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第一章
マキアとカツヤ 4
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*****
カツヤ「ごめん…はい、これ」
『あ…ありがと…。どうだった?お父さん…』
カツヤ君は持ってきたスボンを渡してくれた。下がスースーして寒かったからこれで寒くない。
カツヤ「ああ…うん、ちょっとね…。まいったなぁ~、コンビニ行ってこいって言われちゃったよ…」
『え、また買い物?』
カツヤ「うん…、マキアちゃんは知ってる?20歳にならないとお酒は買えないんだけど、お酒買って来いって言われたんだ…」
お酒を買いに…?
お父さんは行けれないってことなのかな?
カツヤ君…すごい困った顔してる…。
ーーーーーーどうすればいんだろう。
???「それ、僕に手伝わせてもらえない?」
ーーーーーえ?
急に声をかけられて、
カツヤ君とそっちを見ると
若くて背が高い男の人が立っていた。
カツヤ「誰?お兄さん」
お兄さん「僕の事より、早くお酒を買いに行こう。お父さんが待ってるんだろう?」
カツヤ「 ………… 」
その男の人は言うけどカツヤ君は黙っている。すると、カツヤ君がウチの傍に来てウチを背中に隠した。
(ーーーー)
カツヤ「帰ってください」
お兄さん「ちゃんとしてる子だね。簡単に知らない人にはついて行ってはダメだよ。」
( ……………… )
怪しいというかなんと言うか…
何だかこの人のこの感じーーーー
何かそうじゃない気がするーーーー。
お兄さん「怪しいよね…。いきなり現れて。でもね、僕は君達の力になりたいと思っただけなんだ。信じてもらえる保証なんてないんだけどね。」
カツヤ「こんな時間にいきなり現れて、信じろなんて無理だよ」
困ったなぁ…と言うように、
お兄さんは少し難しい顔をした。
少し様子を見てるとやっぱり
ウチ達に何かしようとする気もないようで
ただそこに立って、ずっと「うーん…」と考えてる。
『ねぇ、カツヤ君。この人悪い人じゃないと思う…。上手く言えないけど何となく違う…。大丈夫。』
この人の声聞いた時
すごい落ち着く感じがした。
声の感じとか表情とか目とか見てると、
何となく分かる気がする。
本当に怖い人とかーー多分ウチは分かるから。
カツヤ「…わかった。ーー俺達に何かしたら、めちゃくちゃ大声出しますからね!!」
お兄さん「えっ…手伝ってもいいのかい?よかった…、君達の力になりたかったから嬉しいな。じゃあ、早速コンビニに行こうか。」
お兄さんに前を歩かせて、カツヤ君とウチは少し離れて後ろをついて行った。
そして、
♪~
何事もなくお酒を買うことが出来た。
本当に何もしてこないし、
コンビニで自分用のチョコレートまで買ってきて何故かウチとカツヤ君にも分けてきた。
「このチョコ美味いな…」「今度入れてもらおうかな…」と、帰り道ずっとチョコレートに興味津々だった。
カツヤ「…なんかこのお兄さん…抜けてるというかなんなんだろうね…今なんてずっとチョコレートにしか興味なさそうなんだけど…。コンビニ行くまでにも、あれは何?とか俺でも知ってる事聞いてくるし…」
『う…うん。』
トッ トッ トッ
ーーーー家に着いた。
カツヤ「とりあえず分かったことは…このお兄さんは害は無さそうだ。今も2個目のチョコレートずっと食べてるし…。とりあえず、マキアちゃんはここにいて?酒届けてくるから」
『うん』
タタタ…
お兄さん「君もこれ食べる?さっきのとは違ってちょっと甘くて美味しいよ」
『…ありがとう』
カツヤ君のお父さんが帰ってきたってことは
もうここにはウチはいられないよね…
もう…やっぱり、
かーさんのところに帰るしかないのかな…
帰ったらどーなるんだろ…
またあの毎日が始まるのかな…
またゴミ置き場に捨てられるのかな…
お兄さん「ねぇ、君の家はどこなの?」
( ………… )
どうしよう…
何て言えばいんだろ…
お兄さん「ねぇ、」
お兄さんはしゃがんでウチの顔を見る。
今のウチの顔はあんまり見て欲しくないかも…
顔アザだらけだし…目も半分閉じてるし…
お兄さんはウチの頭に手を乗せて
ポンポンと頭を撫でてきた。
お兄さん「もし、帰る場所がないなら…僕の所に来る?」
『ーーーーえ?』
ガシャーーンッ!!
