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155話 莉子・行方不明6

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 結局、まんじりともせずに夜を過ごしてしまった。疲れてはいるんだけど、神経が高ぶっていて、目の前の莉子がいなくなるんじゃないか?とか、夢を見ているんじゃないか?とか、次に目が覚めたら消えているんじゃないかとか思ってしまい、怖くて眠れないんだ。
本当に怖かったよ。ずっと目を開けていないといけなような気がして眠れなかったんだ。昨日帰って来てから点滴は3本目だ。これが終わったら、少し様子を見ようと思う。
昨日のネット診療は午後に予約があったんだけど、父に交代してもらったんだ、父も忙しかったと思うけど、申し訳なかった。事の顛末はメールで送ったんだ。でも今日は俺が大学病院だから困った。

しばらく点滴をしないといけないし、本当はレントゲンを撮って血液検査もしたいんだ。必要があればCTも撮りたい。どうしたものか・・・?実家が遠いと本当に困る。大学病院に連れて行こうか?でもベッドが空いてるかなあ?困った。
処置室のベッドを借りようか?いや、やっぱりすぐ検査が必要だ。やはり大学病院へ行った方がいいな。

朝、この前のイレウスを見てくれた内科医に1日だけでいいから検査入院させてほしいと頼んでみようかな?そうだ、そうしよう。ダメもとだ。電話してみよう。そして早めに出勤して一緒に連れて行こう。バルーンは入れたままでいいや。向こうの判断でどうすればいいか決めてくれればいいからね。

朝7時くらいなら電話してもいいかな?で、OKなら8時に連れていく。よし、入院の準備だけはしておこう。

聴診器を手に取り、胸とお腹を何回も聴診する。何回も生きている音を聴きたいんだ。馬鹿みたいに聴いても聴いても幻じゃないかと思ってしまう。もうトラウマになりそうだよ。昨日は本当につらかったよ。

もしかしたら夏君も同じだったんじゃないかなあ?きっと莉子を抱きしめたかったと思うよ。夏君が莉子をすごく愛しているのはよくわかっている。男同士だから分かるよ。それでも俺がいるからすごく堪えているのもよく伝わっているよ。
だから今頃切ないんだろうなあと思う。でも俺が莉子を手放せないからごめんね。もし俺が気が付いているよなんて口に出したら、彼はきっと黙っていなくなる。あいつはそういう男だよ。

だから、俺が死んだら後は頼むよって、遺言でも書いておこうかな? 真面目な話だよ。そうだ、父にメールをしておこう、万が一、俺が莉子の面倒を見れなくなったら、あとは夏君に託したいってメールをしておこう。

家の鍵も作っておこうかな。それと現金も多めに用意して手紙と一緒に机の引き出しに入れて、父から渡してくれるようにメールしておこう。それが莉子の為だ。
相手が医者じゃなくても病院に連れて行ってくれれば、いいだけなんだからね。そうだ、そうしよう。そうすれば俺もすごく楽に生きられるよ。
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