旦那様、私は全てを知っているのですよ?

私の愛しい旦那様が、一緒にお茶をしようと誘ってくださいました。

普段食事も一緒にしないような仲ですのに、珍しいこと。
私はそれに応じました。

テラスへと行き、旦那様が引いてくださった椅子に座って、ティーセットを誰かが持ってきてくれるのを待ちました。

旦那がお話しするのは、日常のたわいもないこと。
………でも、旦那様? 脂汗をかいていましてよ……?
それに、可笑しな表情をしていらっしゃるわ。

私は侍女がティーセットを運んできた時、なぜ旦那様が可笑しな様子なのか、全てに気がつきました。
その侍女は、私が嫁入りする際についてきてもらった侍女。
ーーー旦那様と恋仲だと、噂されている、私の専属侍女。

旦那様はいつも菓子に手を付けませんので、大方私の好きな甘い菓子に毒でも入ってあるのでしょう。
…………それほどまでに、この子に入れ込んでいるのね。
馬鹿な旦那様。


でも、もう、いいわ……。
私は旦那様を愛しているから、騙されてあげる。




そうして私は菓子を口に入れた。









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