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第一章
小さな町 闘場町 6
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ガチャン…
ユウキ「あ!お母さんおかえり!」
リビングでテレビを見ていたユウキが
トットットッと私を出迎えてくれる。
『ただいま、ユウキ』
つい顔が緩んでしまう。
心が落ち着くーーー。
この子は本当に可愛い。
私の一番の宝物。
ユウキ「今日帰り早いね、いつも遅いのに」
『うん、今日はね早く上がれたのよ。』
夕飯の支度をするために台所へと足を進める。
今日はハンバーグにする。
ユウキが大好きな食べ物。
チーズものせて、美味しくしてあげるから待っててね。
ユウキ「お姉ちゃん今日も遊んで帰ってくるのかな?いっつも遅いよね~」
ボウルを持った手をピタッと止める。
さっきまであったことが頭に甦るーーー。
私が最もこの世から消し去りたい存在がいなくなった。
何だか清々しい気分なの今。
ユウキーー、あなたがいてくれれば
私はもうなにも要らないのよ。
あなただけが私の全てーーー
だから私の前でそれの話はやめてね。
もうあなたには
姉なんて者はいないのだからーーーー
**********
トッ… トッ… トッ…
あれからどのくらい歩いただろうーーー
一時間以上は歩いている。足が疲れてきた…
すっかり外は暗くなり、街灯の灯りと
横を通り過ぎる車のライトだけが道を照らす。
この人は一体どこから来たのだろうーー、
あの時一緒にいた黒髪の男の子もいない。
『ねぇ、はぁ…後どのくらい歩くの?』
少年「ん?そうだなぁ…今ちょうど半分ってとこか?」
……嘘…もう何か疲れたんだけど…
外は大分寒いし…この格好は正直きつい…。
この人は寒くないの?そんな薄着で…
少年「どうした?疲れたのか?……仕方ねぇなぁ。ーーーほら、背中乗れ。」
突然少年がかがみ私に背中を差し出す。
『えっ!?いっ…いや、いいっ!!いいです!!』
手をブンブンとして断る。
これはあまりにも恥ずかしいし何か申し訳ないもの…。
少年「あ?疲れたんだろ?何遠慮してんだよ。」
しゃがんだままこちらを振り返りながら少年は言うが、誰も見てないとは言え、甘えるのはちょっと躊躇してしまうーー
『だって…私甘えるってこと好きじゃないし…それに、あなた男の子だしそんなの恥ずかしいじゃない。』
少年「ーーーーーは?」
あきれた顔をして少年は立ち上がる。
そして私に向き直り、
少年「ちょっと待て、言っておくがウチ、女だぞ。」
ーーーー?
ーーーえ……オンナ……。
女?!?!
この人女の子なの!?
えっ……言葉遣いとか声も低いし…
私を軽々と持ち上げるのに…
この人女の子?!
つい胸元を見てしまうーーー
胸には包帯。
この包帯は胸を隠す物だとしたら
とんだ勘違いだ。
顔も目鼻立ちがしっかりしていて
一見美少年に見えるが……
ただの私の思い違いだったみたいだ。
『ーーご…ごめんなさい。私…あなたの事ーーー』
金髪女子「だろうな、その様子じゃ。まぁ…よく間違われるからいーけど。ーーとりあえず、ゆっくりしてるとあっちに着くの夜中になっちまうから行くぞ。」
そう言うと、この人はさっきより歩く速度を少し緩めてくれた。
そして移動しながら疑問に思っていたことーー
その話をしてくれる。
この世界には、“表”と“裏”というものがあり
漫画やアニメのような場所から場所へ瞬時にとんだり、そんな時空的なものではなく
同じ世界に存在しその二つは壁でただ仕切られているだけのようなものらしい。
私が今まで暮らしていたところが言わば“表”。
人類の大半が暮らしている平和で住み心地がいいところだ。
そして、この人が暮らしているところが“裏”と呼ばれるところで、そこはここみたいに平和で安全と言えるにはほど遠い世界ーーー
そして、“表“住民は
”裏”には無断で入ることはできない。
存在を知らなければ行く術も分からないのだから。
それに比べ“裏”住民はこちらに来ることはできるがそれは仕事、つまりお偉いさんから頼まれ許可がなければ来ることは出来ないという。
“裏”の存在は隠されている為、“表”住民に存在を知られるという事はタブーらしく
あの時私を犠牲にし姿を眩ましたのもこの為だという。
それなのに私は“表”住民なのに
“裏”に行ってもいいのかーーー
例外として、受け入れることが可能らしい。
ただし、本人の意思が一番重要。
一度来てしまえば最後、戻りたいと言ったとしてもそれは出来ない。
もう一生“裏”で生きていくことを約束される。
それとこれは驚きな話。
“表”の警察のお偉いさんは
“裏”の存在を知っている。
“表”住民が“裏”に入った時、知ることができ
例えばその者の家族や知人が捜索願いを出したとしても、それを調べてすでに“裏”住民となっていれば捜索願いは破棄される。
