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75話 莉子の入院
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入院当日の朝、莉子と一緒に大学病院に行った。今日は手術の前々日になる。この日から7分粥などの消化の良い食事になり、下剤や整腸剤を飲むことになる。これは明日も続く。あさってが手術の日だ。
莉子はなんだかしょんぼりしていた。心ここにあらずで、ため息をつきながら遠くを見ているような感じだった。
俺は莉子の手をずっと繋いでいた。産婦人科の病棟に着くと個室に入れてもらった。
今は何を言っても耳に入らないという感じだった。とりあえず、莉子を着替えさせてからベッドに寝かせた。
ちょうど荷物を片付けて一息ついた頃に、川瀬が様子を見に来てくれた。
「莉子ちゃん、よく決心してくれましたね。具合はどうですか?あさってが手術だけど、明日まで術前準備もあるからリラックスして受けてね。手術の説明と診察を後でしますから、それまでベッドで休んでいてね」そういうと、俺に合図をして部屋の外のラウンジに行った。
「莉子ちゃんは生理が来たか?遅らせる薬は出していたけど、もうとっくに飲んでいないだろう?今頃激痛が来ているんじゃないかとちょっとそれが気がかりだったんだけど、そんな様子もないしなあ。どうなっているんだ?」
そうなんだよ、とっくに来るはずなんだけど、なぜかまだ来ていないんだよ。どういうことだろう?
俺も生理の激痛が術後に重なるとかわいそうだなあと気になっていたんだよね。
「だから、当然全身麻酔でやる予定にはしているんだけど、まあ、あとで診察するからあれだけど、もしかしたらストレスで遅れているのかもしれないな。どちらにせよ、痛みが出始めたら、こちらで十分対応するから心配するなよ。それより妊娠の可能性はないか?悪いけど、念のために検査しとくよ。」
ふふふ、悪いけどそれは絶対ないから。もしあれば奇跡だから大喜びするよ。
まあ、とにかくよろしく頼むよ。前回の生理では、激痛で喘息の発作も出て呼吸困難になったばかりだから、心配しているんだ。
発作が出たら対応を頼むよ。で、腹腔鏡手術の退院予定は6日後だろう? ただ、もし莉子の具合が悪ければ、少し延ばしてほしいんだ。
「ああ、大丈夫だよ。心配するな。いや~莉子愛が強いな~負けるよ。それよりいつまで結婚したことを黙っているつもりなんだ?俺が知っている限りでは、お前は病院中の女子の憧れの的なんだぞ。知っているのか?今はみんな妹だと思っているから静かだけどな。この前、莉子ちゃんと手を繋いで病院内を歩いていただろう?もう俺の耳に入っているんだぞ。ふふふ。いや~実にうらやましい限りだよ」
おい、からかうなよ。あははは。二人で笑ってしまった。
それから莉子の病室に戻った。
莉子は目をつぶっていた。なんだか妙に身体を固くしていたような感じだな。
莉子、大丈夫か?緊張しているのか?
「うう~ん、分かんない」ふっ。緊張しているなあ。俺は莉子の手を握った。
手術の日には、お父さんやお母さんも来てくれるよ。一緒にみんなで莉子のことを見守っているからね。
「うん」と莉子が言うと、もう泣き始めた。しまった......励まし厳禁だな。泣くのはまだ早いぞ。
でも泣いていいと言っておいたからしょうがない。
俺は莉子の上半身を起こして抱きしめた。まあ、個室だから勘弁だ。
そこへ看護師さんがやってきた。
「あら~ごめんなさい。お邪魔かなあ?どうしたの?不安なのかな」
俺はちょっと笑って、そうなんですよ。すごく不安みたいで緊張しているようです。まだ18歳だから、しょうがないですよね。
「大丈夫ですよ。安心してね。ちょっと体温を測って血圧を測りますね。あと質問がいろいろあるので教えてくださいね」俺はそっと席を外した。
ラウンジに行って外の景色をなんとなく眺めていた。なんだかこんなことなら自分が手術を受けた方がよほどましだなと思った。俺がいない時間を莉子はどうやって過ごすんだろう。たった一晩でも莉子のいない夜はなんだか俺の方が耐えられそうにない気がした。
莉子が遊びでいないならいいんだけど、つらい思いを一人で抱えて病院で過ごしているというのが、どうにも耐え難い。
この前イレウスで入院した時もつらい痛みに耐え続けたことで、トラウマになって夜中によくうなされていたんだ。
今回の手術は比較的楽で、一晩だけがちょっと痛みをコントロールする感じだった。とはいえ、おなかに4か所穴を開けるんだから。痛くないわけがないんだ。
それにしても生理が遅れ過ぎだ。あるべき時に来ないっていうのもなんだか不穏だなあ。
この日は面会時間以外に付き添いで同行していただけなので、もう帰らなければならなかった。
莉子には、川瀬が生理の遅れを心配しているから、生理が始まったら必ず看護師さんに伝えるように言った。
それから生理の痛みも我慢しないように言った。
最後は抱きしめて、ゆっくり休むんだよ。また明日来るからねと病院を後にした。
莉子はなんだかしょんぼりしていた。心ここにあらずで、ため息をつきながら遠くを見ているような感じだった。
俺は莉子の手をずっと繋いでいた。産婦人科の病棟に着くと個室に入れてもらった。
今は何を言っても耳に入らないという感じだった。とりあえず、莉子を着替えさせてからベッドに寝かせた。
ちょうど荷物を片付けて一息ついた頃に、川瀬が様子を見に来てくれた。
「莉子ちゃん、よく決心してくれましたね。具合はどうですか?あさってが手術だけど、明日まで術前準備もあるからリラックスして受けてね。手術の説明と診察を後でしますから、それまでベッドで休んでいてね」そういうと、俺に合図をして部屋の外のラウンジに行った。
「莉子ちゃんは生理が来たか?遅らせる薬は出していたけど、もうとっくに飲んでいないだろう?今頃激痛が来ているんじゃないかとちょっとそれが気がかりだったんだけど、そんな様子もないしなあ。どうなっているんだ?」
そうなんだよ、とっくに来るはずなんだけど、なぜかまだ来ていないんだよ。どういうことだろう?
