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【番外編】新入社員ガモタンの珍道中
【越南3】偽ドラえもんに怪しい物を掴まされる
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「隣にいるのが、美しい彼女だったら…」
蛍のように浮かぶランタンが映し出す幻想的な世界の中で、2人は同じことを思い浮かべたろう。しかし、この旅に美女はいない。彼女がいない男が2人いるだけだ。
彼らがやってきた場所・ホイアンは、ベトナム中央部に位置する海辺の都市。
「ホイアンの古い町並み」としてユネスコの世界文化遺産に登録されており、夜はロマンチックな風景に様変わりする。
客引きの美女、怪しい製品を売っている露天商たち、歩いているだけで楽しくなる、それがホイアンだ。浮かぶランタンの周りに蛍や幻光虫がいればさらに絵になるだろう。
そんなとき、ガモたんたちはある日本のキャラクターを見つけてしまった。
みんなの人気者、ドラえもんだ。
もちろん目を疑った。本来は2頭身のはずのドラえもんが、見事な8頭身になっている。
気温の暑さにまいっているのか、ドラえもんは腕を動かし、汗を拭おうとしている。
ロボットって汗をかくの?きこりの泉から綺麗なジャイアンが現れてきた以上の衝撃。
ドラえもんはガモたんたちのそばを通り過ぎると、道の端にいたスタイル抜群の美女と談笑を始めた。
この瞬間、「怪しすぎる偽物ドラえもん」が、「嫉妬の対象に当たるナイスガイ」に変わった。新卒童貞のガモたんにとって、目の前で偽ドラと美女がいちゃついている姿は、ロンギヌスの槍を刺されたように胸をえぐられる出来事だった。
憤怒したガモたんは、鬼のような形相でドラえもんに…迫らない。
今は2人の時間だ。それを邪魔することは紳士ではない。お姉さんとドラえもんの談笑が終わるのを、じっと待った。
大老・井伊直弼の籠に迫る脱藩者も同様の気持ちだったのだろう。急いては事を仕損じる。機を待つしかない。
そして会話が終わり、ドラえもんが歩き出した時、ガモたんは彼の目前に躍り出た。
「やあやあ、我こそは...!」
「先輩!何する気っすか!?鎌倉時代じゃあるまいし名乗らなくても...」
せっきーの声は耳に入らない。
ガモたんはカッと目を見開き、ドラえもんを睨みつけた。
そして「ガモたんも美人のお姉さんと仲良くなりたいからその着ぐるみを脱いで?それを貸してほしい」という言葉を伝えようとすれど、英語が出てこない。出川イングリッシュさえ下回る卑猥な単語を口走ってしまう。ここが日本なら手錠物をはめられかねない。
その時、ドラえもんは、お腹にあるダボダボのポケットをまさぐり始めた。
伝家の宝刀、秘密道具の出番なのか。
ドラえもんが取り出したのは、「ドラえもん型の飴」だった。手作り感満載、原材料は不明、舐めた瞬間嘔吐する確率は20%、といったところか。
ドラえもんは、その飴を無理やり手渡ししてきた。
「くれるのか、優しいやつだな」ミジンコばりの単細胞のガモたんは、一瞬でこの偽ドラに心を開いた。
飴をもらったことに満足したガモたんは踵を返してせっきーの元に戻ろうとする。
しかし、偽ドラはガモたんの肩を掴み、目の前に10000ドン札を掲げてきた。
「こいつ、金をとる気か!?」
どうやら、この飴はくれたわけではなく、売ったということらしい。
「こんな強引な売り方、認められるのか。クーリングオフしてやる!」と、思いつつも。すぐに諦めて、10000ドン札で支払った。
*
購入した偽ドラえもん飴を眺めていると、ガモたんに怒りの感情が湧きたってきた。
この偽物は、このようなやり方で商売をしているのか。
この偽ドラに無理やり飴を買わされた子供たちが、きっと何千人といるはずだ。
ガモたんは再び、偽ドラに声をかけた。
そして、「せっきー!頼む!」と叫び…
旅の思い出として、偽ドラといっしょに記念撮影をした。
今ここで、この偽ドラを摘発する妙案が浮かばなかったこともあるが、この世界には激安の偽飴を売りさばく偽ドラえもん以上の巨悪が蔓延っている。ガモたんは、そちらにも対応しないといけないため、この偽ドラは見逃してやることにした。
しかし、後輩のせっきーは口にしてはならないことを言ってしまった。