そういう面倒事を担う代わりに
凶悪事件や手に終えない事件が起きた時
“裏”に要請を出して協力を得ることが出来るらしい。
まさかそんなことがこの世で行われてるなんて思いもしないだろうーー
ーーー森の中をしばらく進む
行き着いた先には大きな壁と扉。
そして窓口。
その隣には壁にもたれている一人の人物。
あの時の男の子だ。
男の子「はぁ…おっせーよぉ……。どんだけ待ったか……ってあれ?お前…」
『あの…あの時はありがとう。手当てまでしてもらって。』
エリアが助かったのもこの人のおかげ。
感謝してもしきれない。
お礼を言う私を男の子はじっとみる。
その目は“本当に来ていいのか”と
言っているようだーーー
決めたのは私。
ありがとうーー心配してくれて。
『これからよろしく』
男の子はビックリした顔をしたが
柔らかく微笑んでくれた。
男の子「ーーああ!よろしくな!」
ーーーそうして二人に連れられ窓口へ。
固く閉じられた白ガラス。
受付の人はいないっぽい。
金髪女子「Bブロック闘場町の香月、服部二名戻ります。」
するとーーー、白ガラスにボヤァ…と人影。
下の方に少しだけ開いている隙間から手がのっそりと出てきて、こちらが差し出したチケットみたいなものを受けとる。
これでこの先に進むことができるらしい。
金髪女子「あと、今日から一名こっちに入ります。書類は明日にでも送らせます。」
窓口「了解」
これで私は“表”住民から籍を外し
“裏”住民になったんだーー。
未だ知らない世界に一歩足を踏み入れるーー
そこはまだ森の中だが
さっきまでとは何か違うく感じるーーー
気持ちの変化だろうかーー。
ザッ… ザッ… ザッ…
暗闇の森を歩いていくーー。
明かりはあるがそれは月の明かりだけ。
あまりにも暗くて私は道が分からないので
香月と、名乗っていた女の子に手を引かれ歩いている。
辺りはザァァ…と風で揺れている木の音と
何か動物の鳴き声、あとは私達が踏みしめる土の音がする。
ーー少し怖い。
そうしてーーーついについた。
大きな木で出来ている門。
下の方にある小さな入り口。
ギギギギィ…と音をたて門が開くとそこはーー
光に包まれた小さな町。
お店だろうかーーたくさんの明かりが見える。
ワイワイと聞こえる人の声ーー。
川の音も聞こえる。
町というか広さ的には里と呼ぶべきなのかもしれない。
ここがーーーー
金髪女子「ここがウチらの町、闘場町だ」
今日から私が住む場所ーー闘場町。
今、まさに今、
ーーーー第二の人生の幕開けだ
ユウキ「あ!お母さんおかえり!」
リビングでテレビを見ていたユウキが
トットットッと私を出迎えてくれる。
『ただいま、ユウキ』
つい顔が緩んでしまう。
心が落ち着くーーー。
この子は本当に可愛い。
私の一番の宝物。
ユウキ「今日帰り早いね、いつも遅いのに」
『うん、今日はね早く上がれたのよ。』
夕飯の支度をするために台所へと足を進める。
今日はハンバーグにする。
ユウキが大好きな食べ物。
チーズものせて、美味しくしてあげるから待っててね。
ユウキ「お姉ちゃん今日も遊んで帰ってくるのかな?いっつも遅いよね~」
ボウルを持った手をピタッと止める。
さっきまであったことが頭に甦るーーー。
私が最もこの世から消し去りたい存在がいなくなった。
何だか清々しい気分なの今。
ユウキーー、あなたがいてくれれば
私はもうなにも要らないのよ。
あなただけが私の全てーーー
だから私の前でそれの話はやめてね。
もうあなたには
姉なんて者はいないのだからーーーー
**********
トッ… トッ… トッ…
あれからどのくらい歩いただろうーーー
一時間以上は歩いている。足が疲れてきた…
すっかり外は暗くなり、街灯の灯りと
横を通り過ぎる車のライトだけが道を照らす。
この人は一体どこから来たのだろうーー、
あの時一緒にいた黒髪の男の子もいない。
『ねぇ、はぁ…後どのくらい歩くの?』
少年「ん?そうだなぁ…今ちょうど半分ってとこか?」
……嘘…もう何か疲れたんだけど…
外は大分寒いし…この格好は正直きつい…。
この人は寒くないの?そんな薄着で…
少年「どうした?疲れたのか?……仕方ねぇなぁ。ーーーほら、背中乗れ。」
突然少年がかがみ私に背中を差し出す。
『えっ!?いっ…いや、いいっ!!いいです!!』
手をブンブンとして断る。
これはあまりにも恥ずかしいし何か申し訳ないもの…。
少年「あ?疲れたんだろ?何遠慮してんだよ。」
しゃがんだままこちらを振り返りながら少年は言うが、誰も見てないとは言え、甘えるのはちょっと躊躇してしまうーー
『だって…私甘えるってこと好きじゃないし…それに、あなた男の子だしそんなの恥ずかしいじゃない。』
少年「ーーーーーは?」
あきれた顔をして少年は立ち上がる。
そして私に向き直り、
少年「ちょっと待て、言っておくがウチ、女だぞ。」
ーーーー?
