医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

文字の大きさ
上 下
59 / 455

58話 続・イレウス

しおりを挟む
莉子の点滴は朝6時から夜の12時まで続く。
その間は薬で動かない腸をむりやり動かすわけだから、陣痛のような痛みに耐え続けなければならない。夜の12時から朝6時までがようやく闘って疲れた莉子の眠れる時間なのだ。

疲れ果てた莉子の頬を撫でた。つらいね。今日はよく頑張ったよ。また明日来るからね。と言って、夜勤の医師やナースに声を掛けてから、ひっそりとした病棟を後にした。

マンションに帰ると何もする気にならなかった。独りぼっちの夜に、俺は酒を少し呑んだ。

莉子、こんな酷い目に合わせて本当にごめんな。医者の俺が付いていながら、莉子を守ることが出来なかった。
愛していると言いながら、莉子の身体をよく診てあげてなかったんだ。
俺は本当に一体、何をやっているんだ……と思うとなんだか泣けてきた。

俺は苦しんでいる莉子を見るのが本当につらい。
手を握ってあげたところで、それが何の役に立つんだ。痛みが減るわけじゃない。

そんなことを考えながら、ソファでウトウトとしてしまったようだ。携帯のアラームで起こされた。
今日はネット診療の日だけど、予約は午前だけだ。

午後から病院に行こう。両親も来るはずだし、莉子の検査結果や病状も担当医師から説明してもらおう。
ネット診療が終ると、俺はカップラーメンを食べて、莉子の着替えやタオルをカバンに詰めて、病院に向かった。

部屋に行くと、莉子は片手を差し出した。俺はその手を握り、そっと抱きしめた。
大丈夫か?つらいだろう?泣いてもいいんだよ。我慢しなくていいんだから。
そう言うと大粒の涙をこぼし始める。嗚咽が止まらない。そのまま抱きしめ続けた。

飲水禁止なので、口の中がからからだ。うがいをしような、と頭を少し起こしてうがいをさせた。
点滴で水分は補っているが、口の中はやはりつらい。あとで氷を持ってきてやろう。
氷を少し口に含むくらいは大丈夫だ。

そのうちに両親がやってきた。
「莉子、大変だったねえ~つらいねえ」とお母さんが莉子の手を取りながら言った。莉子も涙が止まらない。
「莉子、大丈夫か?痛いだろうけど、頑張るんだぞ。必ず治るからな。春樹が付いているんだから、大丈夫だよ」と父が励ました。

そこへナースが来て、担当医師から説明があるので、ラウンジにご案内しますということで、俺たちはラウンジに向かった。
担当医師がすぐに来てくれて、自己紹介をしてくれた。
今度は父が「莉子がお世話になっています。父親の北原です。内科医師です。検査結果など詳しく教えていただけますか?」と言った。

担当医師は「診断結果はおそらくマヒ性のイレウスだと思います。今までの既往歴を拝見しましたし、産婦人科の川瀬先生からも子宮内膜症の件は聞いています。最近では腸やおなか周りのあちこちが、生理時に一緒に痛むようになっていると聞きました。癒着が原因だろうと思いますが、正確には手術しないと原因の断定はできませんが、今の状態だと、こじれているわけではないので、保存的治療で様子を見ようということになりました。
とりあえず1週間は薬物で治療してみて、再度レントゲンを撮ってみようと思います。よろしかったら、レントゲンやCTの画像をご覧になりますか?」

「はい、ぜひ見せていただけますか?」ということで、俺と父は医局に入れてもらって、画像を沢山見せてもらった。診断結果は父も俺も担当医師と同意見だった。
二人でお礼を言ってから、ラウンジに戻ると母と一緒にまた莉子の部屋に行った。

莉子は間欠的に痛みが襲ってくるので、あまりしゃべることができないし、体力もない。俺は二人を病院の入り口まで送って行った。

母が「莉子のことを頼みましたよ。また来るから春ちゃんも体に気を付けてね」

父は「お前はあんまり自分を責めるなよ」と俺の肩に手を置いた。

俺はわっと泣き出しそうになって思わず上を向いた。

なんで父はこんなに俺の気持ちがわかるのだろうか?
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

アイドルグループの裏の顔 新人アイドルの洗礼

甲乙夫
恋愛
清純な新人アイドルが、先輩アイドルから、強引に性的な責めを受ける話です。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...