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第一章
小さな町 闘場町 5
しおりを挟むザワ… ザワ…
マロン「ちょっと待てよ、おい!どうなってんだよ!何でーーー!何でリンダが連れていかれてんだよ!」
女子1「リンダが……」
女子2「見て、男の人二人とも気絶してるの?」
女子3「リンダがやったの…?」
カノン「………」
皆が廊下から見ている中、
警察の人に連れられ私は車に乗り込むーーー
私はどうなるんだろうーー
ただ一つ分かること……それは
あの人がこの事を許すはずがないと言うことだけ。
**********
コツ… コツ… コツ…
トッ… トッ… トッ…
私の前を歩く母は無言のまま歩き続ける。
警察署の駐車場に停めてある車へ近づくと
私の方へ向き直る。
母「ねぇ?アンタ帰ってこなくていいわよ」
『………』
親とは思えない、まるで
虫かゴミを見るような目ーーー。
あの後私は署に連れてこられ母を呼ばれ
あの時起こったことを説明したのだが
謎の二人組の事も作り話だと判断され
最後まで警察にも母にも信じてもらえなかった。
嘘なんてついてないーーー
どうして信じてくれないのーー
そう期待したい気持ちもきっとこの人には
無意味でしかないんだーーーーー
だって……私はーーーーー
母「どうして私が呼び出されなくちゃならないのかしらぁ?この時間本当に無駄だわぁ…。ねぇ?私がこの世で一番死ぬほど嫌いなものって何だか分かる?」
『………』
あなたの嫌いなもの。
ーーーーー嫌でも分かるよ、そんなの。
どうせーーーーー……
母「お前だよ。」
母「何で私の前にいるの近くにいるの何で生きてるのよ…っ!ホントもう…本当に…産まれてきたことが罪よねぇ……ハハハハハ。」
そう母は空を見上げながら
ぶつぶつと呟いている。
母はずいぶん前、私が物心ついた頃から
私と会話をする時だけこんな様子だ。
家ではほとんど私と話をすることはない。
私には妹がいる。名前はユウキ。歳は10。
母はユウキが大切で大好き。
私もユウキは大好き。
私を慕ってくれて可愛らしくて
居心地の悪い家の唯一の光だからーーー
母は私の事は空気だと思っている。
むしろ存在しないものだと思われているかもしれない。
理由は分かっているんだ。
それは離婚した父が原因だってことも。
今日は本当に久しぶりに視線が合い、
会話らしきものをしているーーそんな状況。
母「はぁーー…私も人生狂わされたぁ…。悪魔を産んだばかりに……ハハ…。お前のせいで私とユウキは不幸なの。不幸になったのぉっ!!どう償ってくれるのどう償うのかしらぁ…!!ーーあっ…そうだ…ふふっ、いっそ死んで償っちゃう?あはははっ……ハハハハハァハッ!」
『言いたいことはそれだけ?』
母「……は?」
ーーーもういいや。
ここまで言われていつまでも黙っているとかもう……出来ないわ。
もう何年?こう言う事を言われ続ける生活は
もうたくさんだ。
いつか変わってくれると信じてきたけどもう
それはないのかもしれない…いや、もうない。
私の事、人形か何かだと思っているんだとしたら残念だね、もうそれも終わりだ。
ーーー今日で終わりにする。
『悪魔?なにそれ。あなたの顔の方が悪魔そのものよ。鏡見てみたら?』
今まで何を言われても
言い返さなかったからだろうーー、
母は目を見開いて固まっている。
今日で最後にすると決めたのだから
もう引き返さない。
言いたいことを言うんだーーーー
『ーー私は今日であなたから卒業します。今までお世話になりましたーー。ーーーーーーさようなら』
私は母に背を向けて歩き出したーーー
もっと言いたいことはあったはずなのに
言えたのはたったこれだけーーーー。
まぁ……いいや。最後なんだし、
わざわざ嫌なこと言わなくたって……。
トッ… トッ… トッ…
ーーーー母から離れていく
後ろは振り返らない。心のどこかでいつか
この生活から解放されたいと思っていた。
誰にも頼れなくて、エリア達にも私が家で
どんな扱いをされているのか話せなかったし
知られるのが怖くて恥ずかしかった。
誰にも言えなかった。
でもそれも今日で終わりなんだーーー
自由になれた
気がつけば私は近くの小さな公園に来ていた。
もう近くには警察署もなければ
母の姿もない。
これからどうするんだろう。
何も考えてない。
分からないんだ……
どうすればいいのか。
頼れないんだーーーー誰も。
一人なんだーーー私はーーー……
はじめからずっと、誰も信じれなくて
もう……一人ぼっちだーーーーー
私の顔に影が落ちる。
少年「よう。何やってんだこんなところで。」
『あ……あなたは…!』
私の目の前にはあの時の金髪の少年。
どうしてーー言いたいことはたくさんあった。
『どうして……どうしてあの時…いなくなったの?あなた達がいなくなったおかげで、私が疑われちゃったじゃないっ……!』
少年「悪いが、ここではやれることが限られてるもんでね。どうしても身代わりが必要だったんだよ。悪りぃ事したのは分かってんだ。」
どうゆうことなの……?
