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137話 カフェにて・キューピッド

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 実は昨日の夜、岩城からメールが来たんだ。「洋子さんが気に入ったから会ってもらえないだろうか?仲を取り持ってほしい」って言われてさ。ふっ。俺がねえ、キューピッドになれってか?向こうがなんと言うかだよねえ。俺は自信がないよ。でも岩城の為だ、話してみよう。

カフェに来た。中村はいるかな?相変わらずパン屋の方は忙しそうだな。

先にパンを買おう。なくなると莉子がかわいそうだからな。中村は俺を見ると手をあげた。ちょっと待っててと言って、先にパンを買った。

で、中村のところに行って「5分大丈夫か?ちょっと話があるんだよ」と言った。すると、「いいよ。奥の席に行こうか」と言って、コーヒーをくれて、そのままサンルームの奥の席に座った。で、早速にコーヒーを飲んだ。

中村が言った「昨日はテニスに誘ってくれてありがとうな。すごく楽しかったよ。久しぶりに遊んだ気分だったよ。それに洋子まで遊ばせてもらったよ。洋子も楽しかったみたいで喜んでいたよ」そうか、それは良かったよ。

「それにしても、お前は本当に莉子命なんだなあ。みんな感心して眺めていたよ。あははは。いや~いいものを見せてもらったよ」 もう、やめろよ~。恥ずかしいだろう。あははは。今更なんだよ。知ってるだろう?

「そりゃ知っていたさ。でもあそこまで溺愛しているとは思わなかったんだよ。だってさ、お前はテニスをするよりも莉子ちゃんも見てる方が長かったじゃないか?何しに行ったんだよ」

あははは、莉子はさ、あれが生まれて初めての運動だったんだよ。信じられないかもしれないけどさ、最初はラケットを持って振ることが出来なかったんだよ。だから毎晩、幼児用の小さなラケットとスポンジのボールで練習したんだよ。あと素振りな。
夜はオートテニスに行ってポンポン軽く打つ練習をしたんだよ。その結果がようやくコートでラケットを振ることが出来るようになったんだよ。
この1週間はずっと湿布だらけにして練習していたんだよ。「へえ~すげえな。努力家じゃん」と中村が感心した。

そうだよ。莉子はやると決めたら意地でもやるタイプなんだよ。でも体力がないからさ、もうコートに出たらすでに疲れていたみたいで、やってるうちに動けなくなったんだよ。それが、ああいう状況になったってわけなんだ。
俺もひやひやしていたんだよなあ。まあ、途中で帰って悪かったんだけどさ。「うんうん、なるほどね」

ところでさ、用事があってきたんだけどさ、昨日の外科の岩城がね、洋子さんのことをものすごく気に入ったみたいなんだ。もし嫌でなければ1時間でもいいから話が出来ないだろうか?って聞いて欲しいって頼まれたんだよ。

どう思う? お前も昨日一緒にテニスをしてみてどうだった?悪い奴じゃないだろう?
「ほう~そうなんだ。まあ、洋子に聞いてみるけどさ。でも洋子がバツイチだって向こうは知っているのか?」

いや、知らないよ。そんなプライベートなことを言ったりはしないよ。自分から言って欲しいよ。だから話し合うチャンスをやってくれないかなあ?あいつは本当にいいやつなんだよ。外科医としてもすごいし、医大時代には、天才的頭脳って言われていたんだよ。俺と川瀬は平凡な頭だからさ、随分俺たちはひがんだものさ。

洋子さんさえ都合がつくなら今夜でもいいしね。時間は遅くなって良いと思うんだ。ちょっと聞いてみてもらえないかなあ? で、もし嫌なら断るのも早い方がいいからさ。
「ふ~ん。そうなんだ。でもさ、天才的な外科医ならさ、女が放っておかないんじゃないか?」と中村が心配そうに言う。
うん、そうだよねえ。普通はそうかもしれないけど、俺はあいつの噂って聞かないんだよね。仕事一辺倒なんだよ。遊ぶ暇なんかないんじゃないかなあ?だからまだ独身なんだよ。

外科医って飯を食う暇もないくらい忙しいんだよね。それに土日も仕事でつぶれることが多いから、あんまり女生とは付き合っていないのかもしれないよ。でも今日は家にいるらしいんだよ。
だから、洋子さんには嫌なら嫌と言ってやって欲しいんだ。もちろん、話をして交際を続けるなら、めでたい話なんだけどね。 
「うん、分かった。聞いてみるよ。ちょっと待ってて」と言って中村が電話しに行った。

暫くして戻ってきた。「じゃあ、今夜はここに来られるかなあ?洋子が話を聞きたいって言っているんだけどさ。いいかなあ?6時頃でどうだろう?」
うん。じゃあちょっと待ってて、俺も今電話するからさ。俺はちょっと庭に出て電話した。

お待たせ~。岩城が喜んで来るそうだ。あとはよろしく頼むよ。「おお、そうか、展開が楽しみだな」と中村が嬉しそうに言った。
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