ーーーえ……オンナ……。
女?!?!
この人女の子なの!?
えっ……言葉遣いとか声も低いし…
私を軽々と持ち上げるのに…
この人女の子?!
つい胸元を見てしまうーーー
胸には包帯。
この包帯は胸を隠す物だとしたら
とんだ勘違いだ。
顔も目鼻立ちがしっかりしていて
一見美少年に見えるが……
ただの私の思い違いだったみたいだ。
『ーーご…ごめんなさい。私…あなたの事ーーー』
金髪女子「だろうな、その様子じゃ。まぁ…よく間違われるからいーけど。ーーとりあえず、ゆっくりしてるとあっちに着くの夜中になっちまうから行くぞ。」
そう言うと、この人はさっきより歩く速度を少し緩めてくれた。
そして移動しながら疑問に思っていたことーー
その話をしてくれる。
この世界には、“表”と“裏”というものがあり
漫画やアニメのような場所から場所へ瞬時にとんだり、そんな時空的なものではなく
同じ世界に存在しその二つは壁でただ仕切られているだけのようなものらしい。
私が今まで暮らしていたところが言わば“表”。
人類の大半が暮らしている平和で住み心地がいいところだ。
そして、この人が暮らしているところが“裏”と呼ばれるところで、そこはここみたいに平和で安全と言えるにはほど遠い世界ーーー
そして、“表“住民は
”裏”には無断で入ることはできない。
存在を知らなければ行く術も分からないのだから。
それに比べ“裏”住民はこちらに来ることはできるがそれは仕事、つまりお偉いさんから頼まれ許可がなければ来ることは出来ないという。
“裏”の存在は隠されている為、“表”住民に存在を知られるという事はタブーらしく
あの時私を犠牲にし姿を眩ましたのもこの為だという。
それなのに私は“表”住民なのに
“裏”に行ってもいいのかーーー
例外として、受け入れることが可能らしい。
ただし、本人の意思が一番重要。
一度来てしまえば最後、戻りたいと言ったとしてもそれは出来ない。
もう一生“裏”で生きていくことを約束される。
それとこれは驚きな話。
“表”の警察のお偉いさんは
“裏”の存在を知っている。
“表”住民が“裏”に入った時、知ることができ
例えばその者の家族や知人が捜索願いを出したとしても、それを調べてすでに“裏”住民となっていれば捜索願いは破棄される。
そういう面倒事を担う代わりに
凶悪事件や手に終えない事件が起きた時
“裏”に要請を出して協力を得ることが出来るらしい。
まさかそんなことがこの世で行われてるなんて思いもしないだろうーー
ーーー森の中をしばらく進む
行き着いた先には大きな壁と扉。
そして窓口。
その隣には壁にもたれている一人の人物。
あの時の男の子だ。
男の子「はぁ…おっせーよぉ……。どんだけ待ったか……ってあれ?お前…」
『あの…あの時はありがとう。手当てまでしてもらって。』
エリアが助かったのもこの人のおかげ。
感謝してもしきれない。
お礼を言う私を男の子はじっとみる。
その目は“本当に来ていいのか”と
言っているようだーーー
決めたのは私。
ありがとうーー心配してくれて。
『これからよろしく』
男の子はビックリした顔をしたが
柔らかく微笑んでくれた。
男の子「ーーああ!よろしくな!」
ーーーそうして二人に連れられ窓口へ。
固く閉じられた白ガラス。
受付の人はいないっぽい。
金髪女子「Bブロック闘場町の香月、服部二名戻ります。」
するとーーー、白ガラスにボヤァ…と人影。
下の方に少しだけ開いている隙間から手がのっそりと出てきて、こちらが差し出したチケットみたいなものを受けとる。
これでこの先に進むことができるらしい。
金髪女子「あと、今日から一名こっちに入ります。書類は明日にでも送らせます。」
窓口「了解」
これで私は“表”住民から籍を外し
“裏”住民になったんだーー。
未だ知らない世界に一歩足を踏み入れるーー
そこはまだ森の中だが
さっきまでとは何か違うく感じるーーー
気持ちの変化だろうかーー。
ザッ… ザッ… ザッ…
暗闇の森を歩いていくーー。
明かりはあるがそれは月の明かりだけ。
あまりにも暗くて私は道が分からないので
香月と、名乗っていた女の子に手を引かれ歩いている。
辺りはザァァ…と風で揺れている木の音と
何か動物の鳴き声、あとは私達が踏みしめる土の音がする。
ーー少し怖い。
そうしてーーーついについた。
大きな木で出来ている門。
下の方にある小さな入り口。
ギギギギィ…と音をたて門が開くとそこはーー
光に包まれた小さな町。
お店だろうかーーたくさんの明かりが見える。
ワイワイと聞こえる人の声ーー。
川の音も聞こえる。
町というか広さ的には里と呼ぶべきなのかもしれない。
ここがーーーー
金髪女子「ここがウチらの町、闘場町だ」
今日から私が住む場所ーー闘場町。
今、まさに今、
ーーーー第二の人生の幕開けだ
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