3、C4
D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:8=A3、B4
C3、C5,C6、C7、C8
D2
「ワタクシ、調子がいいみたい」
「そうみたいだな」
「ねぇ、青菜君は生年月日はいつ?」
「急になんだよ」
「教えてよ、困るものでないでしょ?」
「4月10日だ」
「双子座、隠れた才能を暗示するらしいわね」
「へぇ・・・」
「でも、今日の運勢は悪いみたい。
せっかくの隠れた才能を隠したままでいいのかしら」
「最後に泣くのはどっちかまだ分からないぜ」
「ふふ・・・そうね」
ゲーム13。
黒:20=B3、B4、C4、C5
D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:8=A3、A4、B5
C3、C6、C7、C8
D2
点差は開く一方だ。
「・・・」
焦りが出てくる。
「青菜様、汗が出てます」
ミクリは甲斐甲斐しくハンカチで拭いてくれる。
「あら、出来たお嬢さんね」
「えへへ、それほどでも」
ミクリは照れくさそうに笑う。
ゲーム14。
黒:19=B3、B4
D2,D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:11=A3、A4、B5
C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8
「金子さん、距離は縮まってると思うぜ」
「でも、まだワタクシが有利よ」
ゲーム15。
黒:20=B3、B4、B6、C5、C6
D2,D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:10=A3、A4、A6、B5
C1、C2、C3、C4、C7、C8
一瞬、詰めたかと思ったが差が開く。
「・・・」
俺はテーブルの指をコンコンと叩く。
「ポーカーフェイスは苦手?」
「どうかな」
俺は平静を装う。
「でも、クセに現れてる」
「クセ?」
「気づいてないの、貴方は何というか苛立ってる時は音を鳴らすのよ。
指でテーブルを叩くみたいに・・・ね」
「・・・」
気をつけなければ。
俺にそんな癖があったのか。
ゲーム16。
黒:21=A5、B3、B4、B5、B6
C5、C6
D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:11=A3、A4、A6
C1、C2、C3、C4、C7、C8
D2、E1
差は埋まらない。
このまま負けてしまうのだろうか?
「青菜様・・・」
ミクリが心配そうに見てくる。
ゲーム17。
黒:24=A5、B3、B4、B5、B6
C2、C5、C6
D1、D2、D4、D5、D6
E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:12=A3、A4、A6
C1、C3、C4、C7、C8
D3、E1、E2、F1
「降参する?ワタクシはそれでもいいけど」
「しない・・・まだ分からないだろ?」
「そうかもしれないわね」
ゲーム18。
黒:23=B3、B4、B5、B6
C2、C5.C6
D1,D2、D4、D5、D6
E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:15=A1、A2、A3、A4、A5、A6
C1、C3、C4、C7、C8
D3、E1、E2、F1
「あれ、なんだか盤面が変わってきましたよ青菜様」
「俺の調子が出てきた気がする」
ゲーム19。
黒:21=B2.B3、B4、B5、B6
C2、C3、C5、C6
D1,D2、D5、D6
E3、E5、E6
F2、F5、F6
G5、G6
白:19=A1、A2、A3、A4、A5、A6
C1、C4、C7、C8
D3、D4
E1、E2、E4
F1、F3、F4
G4
「もう少しです、逆転できますよ青菜様!」
「イケるかも?」
俺は期待を感じ始めていた。
「気のせいよ、まだワタクシの勝ちは変わらない」
ゲーム20。
黒:22=B1、B2、B3、B4、B5、B6
c1、c2、c3、c5、c6
D1,D2,D5,D6
E3,E5,E6
F5.F6
G5,G6
白:20=A1、A2、A3、A4、A5、A6
C4、C7、C8,D3,D4
E1.E2.E4
F1,F2,F3,F4
G3,G4
「喉元が見えるぜ・・・金子さん」
「誘ってるだけかもしれないでしょ?」
「その割には冷や汗が見えるぜ」
「・・・」
ゲーム21。
黒:22=
B1、B2、B3、B4、B5
c1、c2、c3、c5、c5
D1,D2,D4,D5
E3,E4,E5
F4,F5
G4,G5
H4
白:22=A1、A2、A3、A4、A5、A6
B6,C6,C7,C8,D3,D6
E1,E2,E6
F1,F2,F3,F6
G4,G6
H6
「凄い、客人が並んだ!」
ゲーム22。
黒:23=
B1、B2、B3、B4、B5
c1、c2、c3、c5、c5
D1,D2,D4
E2,E3,E5
F2,F4.F5
G3,G4,G5
H4
白:23=
A1、A2、A3、A4、A5、A6
B6,C6,C7,C8,
D3,D5,D6
E1,E4,E6
F1,F3,F6
G2,G6
H1.H6
「・・・」
「・・・」
金子さんも驚いてる。
まさか勝負が拮抗するとは思わなかったのだろう。
考える時間が多くなる。
そのせいで無言の時間が出始める。
ゲーム23。
黒:24=
B1、B2、B3、B4、B5
c1、c2、c3、c5、c5,C6
D1,D2
E2,E3,E5.E6
F2,F4.F5
G3,G4,G5
H4
白:24=
A1、A2、A3、A4、A5、A6
B6,
C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D7,D8
E1,E4
F1,F3,F6
G2,G6
H1.H6
同点が続く。
じれったい気分だ。
ゲーム24。
黒:27=
B1、B2、B3、B4、B5
c1、c2、c3、c5、c5,C6
D1,D2
E1,E2,E3,E5.
F1,F2,F4.F5
G1,G2,G3,G4,G5
H4
白:23=
A1、A2、A3、A4、A5、A6
B6,
C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D7,D8
E4,E6
F3,F6,F7
G6
H1.H6
「悪いわね、引き離させてもらったわ」
「俺の白が」
点差がまた開く。
「惜しかったのに、従私は残念な気持ちです」
ゲーム25。
黒:27=
B1、B2、B3、B4、B5,B6
c1、c2、c3、c5、c5,
D1,D2
E1,E2,E3,E5.