2人「ーーーー?!」
突然カツヤ君の家の中から
大きな音が聞こえてきた。
それと泣き叫ぶ声も聞こえてくる。
『えっ…何…?』
お兄さん「ーー…何だろうね、少し中を見てくるから君はここにいて?」
ガラガラ…とお兄さんは中に入っていくーー
『……カツヤ君が…』
ここにいてと言われたけど…気になる…
少し中を覗こうと玄関に向かうことにした。
*****
「ぎゃあぁああぁっ…!いたぁぁあいぃ!!」
父「うるせー!!もうオメーらうるせんだよお!!頼むから黙れよオラァ!!」
バキッ ゴッ バシィッ
『父さん!!!お願いだから!!ジュン殴らないでっ!!そんな殴ったら死んじゃうっ!!!!』
酒を買って戻ると、
買ってくるのが遅かったと父さんは急に怒りだして傍で寝ていたジュンとチトセに暴力を振るいだした。2人はまだ小さいのにそんな事したら本当に死ぬかもしれないっ…
止めたいのに俺の力じゃ止めきれないっ…
頼むからやめてくれ父さんーーー!!!
咄嗟に父さんの腕にしがみつく。
父「オメーも邪魔なんだよっ!!!」
バキィィッ!!
『ぐぅっ!!』
顔を殴られて床に体がぶつかるーー
ドカッ ゴッ ドッ
ジュンとチトセの泣き叫ぶ声が聞こえるーーー
やめてっ… 父さん…!本当にっ!!!
二人を助けてっ…!!
誰か…頼むから止めてくれーーーーーーっ!!
ガシッ
『ーーーーー!』
ーーー俺の声が届いたのか…?
そこにはお兄さんが父さんの腕を握り、止めていた。
父「あ?誰だお前ーーー」
お兄さん「そこの彼の知人です。泣き声が聞こえてきたもので何事かとーーー」
お兄さんは俺を横目で見てそう、父さんに言う。一緒に買い物してくれた時、抜けてる感満載だったのに今のお兄さんは冷静に見えるけど、すごく怒っているように見えた。
父「すいませんけど…家族の問題に首、突っ込まないでほしんですけどねぇー」
お兄さん「ーー家族?家族だったとしてもあなたはやり過ぎだ。見てみて下さい、この子達を。」
そう言われた父さんは俺達に視線を向けることなく、ずっとお兄さんを睨みつけている。
お兄さん「カツヤ君」
『!…な…何?』
お兄さん「お父さんはいつもこんな感じなのかな?」
突然の質問に正直戸惑ったけど、この人ならーー。なんか…なんかしてくれるのかもしれないーーー
『いや、いつもは家にあんまりいないんだ…今日は久々に帰ってきて、でも今日は何か様子が違うんだ。いつもはこんなんじゃない』
お兄さん「そう…」
いつもはこんなことするような人じゃないんだーー。きっと何かーー
…きっと理由があるんだ。
父「ったんだよ……」
お兄さん「?」
父「クビになったんだよっ!!明日から仕事がねんだよ!!!金も…ねぇっ!!もう…俺もオメーらも…もう終わりなんだよっ……」
お兄さん「そうなったのには何か理由があるはずですよね?正当な理由がなくてはそうはならない」
父「勝手なこと言うな…アンタに何が分かんだよっ…」
ーーーこんな弱音を吐く父さん見たことない…
崩れ落ちて、床に手をついた父さんが
横目で俺を見てきた。
父「よくもあの女…こんな荷物三人も置いていくよなぁ~……どこで何してんのか…許さねぇ……」
(ーーーーーーーっ)
に…荷物…?
父さん俺らのこと…そんな風に思ってたの…?
