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【Ⅰ章】秀吉、暗号資産に全集中をする
5話 ハイリスクハイリターン
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「そう、損切大魔王。株式でも、FXでも、ポジションを持っても急落することが多くて、損切ばかりしている魔王。損切大魔王と呼ばれていたらしい」
「伝説のディーラーだったっていう噂は?」
「それもどうやら本当らしい。損切大魔王と呼ばれていたことが悔しくて、必死に勉強してトレード技術を磨いたらしいぜ?」
「人間、悔しさが糧になるってことだな」と、清正が呟いたとき、ランチスペースに秀吉が入ってきた。
「お前ら。なんの話で盛り上がってたんだ?」
「最近の経済情勢について話していたんですよ!」と清正は答えた。
彼らの上司である秀吉は能力が高く頼りになったが、出世のためなら手段を選ばないという認識だった。
信長に関する噂を自分たちが行っていることを知られれば、どこで揚げ足をとられるかわからない。
上司でもあるが侮らない存在、それが秀吉だった。
「そうなのか」と言って、秀吉は笑みを浮かべた。
「秀吉さんはどうなんですか?仮想通貨のトレード」
清正の質問に対して秀吉は「まあ、XRP次第だな。
仮想通貨市場は24時間動き
続けているから、気が休まる暇はないけどな」
「まだXRP、リップルなんて買ってるんですか?」清正は、不満そうに問いかけた。
「リップルは最高値が400円だ。しかし今は1XRP=22円がアベレージ。最高値奪還を達成すれば、元手が約20倍になるんだぞ?」
「それは知ってますけど…ぼくは好みではないですね。値動きが仕手株に似ていますし」
「仕手株だからいいんだよ。急上昇の時には、イナゴどもが寄ってくるだろ?」
「仕手株は危険です。同じ仮想通貨でも、ビットコインやイーサリアムをメインにトレードした方がいいですよ?時価総額、1位と2位ですし、チャート形状的にも手堅いですし」
「ビットコインの上昇は安定的すぎる。アルトシーズンが到来すれば、リップルは数十倍の値上がりが見込める」
「秀吉さんの気持ちもわからなくはないですが...」と清正は答えた。
秀吉は鋭い眼光で、「織田軍団ではまだ若輩者の俺が出世するためには、ちまちまトレードしていられないんだ。でっかい魚を釣らないとな!」と語気を荒げた。
秀吉が所属する営業八課は、最も人員と資金が少ない部署だった。
信長から預かった軍資金は300貫。筆頭社員の柴 勝家や羽生 長秀に比べて、1/10以下だ。
少ない資金で利益を上げるためには、ハイリスクハイリターンの銘柄に手を出すことは当然でもあった。しかし、清正は
リップルに大きな不安を抱えていた。
証券なのか、通貨なのか、という問題だ。
*
11月中旬のとある日、大きな事件の初動となる出来事が起こった。
秀吉が運用可能な軍資金の5割以上を突っ込んでいたリップルが、突如急激な上昇を見せたのだ。
秀吉は、相場をみるたびに、驚きと喜びを隠せない。
「あれ、昨日まで22円前後やったのに、今日は30円を超えたやと!?」
「ああ!今日は39円!?」
「うっひょ~おお、ついに50円!?」
朝起きたら、資産が30%ほど上昇している毎日が続いた。
まさに、太平洋で寝て、起きたら日本海。
世の中の人々は、汗を流して働いている。この不景気で職業を失う人もいる。
そんな中、仮想通貨投資というものは、恐ろしいパフォーマンスを出していた。
2020年3月の底値から、8ヶ月経った11月には、仮想通貨の中心銘柄、ビットコインや、イーサリアムは、5~7倍の価格上昇を見せていたのだ。
寝て起きるだけで、資産が増えている。
そんなことありえない、と思うことが実際に起こっていたのだ。
