医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語

スピカナ

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58話 続・イレウス

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莉子の点滴は朝6時から夜の12時まで続く。
その間は薬で動かない腸をむりやり動かすわけだから、陣痛のような痛みに耐え続けなければならない。夜の12時から朝6時までがようやく闘って疲れた莉子の眠れる時間なのだ。

疲れ果てた莉子の頬を撫でた。つらいね。今日はよく頑張ったよ。また明日来るからね。と言って、夜勤の医師やナースに声を掛けてから、ひっそりとした病棟を後にした。

マンションに帰ると何もする気にならなかった。独りぼっちの夜に、俺は酒を少し呑んだ。

莉子、こんな酷い目に合わせて本当にごめんな。医者の俺が付いていながら、莉子を守ることが出来なかった。
愛していると言いながら、莉子の身体をよく診てあげてなかったんだ。
俺は本当に一体、何をやっているんだ……と思うとなんだか泣けてきた。

俺は苦しんでいる莉子を見るのが本当につらい。
手を握ってあげたところで、それが何の役に立つんだ。痛みが減るわけじゃない。

そんなことを考えながら、ソファでウトウトとしてしまったようだ。携帯のアラームで起こされた。
今日はネット診療の日だけど、予約は午前だけだ。

午後から病院に行こう。両親も来るはずだし、莉子の検査結果や病状も担当医師から説明してもらおう。
ネット診療が終ると、俺はカップラーメンを食べて、莉子の着替えやタオルをカバンに詰めて、病院に向かった。

部屋に行くと、莉子は片手を差し出した。俺はその手を握り、そっと抱きしめた。
大丈夫か?つらいだろう?泣いてもいいんだよ。我慢しなくていいんだから。
そう言うと大粒の涙をこぼし始める。嗚咽が止まらない。そのまま抱きしめ続けた。

飲水禁止なので、口の中がからからだ。うがいをしような、と頭を少し起こしてうがいをさせた。
点滴で水分は補っているが、口の中はやはりつらい。あとで氷を持ってきてやろう。
氷を少し口に含むくらいは大丈夫だ。

そのうちに両親がやってきた。
「莉子、大変だったねえ~つらいねえ」とお母さんが莉子の手を取りながら言った。莉子も涙が止まらない。
「莉子、大丈夫か?痛いだろうけど、頑張るんだぞ。必ず治るからな。春樹が付いているんだから、大丈夫だよ」と父が励ました。

そこへナースが来て、担当医師から説明があるので、ラウンジにご案内しますということで、俺たちはラウンジに向かった。
担当医師がすぐに来てくれて、自己紹介をしてくれた。
今度は父が「莉子がお世話になっています。父親の北原です。内科医師です。検査結果など詳しく教えていただけますか?」と言った。

担当医師は「診断結果はおそらくマヒ性のイレウスだと思います。今までの既往歴を拝見しましたし、産婦人科の川瀬先生からも子宮内膜症の件は聞いています。最近では腸やおなか周りのあちこちが、生理時に一緒に痛むようになっていると聞きました。癒着が原因だろうと思いますが、正確には手術しないと原因の断定はできませんが、今の状態だと、こじれているわけではないので、保存的治療で様子を見ようということになりました。
とりあえず1週間は薬物で治療してみて、再度レントゲンを撮ってみようと思います。よろしかったら、レントゲンやCTの画像をご覧になりますか?」

「はい、ぜひ見せていただけますか?」ということで、俺と父は医局に入れてもらって、画像を沢山見せてもらった。診断結果は父も俺も担当医師と同意見だった。
二人でお礼を言ってから、ラウンジに戻ると母と一緒にまた莉子の部屋に行った。

莉子は間欠的に痛みが襲ってくるので、あまりしゃべることができないし、体力もない。俺は二人を病院の入り口まで送って行った。

母が「莉子のことを頼みましたよ。また来るから春ちゃんも体に気を付けてね」

父は「お前はあんまり自分を責めるなよ」と俺の肩に手を置いた。

俺はわっと泣き出しそうになって思わず上を向いた。

なんで父はこんなに俺の気持ちがわかるのだろうか?
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