F1,F2,F4.F5
G1,G2,G3,G4,G5
H4
白:25=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A8
B7,
C6,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D7,D8
E4,E6
F3,F6,F7
G6
H1.H6
「仕方ないさ、客人はいい勝負をしたよ。
でも向こうの方が上だったんだ」
「まだ分からないぜ、省吾」
「客人・・・」
ゲーム26。
黒:27=
B1、B2、B3、B5,B6
c1、c2、c3、C4
D1,D2
E1,E2,E3,E5.E6
F1,F2,F4.F5,F6
G1,G2,G3,G4,G5
H4
白:27=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A8
B4,B7,
C5,C6,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D7,D8
E4,E7
F3,F7,F8
G6
H1.H6
「金子さん、また同点だ。
一度は見失いかけたが喉元が見えたぜ!」
「ふふ・・・ゲームが面白くなってきたわ」
金子さんは微笑を浮かべる。
ゲーム27。
黒:27=
B1、B2、B3、B5,B6
c1、c2、c3、C4,C6
D1,D2,D7
E1,E2,E3,E6.E7,E8
F1,F2,F4.F6
G1,G2,G3
H4
白:29=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A8
B4,B7,
C5,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D8
E4,E5
F3,F5,F7,F8
G4.G5.G6
H1.H5,H6
「やりました、青菜様!」
「エクスクラメーション!」
俺は喜びを表す。
ゲーム28。
黒:30=
B1、B2、B3、B5,B6
c1、c2、c3、C4,C6
D1,D2,D7
E1,E2,E3,E6.E7,E8
F1,F2,F4.F7
G1,G2,G3,G4,G5,G6
H4
白:28=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A8
B4,B7,
C5,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D8
E4,E5
F3,F5,F7,F8
G7
H1.H5,H6,H8
「残念だけど、ワタクシが逆転したわ」
黒が多くなる。
「ぐっ・・・」
俺の白が。
「惜しい、青菜様はトドメだと思ったのに」
俺はテーブルを指でとんとんと叩く。
「ふふ・・・焦ってるわね」
「うるさい!」
俺は頭を抱える。
「ゲームは落ち着いた方が有利になるわ」
「あんたが俺のことを煽るからだろう!」
「いつ、煽ったのかしら?」
「今だよ、俺は焦ってなんかいない!」
俺はバンと立ち上がる。
「客人、冷静に・・・だぜ?」
「悪い」
俺は座り直す。
「ゲームの続きをしましょう」
「分かったよ」
俺はコマを置く。
ゲーム29。
黒:33=
B1、B2、B3、B5
c1、c2、c3、C4,C6
D1,D2,D7
E1,E2,E3,E6.E7,E8
F1,F2,F4.F7
G1,G2,G3,G4,G5,G6,G7
H4,H5,H6,H7
白:27=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A7.A8
B4,B6.B7,
C5,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D8
E4,E5
F3,F5,F6,F8
G7
H1,H8
点差が開き始めた。
「もうゲームは終盤、負けを認めれば」
「負けを認めれば・・・協力してくれるのか?」
「それは嫌よ、約束は約束。
協力して欲しいのなら勝てばいいのよ。
ただ・・・難しいでしょうけどね」
金子さんは勝ち誇った顔をしてる。
ゲーム30。
黒:34=
B1、B2、B3、B5B6,B7,B8
c1、c2、c3、C4,C6,C7,C8
D1,D2,D6,D7,D8
E1,E2,E3,E5,E6.E7,E8
F1,F2,F4.F7
G1,G2,G5,G6,
白:28=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A7.A8
B4,
C5,,
D3,D4,D5,
E4,
F3,F5,F6,F8
G3,G4,G7
H1,H3,H4,H5,H6,H7,H8
「・・・」
俺は負けるのだろうか?
そんな気分になって来る。
「青菜君・・・だったわよね」
「あぁ・・・そうだが」
「仮面で顔が良く見えないけど、それは外せるの?」
「ファッションじゃない、無理だ」
「なら、こうしましょう。
仮面を外すなら・・・協力してあげてもいいわ」
「なに?」
「良かったじゃないか客人、仮面を外すだけで協力してくれるなんて」
省吾は喜んでる。
「青菜さま・・・」
しかしミクリは困惑している。
どうしていいのか判断に迷ってるのだろう。
「仮面は外さない・・・負けても勝ってもな」
「へぇ」
金子さんは邪悪な笑みを浮かべる。
「おいおいおいおいおい、客人」
「なんだよ」
「それはワガママってものじゃないのか?」
「なに?」
「どんなに不細工だろうと、顔に傷があろうと、
そんなのは関係ない。木霊館に閉じ込められてるのは、
いわば皆の問題だ。だが、お前は個人的な理由で仮面を外さないって
言ってるんだ、大生の言ってることは間違ってるか?」
「いや・・・間違ってない」
「なら、外せ。負けは決まってるんだ」
「まだ分からないだろ」
「分かるさ、いいから外すんだ!」
「そんなに外したくないんだぁ・・・余計に気になるなぁ」
金子さんは意地悪そうな顔をする。
「タヌキババア!」
「口が悪くなってるわ、青菜君」
「俺は意地でも外さないぞ」
「このっ」
省吾が無理やり外そうと手を伸ばす。
「ダメっ」
ミクリが立ちふさがる。
「ミクリ・・・?」
「本人がとても嫌がってます、
嫌がることはしてはいけないと親から習ったでしょう?」
「学校の教師が言うような善性100%の説教するんじゃねぇ、気持ち悪いんだよ!」
省吾が怒鳴る。
「・・・」
ミクリが怯えてる。
「勝てば文句ないだろ・・・?」
「だから、無理だと言ってるだろう」
俺はコマを置く。
ゲーム31。
黒:29=
B1、B3、B5.B6,B7,B8
c1、c3、C4,C6,C7,C8
D1,D6,D7,D8
E1,E3,E6.E7,E8
F1,F4.F7
G1,G5,G6,G7,G8
白:35=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A7.A8
B2,B4,
C2,C5,
D2,D3,D4,D5,
E2,E4,E5
F2,F3,F5,F6,F8
G2,G3,G4,
H1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8
「どうだ・・・結果は」
「あ・・・?」
「あら、ワタクシの黒が少ない?」
「やりましたね、青菜様!」
ミクリが抱きしめてくる。