父「俺がどんな思いで働いて…飯食わせて…俺はもうーーーー疲れたよ……。人生クソ喰らえ…」
お兄さん「それが親というものでしょう。疲れたからこんな事した、とでも言うんですか?」
父「ーー…ああ。もう、どうでもいんだ…生きようが死のうが」
座り込んでぐったりしてる父さんを見てると
俺はもう…何も言えなくなったーーー
父さんの望んでること…俺に出来ること…
分からないけどーーー
自分でもビックリするくらい
震えていた口を動かす。
「ーーー…父さん、俺…二人を連れて父さんの前からいなくなった方がいい…?」
お兄さん「 ……。」
少しの長い沈黙の後に父さんはこっちを見た。
父「ーー…そうだな…。そうしてくれると助かるよ…」
ーーー弱々しい返事が返ってきた。
………そっか。
そっ……かぁ……。
俺から聞いたとはいえ、もう少し違う言葉を待っていただけに悲しくなった。
前はかーさんがいなくたって、どこか連れて行ってくれたり、仕事が終わったらすぐ帰ってきてご飯作ってくれたり…
あの頃は嬉しかったし楽しかった、ーーー毎日が。
もうあの頃にはきっと戻れないんだね。
そういう事でしょ?……父さん。
お兄さん「でしたら、カツヤ君達は僕が引き取るというのはどうですか?貧困でこのままでは生活もままならないのであれば…ですが。」
父「ーーーなんだ、アンタ…引き取ってくれるのか…?」
お兄さん「えぇ、僕で良ければですけど。」
お兄さんが俺達をーーー?
それは重荷になるんじゃーー…
だって…どうみたって、20歳そこらだろ?
お兄さんの顔を見ると、
受け入れてるような優しい表情をしている。
「そっか」と言うように、さっきとは違う、
父さんも安心したような顔をしてる。
父さんの為になるならーーー、
だったらーーー、俺は……
『父さん!俺、お兄さんのところで頑張ってみるよ。立派な大人になったらさ、また父さんの顔見に来てもいい?ジュンとチトセも連れて!』
涙が出そうになったけど
グッと堪えて、笑ってそう言ってみせた。
すると、ビックリした顔をした父さんは
俯いて少し遅れてから
父「ーーあぁ、んじゃ…それまで楽しみにしとくわ」
そう言って、父さんは少し笑った。
カツヤ「ごめん…はい、これ」
『あ…ありがと…。どうだった?お父さん…』
カツヤ君は持ってきたスボンを渡してくれた。下がスースーして寒かったからこれで寒くない。
カツヤ「ああ…うん、ちょっとね…。まいったなぁ~、コンビニ行ってこいって言われちゃったよ…」
『え、また買い物?』
カツヤ「うん…、マキアちゃんは知ってる?20歳にならないとお酒は買えないんだけど、お酒買って来いって言われたんだ…」
お酒を買いに…?
お父さんは行けれないってことなのかな?
カツヤ君…すごい困った顔してる…。
ーーーーーーどうすればいんだろう。
???「それ、僕に手伝わせてもらえない?」
ーーーーーえ?
急に声をかけられて、
カツヤ君とそっちを見ると
若くて背が高い男の人が立っていた。
カツヤ「誰?お兄さん」
お兄さん「僕の事より、早くお酒を買いに行こう。お父さんが待ってるんだろう?」
カツヤ「 ………… 」
その男の人は言うけどカツヤ君は黙っている。すると、カツヤ君がウチの傍に来てウチを背中に隠した。
(ーーーー)
カツヤ「帰ってください」
お兄さん「ちゃんとしてる子だね。簡単に知らない人にはついて行ってはダメだよ。」
( ……………… )
怪しいというかなんと言うか…
何だかこの人のこの感じーーーー
何かそうじゃない気がするーーーー。
お兄さん「怪しいよね…。いきなり現れて。でもね、僕は君達の力になりたいと思っただけなんだ。信じてもらえる保証なんてないんだけどね。」
カツヤ「こんな時間にいきなり現れて、信じろなんて無理だよ」
困ったなぁ…と言うように、
お兄さんは少し難しい顔をした。
少し様子を見てるとやっぱり
