こちら織田証券(株)清州営業所

喜多ばぐじ・逆境を笑いに変える道楽作家

文字の大きさ
上 下
36 / 48
【番外編】新入社員ガモタンの珍道中

【コメディ】トイレの中心で便意を叫ぶ

しおりを挟む
時間に余裕を持って出社するのが新入社員の常識ですが、ガモたんは毎日、時間ギリギリに到着する電車に乗っていました。

上司に、「おい、もっと早くこいよ」と言われても、♪ギリギリでいつも生きていたいからah-ah♪ とリアルフェイスで鼻歌を返したのです。

「しばくど?お前は一言多いねん」

「さ~せん」

そんな会社だからこそ、あの悲劇が生まれることになります。



ある日の朝、満員電車に揺られている最中のことでした。

突然、下腹部をムカムカする感覚が襲います。

なんだ、これは?

ガモたんは、ぎゅうぎゅう詰めの車内で携帯を口元に近づけました。

そして、急いでグーグル先輩に向かってささやきシロー、もとい、囁きました。

「下腹部 むかむか 原因」

即座に、Siriちゃんは答えます。

「それは、便意です」

「やはり」
ぼっそりと答えて、顔をしかめます。

しかし便意という名の魔物は、容赦がありませんでした。

下腹部のムカムカは増していき、物体は今にも脱出を試みています。


漏らすのか?漏らさないのか??

いやだ、いやだあ!!!

車内で便意という悪魔に屈するわけにはいかないガモたんは必至の抵抗を試みます。

前傾姿勢をしてみたり、芋虫のように体をくねらせてみたり、しゃがみこんでみたり。

しかし、限界は近づいてきます。

やがてガモたんは、この便意が多少の我慢程度ではどうにもならないということに気づいてしまいました。

そんなときです。

目の前に快楽の呪文が飛び込んできたのです。



「万が一の時には、非常停止ボタンがあります。」

電車の広告に描かれたその表示にはこう書いてありました。

そしてガモたんの隣には、ワンピース・バギーの鼻のような真っ赤な赤いボタンがあるではありませんか。


これか?

押すか?

押したら電車が止まるんだよな?

押しちゃおうかな?

葛藤に襲われる中、赤いボタンをポチッと押すだけで、全てが楽になる気がしたのです。

便意に負け、赤いボタンを今にも押してしまいそうになったとき、神様の叫び声が聞こええてきました。

「電車が止まっても、便を出す場所などない。次の駅まで我慢せよ」

その声ではっと目が覚め、再度状況を考察します。

押して、電車を止めた場合、なぜ止めたのか?と問題になってしまいます。

その場合、ガモたんはこう答えるでしょう。

「大便がしたかった」と。

朝の通勤ラッシュの大切な時間に、便意に駆られて電車を止めた小僧を、阪急電鉄は許すでしょうか。

いえ、許すはずがありません。
損害賠償などが発生するか、最悪。牢獄行きです。

押しちゃだめだ。
ガモたんはなんとか思いとどまり、電車の停止ボタンを押すことを思いとどまりました。


電車の現在地は、現在は阪急岡本を越えたあたりです。
梅田駅まで便意を我慢して、梅田駅で用を足せば、会社に間に合う可能性はあります。

しかしガモたんは、会社に間に合うことよりも、生理的欲求を解決することを優先しました。


これは苦渋の決断です。
社会人として、会社と便意を天秤にかけて、便意を選んでしまったのです、

もっと余裕をもって早めの電車に乗れば、「ギリギリでいつも生きていたいからAH」と、調子に乗っていなければ。そんな後悔に意味はありません。

今できることは、この便意を開放するために化粧室に駆け込むことだけでした。
ガモたんは一切の邪念を捨てて、精神を集中させました。

目的地への途中の駅で電車が止まるや否や、猛ダッシュで、階段を駆け上がりました。

このとき、ガモたんはたしかに風になりました。時速20キロで化粧室に向かって進みます。

化粧室には、合計4つの扉がありました。
しかしその4つ全てが閉ざされていたのです。

ああ、神よ。神はそこまでして、ガモたんに漏らさせたいのでしょうか。

諦めて気を抜いた瞬間、便意が下腹部を襲います。
んが!っと叫ぶや否や、ガモたんはドアの前に躍り出ていました。

ドドドッドドドン!!

「すみません!」

ドドドッドドドン!!

「すみません!」

ドドドッドドドン!!

「もうだめなんです!」

ドドドッドドドン!!

「あ、あけてください!!」


4つのドアを叩くガモたんの姿は、まるで、楽屋挨拶周りをする鈴木奈々のようでした。

しかし、どのドアからも反応はありません。

尻の穴を引き締め、限界のところで耐えながら、ドアの前で歩き回りました。

カッカッカッと、響き渡る革靴の音。

頼む、誰でもいいから、出てきてくれという思いは、
「助けてくださあ~い!」と言う咆哮を生み出していたのです。

世界の中心で愛を叫ぶほどの思いはなくとも、トイレの中心で便意を叫ぶことはできるのです。

その咆哮を放ったすぐ後でした。

ガチャッ

目の前の扉が開き、バーコード型の頭をした中年男性が現れたのです。

しかし、その男性があまりにも芸人のトレンディエンジェルに似ていたからでしょうか。

つい無意識に、「ちぇけらっちょはげらっちょ」と言ってしまったのです。

中年男性はもちろん、烈火のごとく怒り、ドアを再び閉めてしまいます。


ドドン!!!!!


ドアが閉まった衝撃で、ガモたんのズボンは重みを感じることになります。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

生残の秀吉

Dr. CUTE
歴史・時代
秀吉が本能寺の変の知らせを受ける。秀吉は身の危険を感じ、急ぎ光秀を討つことを決意する。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

鳴瀬ゆず子の社外秘備忘録 〜掃除のおばさんは見た~

羽瀬川璃紗
経済・企業
清掃員:鳴瀬ゆず子(68)が目の当たりにした、色んな職場の裏事情や騒動の記録。 ※この物語はフィクションです。登場する団体・人物は架空のものであり、実在のものとは何の関係もありません。 ※ストーリー展開上、個人情報や機密の漏洩など就業規則違反の描写がありますが、正当化や教唆の意図はありません。 注意事項はタイトル欄併記。続き物もありますが、基本的に1話完結、どの話からお読み頂いても大丈夫です。 25年3月限定で毎週金曜22時更新予定。

カレーうどんのマーケティング学

矢木羽研
経済・企業
なぜ、うどん店をカレーうどん専門店にすると売上が上がるのか? ※あくまでもフィクションです。これを真に受けて失敗しても責任は取れません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...