「仮面は外したくない、けれど迷惑はかけられない。
なら、勝つしかなかった。俺はやった、文句ないだろう」
「勝ったならいいんだけどよ・・・」
省吾は振り上げた拳を降ろす。
「土壇場での逆転・・・ふふ、負けちゃったわ」
金子さんは負けたが嬉しそうだ。
「初めから負けるつもりだったのか?」
「そんなことないわ、でも勝っても負けても協力はする気だっただけよ」
「なに?」
「煽ってゲームを面白くする。
ゲーマーなら基本でしょう?」
「タヌキババア」
「誉め言葉として受け取っておくわ、青菜君」
金子さんは笑う。
「良かった、丸く収まって」
ミクリは安心した顔をする。
「優身はアンタの娘だよな?金子さん」
「あら、見かけたの?」
「今は体調を崩して保護してる、見に来るか?」
「えぇ、そうするわ」
俺たちは4人で行動する。
そして、寝室の前までやってくる。
「優身は無事?」
「奥様」
執事が頭を下げる。
「毒蝮、貴方が見ててくれたの、礼を言うわ」
「勿体ない言葉」
毒蝮が礼儀正しく頭を下げる。
「中に入るわ」
「ですが、お嬢様は誰も入れるなと」
「ワタクシは誰?」
「・・・」
「賢いわね」
金子さんは部屋の中へ入る。
「俺たちも入ろう」
俺たちも続くように入る。
「誰よ、勝手に入って来て」
優身は背中にヒマワリが生えてるが元気になっていた。
「ワタクシよ」
「お母さん・・・」
「大丈夫そうね」
「別に心配されるようなものじゃ」
「あら、いろんな人が気を遣ったって聞いてるけど?」
「それはあいつらが勝手に」
「黙りなさい」
「うっ」
優身は黙る。
俺たちでは聞く耳を持たなかったが、母親となると別らしい。
「あんた協力しないんだって?」
「それは、そのだって」
「とにかくあんたも手伝いなさい」
「でも」
「言い訳は聞きたくないわ」
ぱしーんと頭を殴る。
「酷い!」
「人様に迷惑かけて、この馬鹿!」
「バカって何よ、あばずれ!」
「親に向かって何よその言い草!」
わー、きゃーと喧嘩する。
「あぁ・・・みっともない」
毒蝮が頭を抱えてる。
「しばらく放ってくか」
「そうですね、青菜様」
俺たちは喧嘩を傍観した。
「協力するそうよ」
金子さんと優身の服はボロボロだった。
「一体何が」
「聞かないで」
「そっすか・・・」
俺は聞かずにおいた。
「とにかく協力するわ、ワタクシも娘もね」
「うーっ」
優身は不満そうだが、手綱がしっかり握られてる気がした。
あれなら大丈夫そうだ。
「分かったよ」
「でも、夜は遅いわ。ここで寝ましょうか」
「そうだな、そろそろ疲れて来たころだった」
俺のアルトラズの能力も回復できるだろうしな。
「皆で寝ましょうか」
「分かった」
金子さんの音頭でこの場に居る、
毒蝮、青菜、ミクリ、省吾、優身、金子。
計6人は就寝した。
「またか!」
「げーっっ」
根っこを張って針山を作り出す。
「大生は逃げる」
省吾は我先にと逃げる。
本来ならば怒るべきなんだろうが、逆に俺は戦いやすかった。
「どうしましょう、青菜様。
あれでは近づけません」
「俺の能力は遠距離は出来ないからな」
「従私もです」
「うーん」
案を考える。
「・・・」
俺はあることに気づく。
それは植物の怪物が近づいてこないことだ。
「なぁ、ミクリ」
「はい、従私も同じ考えです」
「敵意が無い・・・いや、違うな」
「遠ざけてる、ですね」
「あぁ」
「何かを守ってるんでしょうか」
「奥が気になってきたな」
「倒しますか?」
「そうしなきゃ、前に進めなさそうだ」
「げー・・・」
植物の怪物は観察するだけで追加の攻撃はしてこない。
「行くぜ」
俺は木の板を取り出して、根っこの針山の上にかぶせる。
「げっ?」
敵はそうやって突破して来ると思わなかったんだろう。
トランプタワーのように木の板が支えられて俺の体重でも移動が可能になる。
そうして俺は距離を詰める。
「アルトラズ!」
俺は鳥かごを出す。
すると、中からキツツキが出現する。
「げーーっ」
キツツキは木の怪物に向かっていき、穴を開ける。
そして、そのまま倒れる。
「やりましたね、青菜様」
「よしっ」
然程、手ごわい相手では無かった。
「もう、終わりましたかね」
省吾が出てくる。
「あぁ、大したことなかったさ」
「それは良かった」
「先に進もう、気になる所があるんだ」
「分かりました」
俺たちは、アトリエに向かう。
「あら、どちら様?」
年齢は50代ぐらいだろうか。
性別は女性で、身長は165cm。
体重は45kgだと思えた。
冷静で落ち着いた雰囲気。
地味な模様の無いワンピースを身に着けてる。
そして、優雅に紅茶を飲んでいた。
「金子さん」
「あら、初めて見る顔ね」
「冗談がきついですよ」
「ごめんなさい、最近物忘れが酷くて」
「いえ、構いません」
「省吾、この人は?」
「木霊金子さん、この館の主人の奥さんです」
「主犯の妻・・・」
身体には異常が見られない。
植物が生えてないのだ。
「それで、貴方たちは?」
「俺の名前は青菜、こっちはミクリ」
「初めまして、ディセトの1人、ミクリです」
「そう」
金子さんは紅茶を飲む。
かなり落ち着いてる。
「見た目の異常はまるでない、あんたが犯人だからか?」
「ワタクシが?」
「俺はあんたの主人が怪しいと思ってる」
「そうかもしれないわね」
「やっぱり・・・それじゃ止めてくれないか?」
「嫌よ」
「嫌って・・・俺は出れなくて困ってるんだが」
「これが主人の仕業なら、納得だもの。
外に植物の怪物が居て、最初は驚いたけれどワタクシを守ってくれてるのだもの。
貴方たちの話を聞いて、どうりでと思ったわ」
「それじゃ悪に加担すると?」
「この異常現象が悪と断言するのは早いと思わない?」
「それは」
「まずは事情を理解してから判断するべきよ」
「・・・」
俺はその通りだと思い、黙る。
「でも、主人が悪いことに加担してると理解したならば、
止めなくてはならないわ。わたくしは悪になる気はありませんもの」
「金子さん」
「悪いけれど、調べて下さる?」
「分かった」
「お願いね、もしも事情を理解できたのなら協力してあげられるかもしれないわ」
「青菜様、ここは離れてもよろしいのでは?」
「そうだな」
俺たちは廊下に出る。
「協力的でしたね」
「あぁ、話は通じそうだ」
「大生も、そう感じた」
「・・・・!」
悲鳴が聞こえる。
「向かうぞ!」
俺たちは現場に向かう。
すると、廊下で優身が倒れてるでは無いか。
「大丈夫ですか、返事は出来ますか?」
ミクリが話しかける。
「うぐぅうう・・・」
優身は返事が出来そうにない。
「ダメです、とても苦しそうです。
おでこに触ってみましたが、体温も高いです。
汗も出てるし、あまりよくない状況だと判断します」
「くそっ、どうして」
「だ、大生に心当たりが」
「なんだ、教えてくれ」
「病名は分からない。
しかし、どういう症状かは分かる」
「早く言ってくれ」
「優身さんは体内の一部が壊死する病を患ってる。
しかし、人間の持つ治癒能力で回復可能なレベルだ」
「それじゃ、何が問題なんだ?」
「壊死した細胞は液状化し、通常であれば体外に排出される。
トイレや、汗でそれを行っていた。
しかし、それだけでは足りないんだ」
「どういう意味だ?」
「あ、あのヒマワリが・・・彼女の治癒に貢献していたんだよ!」
「なんだと?」
「植物を枯らせるべきでは無かった!」
「バカな・・・そんなことがあり得るのか?」
寄生した植物が主人を助けてる?
