医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘～い愛の物語

26話 結婚・6（莉子サイド）

お兄ちゃんから結婚を申し込まれた。

ずっと夢を見ていたことなのに、なんだか急に自分が情けないやら恥ずかしいやらで、
お嫁さんになる気はないって言っちゃった.......。

もう涙があふれて止まらない。お布団をかぶって声を押さえて泣いた。
いくら泣いても取り返しがつかない。

きっとお兄ちゃんの心を傷つけたよね？

浣腸されてしがみついたり、おむつを何回も取り替えてもらったり、そんな情けない花嫁なんてこの世にはいないよ。
自慢のお兄ちゃんは、素敵なお嫁さんがきっとどこかにいるんだ。それは私じゃない。
私はただ、手間のかかる義妹に過ぎない。

あんなに素敵なお兄ちゃんの横にお嫁さんとして立つ資格なんて私にはないよ。

考えれば考えるほどに、自分の身体が憎くなる。

私は知ってるんだ。私はただの生理痛じゃない。子宮内膜症だ。
お兄ちゃんに大学病院に連れられて、診察や検査をいっぱいしたけれど、答えを聞くまでもない。

もうネットで調べまくったからわかってる。

子宮内膜症の病状は、腹痛、腰痛、排便痛、性交痛、不妊。その他いろいろ。

性交痛っていうのは経験がないからわからないけど、経験する前から言われるのってどうなの？

お兄ちゃんはそんなお嫁さんで良いわけ？？役に立たないでしょう？

大体、不妊ってなに？？　50％の確率って普通の身体の人で50％なら、私の場合は10％でもあるわけ？

お兄ちゃんはお医者さんだから、そんなことは全部わかっていると思うけど、
それでも結婚を申し込んでくれたのは、私がかわいそうだというのと、
きっと嫁の貰い手がないだろうなあって、心配して言ってくれたんだと思う。

でもそれは私にとって、最もつらいこと。何にも取り柄が無いんだもん。

私に結婚なんて文字は要らない。できないんだから聞きたくない。
私は今のお兄ちゃんがいてくれたら、それで十分幸せなんだから。

でもこれらを言葉にするのは.......、今は辛すぎる。ただただ、泣かせてほしい。

どんどんお布団の中で涙が止まらなくなってしまった。

さっき、玄関のドアがバタンと閉まる音がした。

きっとお兄ちゃんが外に出掛けたんだ。お兄ちゃんがどんどん離れていく。

寂しい。いっそプロポーズなんてしなくていいのに。なんで今のしあわせを壊すの？

もう本当に消えてなくなりたいよ。