ウチ達に何かしようとする気もないようで
ただそこに立って、ずっと「うーん…」と考えてる。
『ねぇ、カツヤ君。この人悪い人じゃないと思う…。上手く言えないけど何となく違う…。大丈夫。』
この人の声聞いた時
すごい落ち着く感じがした。
声の感じとか表情とか目とか見てると、
何となく分かる気がする。
本当に怖い人とかーー多分ウチは分かるから。
カツヤ「…わかった。ーー俺達に何かしたら、めちゃくちゃ大声出しますからね!!」
お兄さん「えっ…手伝ってもいいのかい?よかった…、君達の力になりたかったから嬉しいな。じゃあ、早速コンビニに行こうか。」
お兄さんに前を歩かせて、カツヤ君とウチは少し離れて後ろをついて行った。
そして、
♪~
何事もなくお酒を買うことが出来た。
本当に何もしてこないし、
コンビニで自分用のチョコレートまで買ってきて何故かウチとカツヤ君にも分けてきた。
「このチョコ美味いな…」「今度入れてもらおうかな…」と、帰り道ずっとチョコレートに興味津々だった。
カツヤ「…なんかこのお兄さん…抜けてるというかなんなんだろうね…今なんてずっとチョコレートにしか興味なさそうなんだけど…。コンビニ行くまでにも、あれは何?とか俺でも知ってる事聞いてくるし…」
『う…うん。』
トッ トッ トッ
ーーーー家に着いた。
カツヤ「とりあえず分かったことは…このお兄さんは害は無さそうだ。今も2個目のチョコレートずっと食べてるし…。とりあえず、マキアちゃんはここにいて?酒届けてくるから」
『うん』
タタタ…
お兄さん「君もこれ食べる?さっきのとは違ってちょっと甘くて美味しいよ」
『…ありがとう』
カツヤ君のお父さんが帰ってきたってことは
もうここにはウチはいられないよね…
もう…やっぱり、
かーさんのところに帰るしかないのかな…
帰ったらどーなるんだろ…
またあの毎日が始まるのかな…
またゴミ置き場に捨てられるのかな…
お兄さん「ねぇ、君の家はどこなの?」
( ………… )
どうしよう…
何て言えばいんだろ…
お兄さん「ねぇ、」
お兄さんはしゃがんでウチの顔を見る。
今のウチの顔はあんまり見て欲しくないかも…
顔アザだらけだし…目も半分閉じてるし…
お兄さんはウチの頭に手を乗せて
ポンポンと頭を撫でてきた。
お兄さん「もし、帰る場所がないなら…僕の所に来る?」
『ーーーーえ?』
ガシャーーンッ!!
2人「ーーーー?!」
突然カツヤ君の家の中から
大きな音が聞こえてきた。
それと泣き叫ぶ声も聞こえてくる。
『えっ…何…?』
お兄さん「ーー…何だろうね、少し中を見てくるから君はここにいて?」
ガラガラ…とお兄さんは中に入っていくーー
『……カツヤ君が…』
ここにいてと言われたけど…気になる…
少し中を覗こうと玄関に向かうことにした。
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「ぎゃあぁああぁっ…!いたぁぁあいぃ!!」
父「うるせー!!もうオメーらうるせんだよお!!頼むから黙れよオラァ!!」
バキッ ゴッ バシィッ
『父さん!!!お願いだから!!ジュン殴らないでっ!!そんな殴ったら死んじゃうっ!!!!』
酒を買って戻ると、
買ってくるのが遅かったと父さんは急に怒りだして傍で寝ていたジュンとチトセに暴力を振るいだした。2人はまだ小さいのにそんな事したら本当に死ぬかもしれないっ…
止めたいのに俺の力じゃ止めきれないっ…
頼むからやめてくれ父さんーーー!!!
咄嗟に父さんの腕にしがみつく。
父「オメーも邪魔なんだよっ!!!」
バキィィッ!!
『ぐぅっ!!』
顔を殴られて床に体がぶつかるーー
ドカッ ゴッ ドッ
ジュンとチトセの泣き叫ぶ声が聞こえるーーー
やめてっ… 父さん…!本当にっ!!!
二人を助けてっ…!!
誰か…頼むから止めてくれーーーーーーっ!!
ガシッ
『ーーーーー!』
ーーー俺の声が届いたのか…?