壊死した細胞を体外に排出するのを助けていたのか。
ヒマワリの種から白濁液が流れ出ていたのは、
彼女の治療の一環だった?
てっきり、彼女に悪影響を及ぼしていたと思い込んでいた。
寄生するのは奪うだけではないのか?
生命の不思議に俺は間違った答えを出してしまったらしい。
「か、彼女にもう一度、ヒマワリを生やそう・・・」
省吾は怯えた声で言う。
「もう一度、外に出せば」
「同じ植物が生える保証はあるのか?」
「それは」
「違う植物が生えたのなら、今度は悪影響を及ぼしかねない。
例えば、クワズイモだったのなら毒が身体に回るのでは?」
「・・・」
名前の通り、毒性のある植物だ。
漢字で書くと分かりやすい。
食わず芋。
確かに、それが彼女に宿れば危険だ。
「それじゃ、どうするんですか?」
「肥料を与えて、植物が蘇えらせる」
省吾はそんなことを言う。
「出来るのか、そんなこと」
俺は疑問を口にする。
「悪くなった部分を切除して、栄養を与えれば人間と同じように良くなるかもしれない」
「それで、どうする?」
「リン酸が肥料に適してると聞いたことがある」
「そんなもの何処で」
「大生に思い当たる節がある」
「何処だ?」
「食堂」
「食堂?」
俺たちは食堂に向かうことになった。
「あった、これだ」
「これは、骨?」
「チキンステーキでも食べたんだろう、これをすりつぶして骨粉にする」
「なるほど、それじゃこいつをすり鉢か何かで粉にするんだな」
「従私が手伝いましょうか?」
「頼めるか」
「はい」
ミクリがごりごりとやってくれる。
「良い調子だ」
「ありがとうございます、人の役に立てて嬉しいです」
ミクリは奉仕の精神が強いらしい。
「大変だったら言ってくれ、俺が代役を務める」
「いえ、すぐに終わりますので」
「そうか?」
「はい」
「好奇心で聞くから嫌な気分になったら謝る。
どうして、人のために尽くそうって思うんだ?」
「・・・」
ミクリの手が止まる。
「やっぱり、言いにくいか。
悪い、忘れてくれ」
「いえ、そういうんじゃないんです・・・ただ」
「ただ?」
「昔を思い出していたんです、どうしてだったかなって」
「・・・」
「ごめんなさい、やっぱり忘れちゃいました。
ドジですね、従私ってば・・・あはは」
ミクリは苦笑する。
本当に忘れたのだろうか?
「出来たか?」
省吾が確認しにやって来る。
「大分、出来たように見えるが・・・」
俺はすり鉢を確認する。
「まぁ、これぐらいなら平気だろう」
「それじゃ、終わりですね」
「大生が持っていこう」
「お願いしますね」
「これで優身を助けられたらいいが」
俺は不安を口にする。
そして、彼女の居た廊下へと戻って行った。
「大生が助けに来たぞ」
省吾が心配そうに駆け寄る。
俺たちの中で誰よりも心配してるのかもしれない。
彼の優しさが垣間見えた気がした。
「うぐうぅう・・・」
「何処か休める所は無いだろうか」
「ここでいい」
「いいのか?」
「下手に動かして悪化させるよりも、この場で処置するべきだ」
「自信があるのか?」
「あぁ」
「根拠は?」
「医療分野に詳しいわけじゃないが、植物には詳しいつもりだ」
確かに、彼にはその分野の知識が豊富だと思われた。
別に俺やミクリが医療知識が豊富な訳でも、植物に詳しいわけでもない。
それなら、多少なりとも知識を持ってる彼に任せた方がいいのかもしれない。
出来るならば医者が傍に居てくれたと思うが、今は無理なのだ。
彼を頼るほかないと思った。
「分かった」
「身体を横にしよう、ヒマワリが出てきやすいように」
「身体に触るが、構わないな?」
俺は優身に尋ねる。
「嫌・・・はぁ・・・触らないで・・・」
「お前なぁ、こんな時にも」
「こんな・・・時だからよ・・・触られたくないの。
2人に・・・」
2人ってことは省吾もか。
「仮面を被ってて得体が知れないのは理解できるが、
別にお前をどうこうしようって思ってるわけじゃない」
「信用・・・できないわ・・・」
「それなら誰ならいいんだ?」
「執事か弟を連れて来て・・・あったでしょう?」
「分かった」
「大生が触れるのもダメか?」
「いやよ、いちばん・・・あなたがダメ」
「俺よりも、こいつの方が心配してるんだぞ?」
「いいんだ客人」
「でも」
「彼女の気が済むやり方で頼む」
「お人よしはどっちだよ全く・・・執事を連れてくるからな」
俺は一旦、この場を離れて執事を探す。
そして、連れてくる。
「お嬢様」
「毒蝮・・・私様を寝室へ運んで」
「分かりました」
「俺たちもついて行く」
「ついて・・・来ないで」
「部屋の前までだ、中には入らない。
それならいいだろ?」
「好きにしたら?」
「そうさせてもらう」
優身が少しだけ許してくれた。
弱ってるから仕方ないと判断したのかもしれない。
寝室の前まで行き、俺たちは廊下で待機する。
「これ、あの良かったら」
「ありがとう、えーと誰だったかな」
「案内人の省吾」
「そうか、分かったよお嬢様に渡して置く」
毒蝮は部屋の中へと入る。
「何を渡したんだ?」
俺は気になって尋ねる。
「食事さ、さっき食堂に行ったときにちょいとね」
「なるほど」
おかゆか何かだろう。
それからしばらくして、執事が部屋から出てくる。
「一応、お嬢様の身体を拭いておいた」
「それで容体は?」
「省吾・・・だったかな、君の言う通りヒマワリが生えたら体調が良くなったよ」
「そっか」
省吾は安心した表情を見せる。
「今は落ち着いて眠ってる。
悪いな、お嬢様を守ってもらって」
「別にそんなつもりはないさ、扉の前に居るだけなんだからな」
俺はそんな風に言う。
「ふっ、面白いことを言う」
毒蝮は笑う。
「皆さん、そろそろ休憩しませんか?
