35 / 48
【番外編】新入社員ガモタンの珍道中
【乳牛Ⅲ】夏草や兵どもが夢の跡
しおりを挟む【一難去って、また一興】
マットに沈んだ乳牛を一瞥し、アカネはうっすらと涙を浮かべながら吐き捨てます。
「むきになんないでよ!!もおこどもなんやから…」
「お前も子どもやろが」ぼくは、即座に言い返しました。
すると、アカネは、
「うわーん、ぐっすんひっぐ、ひどいよぉ」
と、号泣し始めたのです。
「お前や。ひどいのは、お前や」
ぼくはアカネに対して反論します。
しかし、アカネの号泣に気づいたジムトレーナーのお姉さんは、ぼくに近づいて言いました。
「あ~、お前やらかしてもうたな。
アカネを泣かしたらあかんやないか。
ちょっと、ジムから出ていけよ。
そのへんブラついてこい」
ぼくは納得できませんでした。
アカネと乳牛に、自分のポケモンたちを、何十回と轢かれて瀕死にさせられ、現実世界でゲロピッピまで吐いてしまった。
それなのに、その悔しさを晴らして勝利すれば、悪者扱いされるのです。
不可解な思いが狼煙のようにモヤモヤと上昇していきました。
そのときに、改めて気づきました。この世界とは、不条理なものです。
納得できないことがあってこそ、人生なのです。
あんなに強かったアカネちゃんも、負けてしまえば女の子です。
急に号泣するというメンヘラっぷりも、女の涙は武器なのです。
そして、乳牛はそれを知っていたのかもしれません。
自らの主、アカネちゃんが、本当はか弱い女の子だということを。
だから乳牛は、ありとあらゆる技を駆使して、挑戦者たちを叩き潰してきたのでしょう。
それを考えると、あの乳牛のことが愛おしくなりました。
乳牛は愛するアカネを守りたかっただけなのです。
大人になってから、乳牛の種族値を見ると、「なんや雑魚やん?」と思ってしまうでしょう。
しかし、アカネへの思いが、乳牛の強さを種族値以上に引き出していたと思うと、納得ができます。
これぞ、「アイノチカラ」
ストーリーを進めて、アサギシティ付近の草むらで出会ったミルタンク(乳牛)を捕まえたとしても、自分の手持ちポケモンになると弱いと感じるものです。
それは、自分の「アイノチカラ」が弱いからなのかもしれません…
―――――――――――――――――――
【後日談-必勝法-】
ライアーゲームの秋山は言いました。
「このゲームには、必勝法がある。」
そう、あの頃はイシツブテしか思い浮かびませんでしたが、対アカネ戦には他にも秘策があるのです。
・マダツボミの塔で捕まえたゴースで「のろい」を使う
・ポッポですなかけを撒いた後に、チコリータリフレクター→毒の粉→なきごえ。
・交換で入手できるメロメロ対策のメスのワンリキー(きんにく)を使う。
これらの情報を知っていれば、あんなに苦戦することはなかったのかもしれません。
「情弱乙」と叱られそうです。
しかし、幼き日の私たちには真っ向勝負で勝つ方が大きな喜びを得られると思うのです。
だからあの頃は、情弱万歳、なのです。
―――――――――――――――――――
【夏草や兵どもが夢の跡 松尾芭蕉を思ふ】
草むらで必死にマグマラシのレベル上げに励み、つながりのどうくつまで戻り、イシツブテを捕まえる。
あの時間こそ、人生においてかけがえのないことに気づかせてくれた時間だったのです。
成功に近道はありません。
試行錯誤と地道な努力が大事なのです。
人生には、決して、逃げてはいけない時がある。
それをアカネちゃんと乳牛は教えてくれたのです。
アカネちゃんと乳牛だけではありません。
ピカチュウ版で、タケシに挑むとき、
イシツブテといえば、みんな大好きタケシさんですね。
しかし彼は金銀版において、オムスターやカブトプスやら、貴重な化石ポケモンを使っていました
研究所から盗んだわけではないと思いますが、心配ですね。
ヒトカゲを選んで、カスミのスターミーに挑むとき、
ヌマクローを選んで、ジュプトルに挑むとき、
ポケモンの世界では、絶体絶命の時でも勝って前に進まないとならないときがあるのです。
実社会も同じです。
どんなときでも、ネバーギブアップ!
0
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ
朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】
戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。
永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。
信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。
この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。
*ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。


鳴瀬ゆず子の社外秘備忘録 〜掃除のおばさんは見た~
羽瀬川璃紗
経済・企業
清掃員:鳴瀬ゆず子(68)が目の当たりにした、色んな職場の裏事情や騒動の記録。
※この物語はフィクションです。登場する団体・人物は架空のものであり、実在のものとは何の関係もありません。
※ストーリー展開上、個人情報や機密の漏洩など就業規則違反の描写がありますが、正当化や教唆の意図はありません。
注意事項はタイトル欄併記。続き物もありますが、基本的に1話完結、どの話からお読み頂いても大丈夫です。
25年3月限定で毎週金曜22時更新予定。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる