上 下
3 / 94
1章 運命の出会い

3、ブラッドムーンと怪しい男

しおりを挟む
2019年1月21日、月曜日。

中学2年生の3学期が始まって間もない頃、朝のニュース番組では、キャスターが「今日はスーパー・ブラッド・ウルフムーンです」と報道していた。

「スーパームーン」とは、月が地球に最も近づき、通常よりも大きく見える現象の事のようだ。その「スーパームーン」に加えて、皆既月食の際に月が赤く見える「ブラッドムーン」と、1月に見える最初の満月である「ウルフムーン」が重なって、「スーパー・ブラッド・ウルフムーン」と呼ぶらしい。

かっこいい言葉をたくさん詰め込んだ名前に、ぼくは少し胸が躍った。

しかし、キャスターは至って冷静に報道する。

「ブラッドムーンは、昔から不吉とされる言い伝えがあり、旧約聖書には、『血のような赤い月』が見えた後に巨大地震が起きたと記載されています。また、スーパー・ブラッド・ウルフムーンが見られるのは、北米・南米・欧州・アフリカ西部と言われており、残念ながら日本では見られないようです」

気持ちが盛り上がっているところに水を差されたのであまりいい気持ちはしなかった。「普通の満月じゃないか」と思って、家をでた。


その日は委員会活動で帰りが遅くなったため、早足で帰路についていた。冬至を過ぎたとはいえ、17時30分を回った頃には、真っ暗だった。

一條神社前の交差点で信号を待っているとき、ぼくの目の前を1台の白いバンが通り過ぎた。驚くことに、その車を運転していたのは、まぎれもなく父だったのだ。

父の顔を確認すると、無意識に走り出していた。厳しい指導の恐怖よりも、長い間会えなかった父への恋しさが勝っていたのかもしれない。幸い、バンは次の信号でも赤信号に捕まっていたため、ぼくは距離を縮めることに成功する。

追いついてどうするのか、そんなことは考えていなかった。
ただ、父との思い出が詰まった一條神社の近くで、約10年ぶりに父に会えたということに何か大きな意味を感じたのだ。神様のいたずらのようなものかもしれない。

あと少しでバンに追いつくところだったが、信号機はぼくの気も知らないで、バンにいいよと告げた。青い印を確認したバンは再びエンジンを吹かす。

しかし、ぼくは諦めなかった。「あとで取りにくるからちょっと待ってて」と、言って、学生カバンを道の端っこに置いた。


身軽になったぼくは、再びバンを追って、ひた走った。

はるか先に見えたバンは、教会を右折し中村城のほうへ向かったようだった。
この時間に中村城に向かう理由はわからなかったが、ぼくもそのあとを追い、中村城の細いコンクリート道を登っていった。

走り疲れてペースを落とした時、コンクリート道の横の森にトラックの轍があることに気付いた。舗装されていない道無き道は、森の奥へ通じているようだったが、真っ暗であまり見えない。

この道には、何か違和感を覚えた。一歩足を踏み入れると、このまま進んではいけないような気がした。しかし、「この先に父がいるかもしれない。もう一度、父に会いたい」という思いが、体のこわばりをといた。ぼくは、恐る恐るではあるが、前に進むことにした。

スマートフォンのライトを頼りに、木々の中をゆっくりと歩く。300mほど進んだだろうか、提灯で照らされた広場のような場所があった。そこには、墓石とは少し違った石碑がいくつも並べられていた。ここは一体なんなのかと思い、石碑に近づこうとしたとき、横から大きな声がした。

「誰だ!お前は!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

[恥辱]りみの強制おむつ生活

rei
大衆娯楽
中学三年生になる主人公倉持りみが集会中にお漏らしをしてしまい、おむつを当てられる。 保健室の先生におむつを当ててもらうようにお願い、クラスメイトの前でおむつ着用宣言、お漏らしで小学一年生へ落第など恥辱にあふれた作品です。

RUBBER LADY 屈辱の性奴隷調教

RUBBER LADY
ファンタジー
RUBBER LADYが活躍するストーリーの続編です

私は何人とヤれば解放されるんですか?

ヘロディア
恋愛
初恋の人を探して貴族に仕えることを選んだ主人公。しかし、彼女に与えられた仕事とは、貴族たちの夜中の相手だった…

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

名前を書くとお漏らしさせることが出来るノートを拾ったのでイジメてくる女子に復讐します。ついでにアイドルとかも漏らさせてやりたい放題します

カルラ アンジェリ
ファンタジー
平凡な高校生暁 大地は陰キャな性格も手伝って女子からイジメられていた。 そんな毎日に鬱憤が溜まっていたが相手が女子では暴力でやり返すことも出来ず苦しんでいた大地はある日一冊のノートを拾う。 それはお漏らしノートという物でこれに名前を書くと対象を自在にお漏らしさせることが出来るというのだ。 これを使い主人公はいじめっ子女子たちに復讐を開始する。 更にそれがきっかけで元からあったお漏らしフェチの素養は高まりアイドルも漏らさせていきやりたい放題することに。 ネット上ではこの怪事件が何らかの超常現象の力と話題になりそれを失禁王から略してシンと呼び一部から奉られることになる。 しかしその変態行為を許さない美少女名探偵が現れシンの正体を暴くことを誓い…… これはそんな一人の変態男と美少女名探偵の頭脳戦とお漏らしを楽しむ物語。

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

性転換マッサージ2

廣瀬純一
ファンタジー
性転換マッサージに通う夫婦の話

処理中です...