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61話 遅れを取り戻せない(莉子サイド)

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入院している時は、毎日毎日、朝から晩までおなかが痛くて痛くて本当に我慢できなかった。春ちゃんが泣いていいって言ってくれたから、私はいっぱい泣いた。

それでも今は退院できたし、ご飯も食べられるようになった。でもなんだか夢の中でまだ痛い夢を見るんだ。私はうなされているみたいで、その度に泣いているみたい。「もう大丈夫だよ」って、春ちゃんが何回も言って、その度に抱きしめてくれるんだけど、記憶が強烈過ぎて自分でもどうしていいのかわからない。

春ちゃんが言うには、もうトラウマになっているんだって。そうなんだ。私、治るのかなあ?

退院してからは、春ちゃんがお風呂に入れてくれるし、寝る時も一緒で、腕枕をして抱きしめたまま寝てくれる。
春ちゃん、ごめんね。寝苦しいでしょう? 

入院前はあれだけ私のことを抱いていたのに、退院してからは全然抱いてくれようとはしない。
私も体力がなかったから、春ちゃんの相手までは出来なかったかもしれない。
きっと春ちゃんはすごく我慢をしているんだと思う。私はもう妻とは言えない。

それでもだんだん元気になってきて、大学にも通えるようになってきた。
ただ、2週間以上も休むと全然授業が分からないよ。どうしよう......。
詩音ちゃんがノートを取ってくれてたんだけど、なんだか量が多すぎてとても頭に入っていかないのが悩み。
もうダメかも。事務局に相談しに行こうかなあ?

それに冬休みはまた入院するから、後期試験の準備もできそうにない。単位を落とすかもしれないな。
もう本当にどうしたらいいのかわからないよ。

そうだ、その前に部長に相談してみよう。良いアイデアがあるかもしれない。

春ちゃんは相変わらず忙しい。病院の仕事もした上に、ネット診療やご飯作りもするし、私の毎朝の診察もやってくれる。退院してからは、寝る前にも診察してくれる。一日に二回も診てくれるって、まるでお姫様だな。

私がイレウスになったことですごく自分を責めているんだと思う。
春ちゃんのせいじゃないのに、私の身体が弱いだけ。こんな私でも良いのかなあ?

土曜日の外来に行った帰りに、春ちゃんが中村さんのカフェに連れて行ってくれた。
ここのパンケーキもおいしいんだって。うわ~楽しみ。
早速に注文した。トッピングを選べるらしいのよね。
フルーツと生クリームを付きにしたんだけど、それを春ちゃんが少し減らした。
春ちゃんが食べるんだって。

この前みたいに一晩中苦しむのはいやだろう?と言われて......我慢した。確かにそうだ。もう春ちゃんにおむつを取り替えさせたくないもん。そんな奥さんなんていないよね。

夜、一緒にお風呂に入った時、私は春ちゃんにすごく抱いてほしくなった。だから自分からキスをしたら、春ちゃんはちゃんと応じてくれた。すごく深いキスを何回もされてとろけそうだった。

それからベッドに抱いて運んでくれた。私はこの瞬間が一番好き。春ちゃんの大きなカッコいい身体も好き。
胸の匂いもすごく好きなの。誰にも内緒だけど。

あとは前みたいにちゃんと抱いて気持ちよくしてくれた。ちょっと疲れたけど、でも春ちゃんが大好きだからうれしかった。もっともっとと言って、きりがないくらい抱いてほしかった。
これ、私も大人の女になったってこと? 知~らない。
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