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7話 画材専門店にて

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画材専門店に着くと、莉子は勝手知ったる店とばかりに絵の具のコーナーに行った。
「同じ色でも随分色の濃淡があるんだね。すごいな。」

「うん、なんかね。私いつも迷っちゃうんだよね。
同じ色でも薄いのから濃いのまで何十種類もあるし、
見ているうちにどの程度の濃さにしていいのか?が分からなくなっちゃうのよ」

「なんだかもうお手上げかも……」

「あれ? 莉子じゃない?」と声をかけてきた若い男がいる。

何? もう虫か?? まあ、でも人相は悪くはなさそうだけど。

「あっ、部長! やった===!こんなとこで会うなんて超助かるう~」

「大学の人なの?」と莉子に聞くと、紹介してくれた。

「お兄ちゃん、こちらはいつもお世話になっている絵画部の部長さんで、山本 聡さんです。
いつも助けてもらってます」

「初めまして、経済学部3年の山本 聡です。絵画部の部長をしています」

「初めまして、莉子の兄の春樹です。いつも莉子がお世話になっているようでありがとうございます」

莉子は嬉々として、早速に彼に相談を持ち掛けてきた。  
う~ん、邪魔はできないな。ここは待つか。

「莉子、俺は店内を適当に見物しているから、ゆっくり決めたらいいよ。
終わったらメールしてね。じゃあすみませんが、よろしくお願いします」
とお願いして席を外した。

「実は絵の具の色選びで迷っていて、困っていたところなんです。教えていただけますか?」
なんて莉子の声が聞こえる。

そうかそうか、まあ、莉子が急に体調不良になった場合には、世話になるかもしれないからな。
兄としては良い顔をしておこうかなと思ったら、そこへ別の声がした。

「あっ莉子だあ~」という女性の元気な声が後ろから聞こえてきた。

「うわ~偶然!詩音も来てたの?会えてうれしいよ!
今部長にばったり会って、絵の具を選んでもらっていたのよ」

「今日はお兄ちゃんと来てるんだ。あとで紹介するね」
「うわ~楽しみ。イケメンなんでしょう??前から会いたかったんだよなあ~」

なんだか急に出ずらくなってしまった気がする……。ハードルが高い。帰ろうか。

俺がイケメン?本当か? 莉子がそう言ってたのかなあ? 

なんだかうれしいような、照れるような…。
ちょっと気分が盛り上がってきたのは内緒。

そのまま店内をブラブラしていると、10分くらいで莉子からメールが来た。
仲良しの詩音ちゃんも来ていて、みんなで一緒にお茶に行こうと盛り上がったらしい。

出口で待っていると、莉子たちが出て来た。
「お兄ちゃん、こちらは高校時代からの仲良しで同じ絵画部の、沢田詩音ちゃんです。」

「初めまして、うわ~やっぱりすごいイケメンだ!!
「莉子からいつもお兄さんの自慢話は聞かされていますが、なるほど素敵~!!」

だんだん居場所がなくなる感じ…。

「初めまして、莉子と仲良くしてくれてありがとう。なんだか照れますね」押さえろ、オレ。

「せっかくなので、これから皆でカフェに行くんですけど、お兄さんもご一緒にいかがですか?」
と、山本君が誘ってくれた。

「ねっ、お兄ちゃん、私行きたいの。もうちょっといいでしょう?時間いいよね?」

結局、みんなでそのまま近くのカフェに行くことになった。
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