そこにはお兄さんが父さんの腕を握り、止めていた。
父「あ?誰だお前ーーー」
お兄さん「そこの彼の知人です。泣き声が聞こえてきたもので何事かとーーー」
お兄さんは俺を横目で見てそう、父さんに言う。一緒に買い物してくれた時、抜けてる感満載だったのに今のお兄さんは冷静に見えるけど、すごく怒っているように見えた。
父「すいませんけど…家族の問題に首、突っ込まないでほしんですけどねぇー」
お兄さん「ーー家族?家族だったとしてもあなたはやり過ぎだ。見てみて下さい、この子達を。」
そう言われた父さんは俺達に視線を向けることなく、ずっとお兄さんを睨みつけている。
お兄さん「カツヤ君」
『!…な…何?』
お兄さん「お父さんはいつもこんな感じなのかな?」
突然の質問に正直戸惑ったけど、この人ならーー。なんか…なんかしてくれるのかもしれないーーー
『いや、いつもは家にあんまりいないんだ…今日は久々に帰ってきて、でも今日は何か様子が違うんだ。いつもはこんなんじゃない』
お兄さん「そう…」
いつもはこんなことするような人じゃないんだーー。きっと何かーー
…きっと理由があるんだ。
父「ったんだよ……」
お兄さん「?」
父「クビになったんだよっ!!明日から仕事がねんだよ!!!金も…ねぇっ!!もう…俺もオメーらも…もう終わりなんだよっ……」
お兄さん「そうなったのには何か理由があるはずですよね?正当な理由がなくてはそうはならない」
父「勝手なこと言うな…アンタに何が分かんだよっ…」
ーーーこんな弱音を吐く父さん見たことない…
崩れ落ちて、床に手をついた父さんが
横目で俺を見てきた。
父「よくもあの女…こんな荷物三人も置いていくよなぁ~……どこで何してんのか…許さねぇ……」
(ーーーーーーーっ)
に…荷物…?
父さん俺らのこと…そんな風に思ってたの…?
父「俺がどんな思いで働いて…飯食わせて…俺はもうーーーー疲れたよ……。人生クソ喰らえ…」
お兄さん「それが親というものでしょう。疲れたからこんな事した、とでも言うんですか?」
父「ーー…ああ。もう、どうでもいんだ…生きようが死のうが」
座り込んでぐったりしてる父さんを見てると
俺はもう…何も言えなくなったーーー
父さんの望んでること…俺に出来ること…
分からないけどーーー
自分でもビックリするくらい
震えていた口を動かす。
「ーーー…父さん、俺…二人を連れて父さんの前からいなくなった方がいい…?」
お兄さん「 ……。」
少しの長い沈黙の後に父さんはこっちを見た。
父「ーー…そうだな…。そうしてくれると助かるよ…」
ーーー弱々しい返事が返ってきた。
………そっか。
そっ……かぁ……。
俺から聞いたとはいえ、もう少し違う言葉を待っていただけに悲しくなった。
前はかーさんがいなくたって、どこか連れて行ってくれたり、仕事が終わったらすぐ帰ってきてご飯作ってくれたり…
あの頃は嬉しかったし楽しかった、ーーー毎日が。
もうあの頃にはきっと戻れないんだね。
そういう事でしょ?……父さん。
お兄さん「でしたら、カツヤ君達は僕が引き取るというのはどうですか?貧困でこのままでは生活もままならないのであれば…ですが。」
父「ーーーなんだ、アンタ…引き取ってくれるのか…?」
お兄さん「えぇ、僕で良ければですけど。」
お兄さんが俺達をーーー?
それは重荷になるんじゃーー…
だって…どうみたって、20歳そこらだろ?
お兄さんの顔を見ると、
受け入れてるような優しい表情をしている。
「そっか」と言うように、さっきとは違う、
父さんも安心したような顔をしてる。
父さんの為になるならーーー、
だったらーーー、俺は……
『父さん!俺、お兄さんのところで頑張ってみるよ。立派な大人になったらさ、また父さんの顔見に来てもいい?ジュンとチトセも連れて!』
涙が出そうになったけど
グッと堪えて、笑ってそう言ってみせた。
すると、ビックリした顔をした父さんは
俯いて少し遅れてから
父「ーーあぁ、んじゃ…それまで楽しみにしとくわ」
そう言って、父さんは少し笑った。
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