RINDA

リンダ

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第一章

小さな町 闘場町 2

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サッサッサッ……


ゴミをちりとりで取り終えた私は
このくらいでいいかと、エリアに声をかける為
少し離れた彼女の方を見たーーーーー。

その時、


『ーーーー?』


かがんでゴミを集めているエリアの後方ーー、
白のニット帽を被った金髪の男の人が
教室の曲がり角からうつ向いた状態で
のっそりと出てくる。

……何かーー、嫌な予感がする……。

その男を見た瞬間とっさにそう感じ
私は彼女に静かにこう言うーーーーー。


『エリア、こっちに来て。』



私の顔を見ると彼女は異変を感じ取ったのか
気の抜けた顔を引き締めた。

手に持っていたホウキを
地に静かに置き立ち上がる。
そして、まるでその男に気付いてないかのように背を向け歩いていく私に一歩一歩近づいてくる。
私は歩きながら後方へふらふらと掌をちらつかせたーーー。


後どのくらいで男が追い付くのか分からないこの状況に全身に冷や汗が出る。
目を瞑ると、後ろからエリアの足音が
微かに感じられるーーーーーあともう少しだ。
さらにその奥ーーー、
気配はほんの少しだけ分かるがそこまで正確には感じ取れない。


(お願い……エリアーーー。早くーーーーー。)






ギュッ…






『ーーーーーーーーっ!!』


ーーーーーー今だ!!!!


ダッッ!!!!!!!


私は左手に温もりを感じた瞬間、それを強く握り締めおもいっきり引き寄せ走り出した。

その瞬間エリアのすぐ後ろでビュッ!!と、何かからぶったような変な音が聞こえた。
何の音ーー?だが、一つだけ確信した。
男は何か武器を所持しているということーー。
しかも音からしてそれはバットとか
そんな棒じみた物ではなく恐らくーーー、
ナイフ的なものだ。

エリアの手を強く引っ張り私は息を切らしながらひたすら廊下を走り、ある場所を目指すーーー。
それは私達が休み時間によく利用している
この学校の最上階、屋上だ。
いつもは閉じられているが
私は針金で合鍵を作っている。
三階分の階段を猛ダッシュで駆け上がり
急いでポケットからそれを取り出しすかさず鍵を開け、ギィィ…と無事屋上へ入ることが出来た。
男はーーー、
まだここには追い付いていないようだ。

ガチャン。と、こちらから鍵をかけ直し
ひとまず私達は息を大きく吐き出したーーー。


『ふぅーーーー、……ビックリした……』


エリア「はぁはぁ…何なんだよ~…もう…」


本当に突然過ぎて驚いている。
そして今さらになって
大変な事が起きていると再確認した。あそこで私が少しでも早く気付いてよかったと思う。
そうじゃなかったら今頃エリアも…私も……
そう思うと体がゾッとしたーーー。


エリア「でもよかったぁ。リンダが合図送ってくれて」


先ほどまで切羽詰まってた顔から
一気に明るい表情に変わりそう言う。


ーーーー合図。
それはずっと前に私達が決めた、
危険な時に使用する合図。
一度、遊びに出掛けている時に
危険な場面に偶然遭遇したことがあり
何か私達だけにしか分からないような合図があればとそれで決めたのだ。
主に私しか使ったことがないのだが、
真剣な顔、声で一言言葉を言うだけという簡単なもの。

今までは“逃げて“くらいしか使ったことがないのに今回は初めて”こっちに来て”という言葉で
エリアもよく気付いてくれたものだ。


私は胸ポケットに入れていた携帯を取り出し
ある人物に電話をかけるため、画面をタップしたーーー。



マロン「「どーした?」」


『あ、マロン?ちょっと頼み聞いてくれる?』



*****


ドンドンドンドンドンドンドンドン!!!!



『「ーーーーーーーーっ!!」』


たった今マロンに状況を伝えた直後、
ものすごい勢いで屋上の扉が叩かれ始めた。
ずっと鳴り響くその音に
次第と恐怖が込み上げてきたが
ここで私が怖がってしまっては
エリアが余計不安がるだろう。
すでに彼女の顔は青くなり本気で怯えている。

ここの扉はボロくなってはいるが
ちょっとやそっとでは壊れないだろう。
だからここにいれば大丈夫だーーーーー。



**********



先生「こら!!佐々木お前授業中に何電話してるんだ!!」


ーーそう大声で怒鳴っているのは数学の先公。
ズカズカとウチのところに来ては
携帯を取り上げる。

だが今、そんなこといちいち考えてられない
早くこの事を伝えなきゃなんねんだーーー。


『先生、今すぐ警察呼んでください。』


そう言うと先公は
時が止まったかのように一瞬固まった。
が、すぐに我に返り険しい顔をして
何を言っているんだと、少し呆れたように
ウチを見てそう言う。


ガタッ…


『さっきの電話は水野からです。水野はこう言っていました。ーーー“今、この学校内に危ない男の人がいる。その人に追われているから助けを呼んでほしい”ってな。』


リンダが言っていた事を先公に伝えると
未だ信じられないのか
いい加減にしろの一点張り。

シーンと静まり返った教室内で
ウチと先公が無言で対峙しているとーー、


???「ーーー先生。」


と、一人の女子が静かに立ち上がる。
ふんわりと巻いている桜色の髪が肩にかかり
見た目はまるで上品なお嬢様のようなそいつは
クラスの学級委員を勤めている
優等生の相羽そうばカノン。

こいつはウチらのグループの一員で、
とにかく面倒見が良く
強いていうならお姉さんタイプ。
ウチとエリアが喧嘩してる時とかは必ず
仲裁に入ってくるようなヤツだ。


カノン「先生はこの子が嘘をついているとでも言うんですか?」


落ち着いた様子でそう言うカノンに対し
俺は別に…と少々たじろいでいる先公。
図星をつかれたのかウチの顔をチラチラと見ている。


カノン「ーーーどうするんですか?この話が本当の話だったらーーー。後3分くらいで授業が終わります。この話を知らない他の皆さんはどうなるんでしょうか?」


そう、普段見たこともねぇ本気マジな顔をしているカノンを見た他の生徒達は嘘じゃないんじゃ…と次第にざわつき始める。
こいつが一緒のクラスでよかった、
ウチだけじゃこんな早く信じてもらえなかったかもしんねぇ。



流石に先公も何か感じたのか、
半信半疑ではあるようだが
何かあってからでは遅いと教室にある受話器に手を伸ばしたーーーーー。





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