従私が食事を用意したので」
ミクリが軽食を作ってくれたようだ。
サンドイッチだ。
外も暗い、恐らく17時くらいだろう。
お昼休憩にしては大分遅いが休めるのはありがたい。
「そうしようか」
俺たちは休憩に入る。
「かつてこの屋敷は建築御殿と呼ばれ栄えていた」
毒蝮が語り始める。
「建築御殿?」
「ここの主人は父から譲り受けた山を持っていた。
食べ物が取れるわけでもなく、持て余していた。
しかし、ある転機を迎える」
「転機?」
「そこに生えてるヒノキが丈夫で建築に利用できると知った。
そこで売り出してみると、見事にヒット。
人間が居る以上、建物は作るからな。
彼は成功を収めて、この木霊館を作った」
「そうだったのか」
「執事たちは成功を収めてから・・・つまりは後から雇われた人間なんだ」
「なるほどね」
そういう過去があったのか。
俺はサンドイッチを食べながら話を聞く。
「お嬢様と知り合ったのはそこからだよ」
「へぇ・・・」
「生まれは平民だった父と比べて、
生まれながらにして金持ちだったお嬢様。
周りは父に媚びへつらう人間ばかりだ。
叱る人間なんて居なかったんだろうな」
「・・・」
あの傲慢さは、そういうことだったのか?
「ある意味、あのお嬢様は不幸だって言える」
「どうして?」
「あの傲慢さで人に愛されるとは思えないからな」
「随分とキツイことを言うんだな」
「内緒にしてくれよ?」
「分かった」
俺は微笑んで見せた。
「そう言えば、人探しはまだやってるのか?」
「やってるが、上手く行ってないな」
「ほう?」
「木霊金子と呼ばれる人物が協力してくれなくてな」
「あぁ、館の主人の奥さんか」
「どうしたらいいと思う?」
「オセロにでも誘ってもたらどうだ?」
「好きなのか」
「よく、人とやってるのを見かける」
「ありがとう」
「娯楽室にあると思う、お嬢様は任せて行ってくるといい」
「分かった・・・ミクリ、行くぞ」
「ふぉはい(了解)」
ハムスターみたいにサンドイッチを口に含んで喋りにくそうだ。
「食べてから行こうか」
俺は苦笑する。
「大生もついていく」
「分かった」
そうして3人で向かう。
娯楽室の前には木の化け物が並んでいる。
「どうしましょう、客人」
「なにか案は無いのか?」
「今が昼間なら太陽の光で誘導できるんですけど」
「今は夜だ」
19時ぐらいだろうか。
外は暗く、日光には期待できない。
「そういえば客人は不思議なアイテムをお持ちだ。
それで、どうにか出来ないのか?」
「やってみるか」
俺はアルトラズを起動しようとする。
しかし、何も起こらない。
「あれ、何も起きないですね」
省吾は不思議そうにする。
「・・・」
どうしてだ?
俺は焦燥感に駆られる。
「青菜様、その道具は無限では無いのです」
「どういうことだ」
「一日の使用制限があります。
拳銃に弾丸が十数発しか入らないように、
力には制約が存在するのです」
「そんな」
「平均して10回ほど、それは従私の能力も例外ではありません」
「力の補充は出来ないのか?」
「1時間ほど休めば1~2回は使えるようになると思います」
「客人、待ちましょうか?」
「面倒だな」
俺はため息をつく。
「他に案が?」
「中庭に行こう」
「中庭ですか、青菜様?」
「あそこには植物の怪物たちが居た。
何故か、植物を含めて生物たちは共通の悩みが存在する。
それは生きてるということだ。
生きていれば必ず身体を維持するための栄養素が必要となる。
わざわざ中庭でうろついていたわけは何か」
「なるほど、理解したよ客人」
「従私もです、青菜様」
「それじゃ行こう」
「はい」
俺たちは中庭へと移動し、再び娯楽室の前に戻って来る。
そして、手に入れたものを使う。
「これでも喰らえ!」
俺は鉢植えを投げる。
するとパリンと割れる。
その音に反応したのか、怪物たちは振り返る。
「げーーっ♪」
栄養豊富な土。
木の化け物たちは嬉しそうに近づく。
「今のうちに娯楽室に入ろう」
俺たちはバレないように扉の中へと入って行った。
「ビリヤード、ダーツ、トランプ・・・遊ぶ物がいっぱいだな」
「目的のオセロを探しましょう、客人たち」
「どういう見た目をしてますか、青菜様?」
「そうだな、白と黒のコマを交互に配置するゲームだから・・・白黒を探せばいいんじゃないのか?」
「分かりました」
俺たちは物を探す。
「青菜様、これではないですか?」
「それはコネクトフォー、縦じゃなくて平面の盤面を探してくれ」
「あう」
ミクリはシュンとする。
「客人これじゃないか?」
「それは囲碁、和風じゃなくて西洋的な」
「青菜様、これなら間違えないですよね!?」
「それはドラフツ!」
「難しいです」
ミクリは困った顔をする。
「くそっ、無駄に種類が豊富だ」
中々、見つからない。
「ほっ」
中心、ど真ん中にダーツの矢が刺さる。
どうやら省吾が投げたようだ。
「遊んでないで探してくれ!」
「全然見つからないんだ、ちょっとぐらい休んでもいいだろう」
「まったく」
俺はため息をつく。
「あーーっ、従私もやってみたいですって、どっはーーっ!」
ミクリがダーツに興味を示して近づく。
しかし躓いて思いっきり転ぶ。
「平気か?」
俺は手を差し伸べる。
「あはは、すみません」
「なぁ、客人。探してるのってそれじゃないのか?」
「なに?」
ミクリが躓いた物を拾い上げる。
そこにはリバーシと書かれていた。
「違いますよ、省吾様。
これはリバーシです、リバーシ。
オセロじゃないですよ」
「これを探していたんだ!」
俺は喜ぶ。
「あれぇ?」
ミクリは不思議そうな顔をする。
「オセロのことをリバーシとも言うんだ。
良かった見つかって」
俺はリバーシの箱を抱きしめる。
「見つかったのなら何よりです」
ミクリは微笑んだ。
「金子さんに協力を仰げるかもしれない。
向かおう」
そう言って俺は皆を連れて行った。
「調べは終わったのかしら?」
金子さんはアトリエで優雅に寛いでいた。
「いや、終わっては無い。でも、あるものを持ってきた」
「なにかしら」
「これだ」
俺はオセロを出す。
「へぇ、ワタクシが好きなの知ってたの」
「執事に聞いたんだ」
「そう、彼が・・・」
「取引ってほどじゃないが、これと引き換えに協力してくれないか?」
「そうね、それじゃ、こうしましょう。
ワタクシにゲームで勝ったら、というのは」
「悪いが、そんな状況じゃ」