欲望に呑み込まれた秀吉は、相場の暴落時に備えていた予備資金も追加でXRPに投入した。通常は指定しておく、指値売り注文も行わなかった。XRPは最高値の400円を奪還する、と盲信していたのだ。
「伝説のディーラーだったっていう噂は?」
「それもどうやら本当らしい。損切大魔王と呼ばれていたことが悔しくて、必死に勉強してトレード技術を磨いたらしいぜ?」
「人間、悔しさが糧になるってことだな」と、清正が呟いたとき、ランチスペースに秀吉が入ってきた。
「お前ら。なんの話で盛り上がってたんだ?」
「最近の経済情勢について話していたんですよ!」と清正は答えた。
彼らの上司である秀吉は能力が高く頼りになったが、出世のためなら手段を選ばないという認識だった。
信長に関する噂を自分たちが行っていることを知られれば、どこで揚げ足をとられるかわからない。
上司でもあるが侮らない存在、それが秀吉だった。
「そうなのか」と言って、秀吉は笑みを浮かべた。
「秀吉さんはどうなんですか?仮想通貨のトレード」
清正の質問に対して秀吉は「まあ、XRP次第だな。
仮想通貨市場は24時間動き
続けているから、気が休まる暇はないけどな」
「まだXRP、リップルなんて買ってるんですか?」清正は、不満そうに問いかけた。
「リップルは最高値が400円だ。しかし今は1XRP=22円がアベレージ。最高値奪還を達成すれば、元手が約20倍になるんだぞ?」
「それは知ってますけど…ぼくは好みではないですね。値動きが仕手株に似ていますし」
「仕手株だからいいんだよ。急上昇の時には、イナゴどもが寄ってくるだろ?」
「仕手株は危険です。同じ仮想通貨でも、ビットコインやイーサリアムをメインにトレードした方がいいですよ?時価総額、1位と2位ですし、チャート形状的にも手堅いですし」
「ビットコインの上昇は安定的すぎる。アルトシーズンが到来すれば、リップルは数十倍の値上がりが見込める」
「秀吉さんの気持ちもわからなくはないですが...」と清正は答えた。
秀吉は鋭い眼光で、「織田軍団ではまだ若輩者の俺が出世するためには、ちまちまトレードしていられないんだ。でっかい魚を釣らないとな!」と語気を荒げた。
秀吉が所属する営業八課は、最も人員と資金が少ない部署だった。
信長から預かった軍資金は300貫。筆頭社員の柴 勝家や羽生 長秀に比べて、1/10以下だ。
少ない資金で利益を上げるためには、ハイリスクハイリターンの銘柄に手を出すことは当然でもあった。しかし、清正は
リップルに大きな不安を抱えていた。
証券なのか、通貨なのか、という問題だ。
*
11月中旬のとある日、大きな事件の初動となる出来事が起こった。
秀吉が運用可能な軍資金の5割以上を突っ込んでいたリップルが、突如急激な上昇を見せたのだ。
秀吉は、相場をみるたびに、驚きと喜びを隠せない。
「あれ、昨日まで22円前後やったのに、今日は30円を超えたやと!?」
「ああ!今日は39円!?」
「うっひょ~おお、ついに50円!?」
朝起きたら、資産が30%ほど上昇している毎日が続いた。
まさに、太平洋で寝て、起きたら日本海。
世の中の人々は、汗を流して働いている。この不景気で職業を失う人もいる。
そんな中、仮想通貨投資というものは、恐ろしいパフォーマンスを出していた。
2020年3月の底値から、8ヶ月経った11月には、仮想通貨の中心銘柄、ビットコインや、イーサリアムは、5~7倍の価格上昇を見せていたのだ。
寝て起きるだけで、資産が増えている。
そんなことありえない、と思うことが実際に起こっていたのだ。
欲望に呑み込まれた秀吉は、相場の暴落時に備えていた予備資金も追加でXRPに投入した。通常は指定しておく、指値売り注文も行わなかった。XRPは最高値の400円を奪還する、と盲信していたのだ。
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