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V章 世界を変える気持ち「漠然」

15話 白熱!手押し相撲~バナジュー~(2)

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ヒュッヒュッヒュ!

織田は別人でした。

手をふらつかせ、まるで酔拳のような手つきでボブをほんろうします。

「こいつは、やべえ」ボブの額には汗が流れています。

まるでメトロン星人とウルトラセブンが戦ったあの日のような美しい夕焼けを背景に、ボブと織田は、手押し相撲を繰り広げていたのです。

「もらったぜ!」

そのとき、織田の右のてのひらはボブを捉えました。

ここまでの二連敗の悔しさを巻き返すかのような気持ちのこもった押し。
いや、つっぱり。

ボブは、その一撃を食らって、尻餅をついたのです。

「っしゅえあぁあああ!!!」

雄たけびをあげる織田。
ホームで電車を待っている他校の女子高生は、織田を見て、明らかに引いています。

しかし、織田は初勝利に酔いしれていました。

「おい。早くジュース奢れよ!」

「わかった。どれが飲みたい?」
織田は即座に答えました。

「バナジュー。」

そして、ボブは120円を投入し、バナジューが吐き出されました。

織田は、大満足の笑顔で、バナジューを飲み干します。

「ぷっはあ!!こいつぁたまらんぜ!」

織田はまるでビールを飲み干すかのような声を上げました。

バナナジュース。

なぜ、彼はバナナジュースを求めたのでしょうか。

このバナナジュースは、120円という値段の割には量が非常に少ないことで有名です。
ものの5,6秒で飲み干せてしまうのですから。

普通は、量が少ないのは悪いことなのですが、今回の織田にとっては、この少量が大事なのです。


「もう一回や。」

先ほど敗戦したボブは改めて勝負を挑みました。

しかし、次も全く歯が立ちませんでした。

織田は、手押し相撲に覚醒していたのです。

力の加え加減、強弱、タイミング、あらゆる手押し相撲のステータスがオールAになっていたのです。

ボブは肩を落とし、再び、バナナジュースを奢ります。

「次は、俺や!」
今度はぼくが挑戦しますが、あっけなく敗北し、またもバナナジュースを奢ります。

わずか5分ほどで、織田はもう3本のバナナジュースを飲んでいるのです。

続いて、きゃぷてんが立ち上がりました。

「そうか。俺の出番か。」

しかし、彼も瞬殺されました。


「くうぅ。」とうなって、バナナジュースを奢ります。

ガゴン。
四度、吐き出されるバナナジュース。

その黄色のラベルがなんだか憎たらしくなってきます。

織田は満足そうに、4本目のバナナジュースを飲み干しました。


しかし心なしか、少し苦しそうです。
いくら量が少ないとはいえ、大量に飲料水を飲んでいるのですから当然でしょう。

しかし負けたままでは終われません。
ぼくらは、何度も何度も、かわるがわる織田に勝負を挑みました。


「しぇあ!」

ガゴン!

吐き出されるバナジュー!


「しぇあ!」勝利する織田。
悔しそうな顔で120円を財布から取り出しバナジューを買う敗者。

ガゴン!

吐き出されるバナジュー!

ゴクゴクゴク。ぷっはあー!飲み干す織田。


しかし、彼の顔には、疲労の色が見えていました。

いける、いけるぞ。ぼくらは捲土重来を期します。
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