「あら、断るの?」
「オセロ盤だけで十分だろう」
「でも、ワタクシの協力が必要なんでしょ?」
「それはそうだが」
「それならいいじゃない」
「分かった・・・その勝負乗るよ」
俺は席に座る。
「ノリがいい人は好きよ、ワタクシ」
金子さんも準備を始める。
「従私は見守ってます」
「大生はゲームは得意じゃないからな、傍で見てるさ」
「ルールは知ってる?」
「知ってる、始めようぜ」
「ちなみにルールはオセロだけじゃないわ」
「どういうことだ」
「ワタクシとのルールがまだ聞いてないでしょう?」
「罰ゲームでもしようってのか?」
「そんなところね」
「負けたら死ぬ・・・とでも言うのか?」
「面白そうね、でも残念ながらそこまで重くはないわ・・・ただ」
「ただ?」
「勝負は一回切り、再戦は無いわ」
「勝つまで続けてはいけないのか?」
「勝負に2回目は存在しないの、それが自然のルールでしょ?」
「分かった」
「パーフェクトよ、貴方」
席に座り、ゲームの準備を始める。
一番最初に白2、黒2でコマを配置する。
「楽しそうだな」
「そうね、そうかもしれないわ」
「それじゃ、ゲームを始めよう」
「ワタクシが黒ね」
「俺が白ってところか」
横=A~H。
縦=1~8。
でコマを配置していく。
ゲーム1。
白:2=D4、E5
黒:2=D5、E4
「最初は盤面は動かないわね」
「あぁ」
ゲーム2。
黒:3=D3、D5、E4
白:3=C3、D3、E5
それからというもの、ゲームの変化は薄かった。
ゲーム3。
黒:3=C4、D4、D5
白:5=C3、D3、E3、E4、E5
ゲーム4。
黒:4=C4、D4、D5、F2
白:6=C3、D3、E3、E4、E5、F3
ゲーム5。
黒:6=C4、D4、D5、F2、F3、F4
白:6=C3、D3、E3、E4、E5、F5
拮抗状態が続く。
ゲーム6。
黒:7=C4、D3、D4、E2、F2、F3、F4
白:7=C3、C6、D5、E3、E4、E5、F5
ゲーム7。
黒:10=C4、D3、D5、E2、E3、E4、E6
F2,F3、F4
白:6=C3、C6,D4、E5、F5,F6
ここで少し点差が開く。
「少し・・・困って来たんじゃない」
「まだ・・・大丈夫だ」
ゲーム8。
黒:12=D3、D5、E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、G5
白:6=C3、C4、C5,C6、D4、F6
「本当に大丈夫?」
「大丈夫だって言ってるだろ」
「ふふ・・・ゲームよ、たかが・・・ね」
「うるさい、分かってる!」
落ち着け、そうやって心を揺さぶって油断させる作戦だ。
乗らないぞ・・・そう、心に誓う。
ゲーム9。
黒:14=B4、C4,D3、D4、D5
E2、E3、E4、E5、F2、F3、F4、F5、G5
白:6=C3、C5,C6、D6、E6、F6
「点差が開いたままよ」
「巻き返すさ」
「このままじゃ負けてしまうわ、あおさ君」
「俺は青菜だ!」
俺はバンとテーブルを叩く。
「青菜様、挑発です、乗ってはダメです」
「くそっ、分かってるよ」
俺は座り直す。
「うふふ、若いわね」
金子さんは微笑を浮かべる。
ゲーム10。
黒:14=B2、D3、D4、D5、D6
E2、E3、E4、E5、F2、F3、F4、F5、G5
白:8=C3、C4、C5,C6、C7、C8、E6、F6
点差が埋まらない。
ゲーム11。
黒:16=D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:8=A3、B4、C3、C4、
C5,C6、C7、C8
もう2倍の点差だ。
「不味いんじゃないのか、客人」
省吾に心配され始める。
ゲーム12
黒:18=B3、C4
D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:8=A3、B4
C3、C5,C6、C7、C8
D2
「ワタクシ、調子がいいみたい」
「そうみたいだな」
「ねぇ、青菜君は生年月日はいつ?」
「急になんだよ」
「教えてよ、困るものでないでしょ?」
「4月10日だ」
「双子座、隠れた才能を暗示するらしいわね」
「へぇ・・・」
「でも、今日の運勢は悪いみたい。
せっかくの隠れた才能を隠したままでいいのかしら」
「最後に泣くのはどっちかまだ分からないぜ」
「ふふ・・・そうね」
ゲーム13。
黒:20=B3、B4、C4、C5
D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:8=A3、A4、B5
C3、C6、C7、C8
D2
点差は開く一方だ。
「・・・」
焦りが出てくる。
「青菜様、汗が出てます」
ミクリは甲斐甲斐しくハンカチで拭いてくれる。
「あら、出来たお嬢さんね」
「えへへ、それほどでも」
ミクリは照れくさそうに笑う。
ゲーム14。
黒:19=B3、B4
D2,D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:11=A3、A4、B5
C1、C2、C3、C4、C5、C6、C7、C8
「金子さん、距離は縮まってると思うぜ」
「でも、まだワタクシが有利よ」
ゲーム15。
黒:20=B3、B4、B6、C5、C6
D2,D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:10=A3、A4、A6、B5
C1、C2、C3、C4、C7、C8
一瞬、詰めたかと思ったが差が開く。
「・・・」
俺はテーブルの指をコンコンと叩く。
「ポーカーフェイスは苦手?」
「どうかな」
俺は平静を装う。
「でも、クセに現れてる」
「クセ?」
「気づいてないの、貴方は何というか苛立ってる時は音を鳴らすのよ。
指でテーブルを叩くみたいに・・・ね」
「・・・」
気をつけなければ。
俺にそんな癖があったのか。
ゲーム16。
黒:21=A5、B3、B4、B5、B6
C5、C6
D3、D4、D5、D6、
E2、E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:11=A3、A4、A6
C1、C2、C3、C4、C7、C8
D2、E1
差は埋まらない。
このまま負けてしまうのだろうか?