「先輩、ドラえもんと話してるとき、ちょっとびびってましたよね?」
汗を拭い、せっきーに飴を差し出した。
「これあげるから、ビビってたことは内緒な?」
蛍のように浮かぶランタンが映し出す幻想的な世界の中で、2人は同じことを思い浮かべたろう。しかし、この旅に美女はいない。彼女がいない男が2人いるだけだ。
彼らがやってきた場所・ホイアンは、ベトナム中央部に位置する海辺の都市。
「ホイアンの古い町並み」としてユネスコの世界文化遺産に登録されており、夜はロマンチックな風景に様変わりする。
客引きの美女、怪しい製品を売っている露天商たち、歩いているだけで楽しくなる、それがホイアンだ。浮かぶランタンの周りに蛍や幻光虫がいればさらに絵になるだろう。
そんなとき、ガモたんたちはある日本のキャラクターを見つけてしまった。
みんなの人気者、ドラえもんだ。
もちろん目を疑った。本来は2頭身のはずのドラえもんが、見事な8頭身になっている。
気温の暑さにまいっているのか、ドラえもんは腕を動かし、汗を拭おうとしている。
ロボットって汗をかくの?きこりの泉から綺麗なジャイアンが現れてきた以上の衝撃。
ドラえもんはガモたんたちのそばを通り過ぎると、道の端にいたスタイル抜群の美女と談笑を始めた。
この瞬間、「怪しすぎる偽物ドラえもん」が、「嫉妬の対象に当たるナイスガイ」に変わった。新卒童貞のガモたんにとって、目の前で偽ドラと美女がいちゃついている姿は、ロンギヌスの槍を刺されたように胸をえぐられる出来事だった。
憤怒したガモたんは、鬼のような形相でドラえもんに…迫らない。
今は2人の時間だ。それを邪魔することは紳士ではない。お姉さんとドラえもんの談笑が終わるのを、じっと待った。
大老・井伊直弼の籠に迫る脱藩者も同様の気持ちだったのだろう。急いては事を仕損じる。機を待つしかない。
そして会話が終わり、ドラえもんが歩き出した時、ガモたんは彼の目前に躍り出た。
「やあやあ、我こそは...!」
「先輩!何する気っすか!?鎌倉時代じゃあるまいし名乗らなくても...」
せっきーの声は耳に入らない。
ガモたんはカッと目を見開き、ドラえもんを睨みつけた。
そして「ガモたんも美人のお姉さんと仲良くなりたいからその着ぐるみを脱いで?それを貸してほしい」という言葉を伝えようとすれど、英語が出てこない。出川イングリッシュさえ下回る卑猥な単語を口走ってしまう。ここが日本なら手錠物をはめられかねない。
その時、ドラえもんは、お腹にあるダボダボのポケットをまさぐり始めた。
伝家の宝刀、秘密道具の出番なのか。
ドラえもんが取り出したのは、「ドラえもん型の飴」だった。手作り感満載、原材料は不明、舐めた瞬間嘔吐する確率は20%、といったところか。
ドラえもんは、その飴を無理やり手渡ししてきた。
「くれるのか、優しいやつだな」ミジンコばりの単細胞のガモたんは、一瞬でこの偽ドラに心を開いた。
飴をもらったことに満足したガモたんは踵を返してせっきーの元に戻ろうとする。
しかし、偽ドラはガモたんの肩を掴み、目の前に10000ドン札を掲げてきた。
「こいつ、金をとる気か!?」
どうやら、この飴はくれたわけではなく、売ったということらしい。
「こんな強引な売り方、認められるのか。クーリングオフしてやる!」と、思いつつも。すぐに諦めて、10000ドン札で支払った。
*
購入した偽ドラえもん飴を眺めていると、ガモたんに怒りの感情が湧きたってきた。
この偽物は、このようなやり方で商売をしているのか。
この偽ドラに無理やり飴を買わされた子供たちが、きっと何千人といるはずだ。
ガモたんは再び、偽ドラに声をかけた。
そして、「せっきー!頼む!」と叫び…
旅の思い出として、偽ドラといっしょに記念撮影をした。
今ここで、この偽ドラを摘発する妙案が浮かばなかったこともあるが、この世界には激安の偽飴を売りさばく偽ドラえもん以上の巨悪が蔓延っている。ガモたんは、そちらにも対応しないといけないため、この偽ドラは見逃してやることにした。
しかし、後輩のせっきーは口にしてはならないことを言ってしまった。
「先輩、ドラえもんと話してるとき、ちょっとびびってましたよね?」
汗を拭い、せっきーに飴を差し出した。
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