俺も生理の激痛が術後に重なるとかわいそうだなあと気になっていたんだよね。
「だから、当然全身麻酔でやる予定にはしているんだけど、まあ、あとで診察するからあれだけど、もしかしたらストレスで遅れているのかもしれないな。どちらにせよ、痛みが出始めたら、こちらで十分対応するから心配するなよ。それより妊娠の可能性はないか?悪いけど、念のために検査しとくよ。」
ふふふ、悪いけどそれは絶対ないから。もしあれば奇跡だから大喜びするよ。
まあ、とにかくよろしく頼むよ。前回の生理では、激痛で喘息の発作も出て呼吸困難になったばかりだから、心配しているんだ。
発作が出たら対応を頼むよ。で、腹腔鏡手術の退院予定は6日後だろう? ただ、もし莉子の具合が悪ければ、少し延ばしてほしいんだ。
「ああ、大丈夫だよ。心配するな。いや~莉子愛が強いな~負けるよ。それよりいつまで結婚したことを黙っているつもりなんだ?俺が知っている限りでは、お前は病院中の女子の憧れの的なんだぞ。知っているのか?今はみんな妹だと思っているから静かだけどな。この前、莉子ちゃんと手を繋いで病院内を歩いていただろう?もう俺の耳に入っているんだぞ。ふふふ。いや~実にうらやましい限りだよ」
おい、からかうなよ。あははは。二人で笑ってしまった。
それから莉子の病室に戻った。
莉子は目をつぶっていた。なんだか妙に身体を固くしていたような感じだな。
莉子、大丈夫か?緊張しているのか?
「うう~ん、分かんない」ふっ。緊張しているなあ。俺は莉子の手を握った。
手術の日には、お父さんやお母さんも来てくれるよ。一緒にみんなで莉子のことを見守っているからね。
「うん」と莉子が言うと、もう泣き始めた。しまった......励まし厳禁だな。泣くのはまだ早いぞ。
でも泣いていいと言っておいたからしょうがない。
俺は莉子の上半身を起こして抱きしめた。まあ、個室だから勘弁だ。
そこへ看護師さんがやってきた。
「あら~ごめんなさい。お邪魔かなあ?どうしたの?不安なのかな」
俺はちょっと笑って、そうなんですよ。すごく不安みたいで緊張しているようです。まだ18歳だから、しょうがないですよね。
「大丈夫ですよ。安心してね。ちょっと体温を測って血圧を測りますね。あと質問がいろいろあるので教えてくださいね」俺はそっと席を外した。
ラウンジに行って外の景色をなんとなく眺めていた。なんだかこんなことなら自分が手術を受けた方がよほどましだなと思った。俺がいない時間を莉子はどうやって過ごすんだろう。たった一晩でも莉子のいない夜はなんだか俺の方が耐えられそうにない気がした。
莉子が遊びでいないならいいんだけど、つらい思いを一人で抱えて病院で過ごしているというのが、どうにも耐え難い。
この前イレウスで入院した時もつらい痛みに耐え続けたことで、トラウマになって夜中によくうなされていたんだ。
今回の手術は比較的楽で、一晩だけがちょっと痛みをコントロールする感じだった。とはいえ、おなかに4か所穴を開けるんだから。痛くないわけがないんだ。
それにしても生理が遅れ過ぎだ。あるべき時に来ないっていうのもなんだか不穏だなあ。
この日は面会時間以外に付き添いで同行していただけなので、もう帰らなければならなかった。
莉子には、川瀬が生理の遅れを心配しているから、生理が始まったら必ず看護師さんに伝えるように言った。
それから生理の痛みも我慢しないように言った。
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