「青菜様・・・」
ミクリが心配そうに見てくる。
ゲーム17。
黒:24=A5、B3、B4、B5、B6
C2、C5、C6
D1、D2、D4、D5、D6
E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:12=A3、A4、A6
C1、C3、C4、C7、C8
D3、E1、E2、F1
「降参する?ワタクシはそれでもいいけど」
「しない・・・まだ分からないだろ?」
「そうかもしれないわね」
ゲーム18。
黒:23=B3、B4、B5、B6
C2、C5.C6
D1,D2、D4、D5、D6
E3、E4、E5、E6
F2、F3、F4、F5、F6
G5、G6
白:15=A1、A2、A3、A4、A5、A6
C1、C3、C4、C7、C8
D3、E1、E2、F1
「あれ、なんだか盤面が変わってきましたよ青菜様」
「俺の調子が出てきた気がする」
ゲーム19。
黒:21=B2.B3、B4、B5、B6
C2、C3、C5、C6
D1,D2、D5、D6
E3、E5、E6
F2、F5、F6
G5、G6
白:19=A1、A2、A3、A4、A5、A6
C1、C4、C7、C8
D3、D4
E1、E2、E4
F1、F3、F4
G4
「もう少しです、逆転できますよ青菜様!」
「イケるかも?」
俺は期待を感じ始めていた。
「気のせいよ、まだワタクシの勝ちは変わらない」
ゲーム20。
黒:22=B1、B2、B3、B4、B5、B6
c1、c2、c3、c5、c6
D1,D2,D5,D6
E3,E5,E6
F5.F6
G5,G6
白:20=A1、A2、A3、A4、A5、A6
C4、C7、C8,D3,D4
E1.E2.E4
F1,F2,F3,F4
G3,G4
「喉元が見えるぜ・・・金子さん」
「誘ってるだけかもしれないでしょ?」
「その割には冷や汗が見えるぜ」
「・・・」
ゲーム21。
黒:22=
B1、B2、B3、B4、B5
c1、c2、c3、c5、c5
D1,D2,D4,D5
E3,E4,E5
F4,F5
G4,G5
H4
白:22=A1、A2、A3、A4、A5、A6
B6,C6,C7,C8,D3,D6
E1,E2,E6
F1,F2,F3,F6
G4,G6
H6
「凄い、客人が並んだ!」
ゲーム22。
黒:23=
B1、B2、B3、B4、B5
c1、c2、c3、c5、c5
D1,D2,D4
E2,E3,E5
F2,F4.F5
G3,G4,G5
H4
白:23=
A1、A2、A3、A4、A5、A6
B6,C6,C7,C8,
D3,D5,D6
E1,E4,E6
F1,F3,F6
G2,G6
H1.H6
「・・・」
「・・・」
金子さんも驚いてる。
まさか勝負が拮抗するとは思わなかったのだろう。
考える時間が多くなる。
そのせいで無言の時間が出始める。
ゲーム23。
黒:24=
B1、B2、B3、B4、B5
c1、c2、c3、c5、c5,C6
D1,D2
E2,E3,E5.E6
F2,F4.F5
G3,G4,G5
H4
白:24=
A1、A2、A3、A4、A5、A6
B6,
C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D7,D8
E1,E4
F1,F3,F6
G2,G6
H1.H6
同点が続く。
じれったい気分だ。
ゲーム24。
黒:27=
B1、B2、B3、B4、B5
c1、c2、c3、c5、c5,C6
D1,D2
E1,E2,E3,E5.
F1,F2,F4.F5
G1,G2,G3,G4,G5
H4
白:23=
A1、A2、A3、A4、A5、A6
B6,
C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D7,D8
E4,E6
F3,F6,F7
G6
H1.H6
「悪いわね、引き離させてもらったわ」
「俺の白が」
点差がまた開く。
「惜しかったのに、従私は残念な気持ちです」
ゲーム25。
黒:27=
B1、B2、B3、B4、B5,B6
c1、c2、c3、c5、c5,
D1,D2
E1,E2,E3,E5.
F1,F2,F4.F5
G1,G2,G3,G4,G5
H4
白:25=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A8
B7,
C6,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D7,D8
E4,E6
F3,F6,F7
G6
H1.H6
「仕方ないさ、客人はいい勝負をしたよ。
でも向こうの方が上だったんだ」
「まだ分からないぜ、省吾」
「客人・・・」
ゲーム26。
黒:27=
B1、B2、B3、B5,B6
c1、c2、c3、C4
D1,D2
E1,E2,E3,E5.E6
F1,F2,F4.F5,F6
G1,G2,G3,G4,G5
H4
白:27=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A8
B4,B7,
C5,C6,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D7,D8
E4,E7
F3,F7,F8
G6
H1.H6
「金子さん、また同点だ。
一度は見失いかけたが喉元が見えたぜ!」
「ふふ・・・ゲームが面白くなってきたわ」
金子さんは微笑を浮かべる。
ゲーム27。
黒:27=
B1、B2、B3、B5,B6
c1、c2、c3、C4,C6
D1,D2,D7
E1,E2,E3,E6.E7,E8
F1,F2,F4.F6
G1,G2,G3
H4
白:29=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A8
B4,B7,
C5,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D8
E4,E5
F3,F5,F7,F8
G4.G5.G6
H1.H5,H6
「やりました、青菜様!」
「エクスクラメーション!」
俺は喜びを表す。
ゲーム28。
黒:30=
B1、B2、B3、B5,B6
c1、c2、c3、C4,C6
D1,D2,D7
E1,E2,E3,E6.E7,E8
F1,F2,F4.F7
G1,G2,G3,G4,G5,G6
H4
白:28=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A8
B4,B7,
C5,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D8
E4,E5
F3,F5,F7,F8
G7
H1.H5,H6,H8
「残念だけど、ワタクシが逆転したわ」
黒が多くなる。
「ぐっ・・・」
俺の白が。
「惜しい、青菜様はトドメだと思ったのに」
俺はテーブルを指でとんとんと叩く。
「ふふ・・・焦ってるわね」
「うるさい!」
俺は頭を抱える。
「ゲームは落ち着いた方が有利になるわ」
「あんたが俺のことを煽るからだろう!」
「いつ、煽ったのかしら?」
「今だよ、俺は焦ってなんかいない!」
俺はバンと立ち上がる。
「客人、冷静に・・・だぜ?」
「悪い」
俺は座り直す。
「ゲームの続きをしましょう」
「分かったよ」
俺はコマを置く。
ゲーム29。
黒:33=
B1、B2、B3、B5
c1、c2、c3、C4,C6
D1,D2,D7
E1,E2,E3,E6.E7,E8
F1,F2,F4.F7
G1,G2,G3,G4,G5,G6,G7
H4,H5,H6,H7
白:27=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A7.A8
B4,B6.B7,
C5,C7,C8,
D3,D4,D5,D6,D8
E4,E5
F3,F5,F6,F8
G7
H1,H8
点差が開き始めた。
「もうゲームは終盤、負けを認めれば」
「負けを認めれば・・・協力してくれるのか?」
「それは嫌よ、約束は約束。
協力して欲しいのなら勝てばいいのよ。
ただ・・・難しいでしょうけどね」
金子さんは勝ち誇った顔をしてる。
ゲーム30。
黒:34=
B1、B2、B3、B5B6,B7,B8
c1、c2、c3、C4,C6,C7,C8
D1,D2,D6,D7,D8
E1,E2,E3,E5,E6.E7,E8
F1,F2,F4.F7
G1,G2,G5,G6,
白:28=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A7.A8
B4,
C5,,
D3,D4,D5,
E4,
F3,F5,F6,F8
G3,G4,G7
H1,H3,H4,H5,H6,H7,H8
「・・・」
俺は負けるのだろうか?