この人は何か見つかっちゃまずい事でも
してると言うの?
よく見ると、服装も何だかおかしい。
この人は赤いファスナー付きの長袖を着ているのだがその下は胸の辺りに包帯を巻いてるだけのようだ。
普通の私服とは呼べないような変な格好だ。
少年「で?こんなところで何してんだ?よい子はもう帰る時間だぞ」
『どうしてあなたにそんなこと聞かれなくちゃならないの』
少年「まぁ、聞かなくても分かるさ。一部始終見てたからな。」
どういうこと?ずっと見てたってこと?
え……ストーカーじゃない……。
『見てたなら分かるでしょ?私はもう帰る場所がないの』
この人にこんな事言ってもしょうがないのに。
分かったならさっさとどっか行ってよ。
ずっとそこにいないでさ。
少年を見ると、真面目な顔してじっと私を見ている。
少年「なぁ、聞くけど……死ぬの怖いか?」
『ーーー……』
ーーーえ?何……急に。私…殺されるの?
たじろぐ私に対し、少年はその答えを待っているようだ。
『ーー……そんなの怖いに決まってるじゃない』
少年「ふーん…あの時、野郎共とやり合ってる時はそう怖がってるようには見えなかったけどなぁ。」
そんなの……あの場にはエリアもいたし
あそこで私が怖じけづいたら
私達は確実に死んでいたのよ?
怖がってる暇なんてなかっただけよ。
少年「お前…もう本当に家に帰ろうと思ってねぇのか?」
『あの人にあんなこと言ったんだから。てか、帰ろうとも思わない』
少年「ふーん」
しばらく少年は何か考えているようで
黙り込んでしまった。
風が木を揺らす音だけが聞こえる中ーーー
ふいに少年は口を開く。
少年「お前、行くとこねーなら、こっちに来るか?」
ーーこっち?この人の家ってこと?
何で急にそんなことーーー
少年「言っておくが、ここの暮らしとは訳が違うぞ。それ相応の“覚悟”がねーとダメだぞ。」
ーーは?どうゆうこと?この人の家で何でそんな覚悟とか必要なのだろうかーー
まさか本当にヤバイ事してる人なのか……
『ーー覚悟ってどうゆうこと?そんなのがないと住めないの?』
恐る恐る疑問をぶつけてみる。
少年「まぁ常に“死”と隣り合わせだな」
ーー死?死ぬの?誰かに命を狙われるかもしれないってこと……?
そんな物騒な話、信じられないんだけど…
でもーー、ここに残っても行く宛もないし
お金もないしどうしようもない…
もう全て捨てて、一度死んだようなものだし
ここで知らない世界に飛び込んでみてもいいかもしれないーーー
ーーーー決めた。
『ねぇ、私を連れていって。ひどい目にはあわされたけどあなたの事、そんな悪い人だとは思えないの。悪い人ならあの時助けに来るのはおかしいもの。事情があるのも、どうしてなのか知りたい気もするし…。ねぇ、いいでしょ?』
少年「いーけど、死ぬかもしれねーんだぞ?」
そう少年は私にもう一度問うが
もう私の心は決めてしまったからーーーー
『いいよ。死ぬ気で頑張って足掻いてそれでもダメなら、そんときはそんときだよ』
そう言う私を見て少年はクスッと笑った。
そして、“ついて来い”と私を連れ、
ゆっくりと歩き始めたーーー
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