医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘～い愛の物語

57話 イレウス

大学病院から帰宅すると、莉子が青い顔をして部屋で寝込んでいた。

どうした? 具合が悪いのか？
「時々お腹がぎゅーっと絞るように痛いし、ムカムカして吐き気がするし気持ちが悪い。水も飲めない。お腹も張ってる」
お腹を壊しているか？　「ううん、出てない」

何か変なものを食べたか？　「昨日タコ焼きのタコをいっぱい食べただけ」
そうか、確かにタコは消化が悪いな。昼間と夜と......あっそうだ、前の夕飯の時も食べたな。

普通の人なら何でもないところが、莉子だと引っかかるんだよな。まあ、タコのせいだとは言い切れないけれど。
聴診器を当てるとおなかの音も悪い。マヒ性で、もしかしたら子宮内膜症の癒着が原因かも。

どちらにせよ、今までも数回の腸閉そくの既往歴があって、今、疝痛と吐き気、膨満感があるならすぐにレントゲンやCT、超音波で調べないといけない。もううちで治療できる範囲を超えている。

大学病院の消化器内科の医師に連絡すると、準備をしておくからすぐ運ぶように言ってくれた。
あとで産婦人科の川瀬にも伝えておこう。救急車の要請をした。

「莉子、これから救急車が来るよ。大学病院に行って色々な検査をしてもらうよ。いいね？」
「頷いた莉子、目にいっぱい涙を溜めて苦しさに耐えていた」

俺はすぐ必要なものをさっと揃えた。そのうちにサイレンが聞こえて来た。
病院に着くと、消化器内科の医師が待っていてくれた。

急な連絡で申し訳ない。病弱で今までにも腸閉そくは何回か既往歴があります。
今までの病歴のデータは持ってきたので見てください。

レントゲンやCTの検査も手配されていた。検査している間に俺は白衣を取ってきた。
検査のあとは、診療にも立ち会わせてもらった。

バタバタと一通り終わって、莉子は個室に入れてもらった。
これから暫くの間は絶食だ。水も飲めない。それは本人がよく知っている。
1日のほとんどの時間を点滴に繋ぐ必要がある。これがつらいんだよな。

苦しいか？　「うん」　苦しいよな。
ううう......と疝痛の痛みが陣痛のように押し寄せてくる、ぎゅーっと俺の手を握り締める。
ああ、俺の管理が悪いんだ。俺が付いていながらごめんね。莉子。こんな目に合わせて。

点滴の中には腸を動かす薬が入っているから、これから点滴がつながっている間は、周期的に押し寄せてくる痛みに耐えなくてはならない。治療もすごく痛くて苦しいんだ。これがずっと続くんだ。

両親にも入院したことを連絡した。明日来るそうだ。あと、大学と詩音ちゃんにも連絡だ。あとは診断書を頼もう。
また大学の授業が遅れるね。莉子が必死に勉強するも休みの方が多いから、なかなか追いつかないようだ。

俺は苦しがる莉子の手を握り、じっと莉子を見つめていた。