そんな気分になって来る。
「青菜君・・・だったわよね」
「あぁ・・・そうだが」
「仮面で顔が良く見えないけど、それは外せるの?」
「ファッションじゃない、無理だ」
「なら、こうしましょう。
仮面を外すなら・・・協力してあげてもいいわ」
「なに?」
「良かったじゃないか客人、仮面を外すだけで協力してくれるなんて」
省吾は喜んでる。
「青菜さま・・・」
しかしミクリは困惑している。
どうしていいのか判断に迷ってるのだろう。
「仮面は外さない・・・負けても勝ってもな」
「へぇ」
金子さんは邪悪な笑みを浮かべる。
「おいおいおいおいおい、客人」
「なんだよ」
「それはワガママってものじゃないのか?」
「なに?」
「どんなに不細工だろうと、顔に傷があろうと、
そんなのは関係ない。木霊館に閉じ込められてるのは、
いわば皆の問題だ。だが、お前は個人的な理由で仮面を外さないって
言ってるんだ、大生の言ってることは間違ってるか?」
「いや・・・間違ってない」
「なら、外せ。負けは決まってるんだ」
「まだ分からないだろ」
「分かるさ、いいから外すんだ!」
「そんなに外したくないんだぁ・・・余計に気になるなぁ」
金子さんは意地悪そうな顔をする。
「タヌキババア!」
「口が悪くなってるわ、青菜君」
「俺は意地でも外さないぞ」
「このっ」
省吾が無理やり外そうと手を伸ばす。
「ダメっ」
ミクリが立ちふさがる。
「ミクリ・・・?」
「本人がとても嫌がってます、
嫌がることはしてはいけないと親から習ったでしょう?」
「学校の教師が言うような善性100%の説教するんじゃねぇ、気持ち悪いんだよ!」
省吾が怒鳴る。
「・・・」
ミクリが怯えてる。
「勝てば文句ないだろ・・・?」
「だから、無理だと言ってるだろう」
俺はコマを置く。
ゲーム31。
黒:29=
B1、B3、B5.B6,B7,B8
c1、c3、C4,C6,C7,C8
D1,D6,D7,D8
E1,E3,E6.E7,E8
F1,F4.F7
G1,G5,G6,G7,G8
白:35=
A1、A2、A3、A4、A5、A6,A7.A8
B2,B4,
C2,C5,
D2,D3,D4,D5,
E2,E4,E5
F2,F3,F5,F6,F8
G2,G3,G4,
H1,H2,H3,H4,H5,H6,H7,H8
「どうだ・・・結果は」
「あ・・・?」
「あら、ワタクシの黒が少ない?」
「やりましたね、青菜様!」
ミクリが抱きしめてくる。
「仮面は外したくない、けれど迷惑はかけられない。
なら、勝つしかなかった。俺はやった、文句ないだろう」
「勝ったならいいんだけどよ・・・」
省吾は振り上げた拳を降ろす。
「土壇場での逆転・・・ふふ、負けちゃったわ」
金子さんは負けたが嬉しそうだ。
「初めから負けるつもりだったのか?」
「そんなことないわ、でも勝っても負けても協力はする気だっただけよ」
「なに?」
「煽ってゲームを面白くする。
ゲーマーなら基本でしょう?」
「タヌキババア」
「誉め言葉として受け取っておくわ、青菜君」
金子さんは笑う。
「良かった、丸く収まって」
ミクリは安心した顔をする。
「優身はアンタの娘だよな?金子さん」
「あら、見かけたの?」
「今は体調を崩して保護してる、見に来るか?」
「えぇ、そうするわ」
俺たちは4人で行動する。
そして、寝室の前までやってくる。
「優身は無事?」
「奥様」
執事が頭を下げる。
「毒蝮、貴方が見ててくれたの、礼を言うわ」
「勿体ない言葉」
毒蝮が礼儀正しく頭を下げる。
「中に入るわ」
「ですが、お嬢様は誰も入れるなと」
「ワタクシは誰?」
「・・・」
「賢いわね」
金子さんは部屋の中へ入る。
「俺たちも入ろう」
俺たちも続くように入る。
「誰よ、勝手に入って来て」
優身は背中にヒマワリが生えてるが元気になっていた。
「ワタクシよ」
「お母さん・・・」
「大丈夫そうね」
「別に心配されるようなものじゃ」
「あら、いろんな人が気を遣ったって聞いてるけど?」
「それはあいつらが勝手に」
「黙りなさい」
「うっ」
優身は黙る。
俺たちでは聞く耳を持たなかったが、母親となると別らしい。
「あんた協力しないんだって?」
「それは、そのだって」
「とにかくあんたも手伝いなさい」
「でも」
「言い訳は聞きたくないわ」
ぱしーんと頭を殴る。
「酷い!」
「人様に迷惑かけて、この馬鹿!」
「バカって何よ、あばずれ!」
「親に向かって何よその言い草!」
わー、きゃーと喧嘩する。
「あぁ・・・みっともない」
毒蝮が頭を抱えてる。
「しばらく放ってくか」
「そうですね、青菜様」
俺たちは喧嘩を傍観した。
「協力するそうよ」
金子さんと優身の服はボロボロだった。
「一体何が」
「聞かないで」
「そっすか・・・」
俺は聞かずにおいた。
「とにかく協力するわ、ワタクシも娘もね」
「うーっ」
優身は不満そうだが、手綱がしっかり握られてる気がした。
あれなら大丈夫そうだ。
「分かったよ」
「でも、夜は遅いわ。ここで寝ましょうか」
「そうだな、そろそろ疲れて来たころだった」
俺のアルトラズの能力も回復できるだろうしな。
「皆で寝ましょうか」
「分かった」
金子さんの音頭でこの場に居る、
毒蝮、青菜、ミクリ、省吾、優身、金子。
計6人は就寝した。
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転移した場所が【ふしぎな果実】で溢れていた件
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普通の高校2年生の竹中春人は突如、異世界転移を果たした。
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そこでしか成らない『ふしぎな果実』を空腹のあまり口にしてしまう。
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食料がない春人はそんなことは知らず、ふしぎな果実を米のように常食として喰らう。
不思議な果実の恩恵によって、規格外に強くなっていくハルトの、異世界冒険大ファンタジー。
大修正中!今週中に修正終え更新していきます!
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性的に襲われそうだったので、男であることを隠していたのに、女性の本能か男であることがバレたんですが。
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スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
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最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
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神の宝物庫〜すごいスキルで楽しい人生を〜
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せっかくのクラス転移だけども、俺はポテトチップスでも食べながらクラスメイトの冒険を見守りたいと思います
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元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
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彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
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