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【Ⅳ章】利家、まつと二人で創る夫婦像
【まつ利】2話 可愛すぎる嫁は家事が苦手ッピ
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信長に直談判をする1週間前のことだ。
織田証券株式会社清州支店に勤務する新婚の前 利家は、公私ともに幸せな生活を送っていたが、とあることに頭を抱えていた。
ガチャン…
「キャー、お皿が飛んでいった~」
ゴトン…
「アー、利家くんが信長様からもらった茶器が床に~」
ギュイーン…
「ヒェー、利家くんが徹夜で作った原稿を掃除機が吸い込んでいく~」
「まぁつ~!もうええからじっとしておいてくれぇ~!!!」と言って、利家はまつをギュッと抱きしめた。
利家の妻、まつは可愛かった。160cmに満たない身長、愛くるしい目元。しかし、利家は結婚してから気付いてしまったのだ。彼女の料理と掃除スキルは`1`だったことに。
*
「のう、まつ。ちょっと座ってくれ」
いつもならイチャイチャTIMEに入るはずの週末の夜9時。利家は深刻な表情でテーブルに座っていた。
「なに?利家くん?」まつは、今日もにこにこしている。
利家は、`今日もかっわいいな~`と思いながらも、心を鬼にした。
「まつ、今日は大事な話があるんだ」と言って、大学ノートに六角形を描きはじめた。
「この絵はなに?凄いバランスの悪いチャートだけど?」
「君の家事スキルを可視化してみた!」
まつは嫌な予感がした。これは、面倒な時の利家くんだ、と。まつにとって利家は、優しい夫ではあったが、分析、PDCAを回せ、と科学的な行動を求めてくるときは厄介でもあった。
利家は、「厳しいことを書くがこれが客観的な分析結果だ」と、六角形に頂点にそれぞれ数字と文字を書いていった。
料理 1
買い出し 30
掃除・片付け 1
まつはそれを見ながら「え、私の家事スキル、低すぎない!?転生してやり直そうかしら?」
と、驚嘆の声をあげる。
利家は、「大丈夫。ここからは高得点ゾーンだ」と文字を書き続けた。
洗濯 70
ゴミ出し 90
一生懸命 100
「やったー!一生懸命が100だ!」と喜ぶまつをみて、利家はさらに言葉を続ける。
「まつはとにかく一生懸命だ!それにゴミ出しも上手い!」
「ゴミ出しに上手いとかあったっけ?」
「いや、ある。まつが出したゴミはきちんと分別されていて、回収に来てくれる職員さんも嬉しそうにしているはずだ!」
「やったー!」と喜ぶまつを二度見して、利家はにやりと笑った。まずは褒める、褒めて、褒めて、褒める。
しかし、耳が痛いことも言わなければならない。
「料理1、掃除1の理由はわかるね?」
「料理、7くらいはあると思う!」
「どんぐりのせいくらべやないかい!」
「わぁー!」
「たしかにまつの料理はおいしいんだ。けど、1回の料理に3時間かかるのは、超高級シェフの仕事だから。俺たちみたいな共働き世帯は、1回30分以内の時短料理でいいんだよ?」
「わかってるけど、だって、利家くんに美味しい料理を食べてもらいたいんだもん!」
「まつは優しいなあ」と言って利家はまつの頭を撫でた。
そして心の中で`だめだ!こうやってうやむやにしてきたから、今、夫婦生活がある意味破綻の危機なんじゃないか…!?`と叫ぶ。
「まつの気持ちは嬉しいんだけどね。俺はあの織田証券でもう数年近く働いているんだよ?働き方改革なんて言葉がなかったころは、深夜帰宅があたりまえ。晩御飯だってカップ麺だけ、なんて日が続いた。それでも問題なかったんだ。粗食に強いのが、武士の末裔だからね」
「そうなの…?かわいそう…」
「そうなの。でも大丈夫!だから料理はもっと手を抜いていいんだよ?その代わりもう少し早い時間に食べるようにしたいんだ…」
「うん、わかった!それで、この買い出し30っていうのは?」まつは首をかしげながら尋ねた。
「まつの買い物は、毎回が年末年始なんだ…」
「え?」
「買ってくる食材が、豪華で豪華で、さらに量が多い…」
「だって、たくさん食べた方が嬉しいよ!!」
「一応、予算を決めたじゃないか…一緒に暮らし始めて3か月。未だ食費が予算内に収まったことがない…」
うつむく利家をみて、まつもしょぼくれる。
「ごめん…」
「謝らなくていいんだよ!」と慌てる利家。
「だって、まつは正社員として働いてくれているんだし、仕事に家事に大変だと思う」
「うん!フルタイムワーカーだよ!でも、家事との両立ができなくて、あわあわしてる。利家くんも家事を手伝ってくれる」
「そう、そして疲弊してきたよね。」
「うん、疲れてきたよ…正社員で共働きはしんどいよ」
「俺もなるべく早く帰るようにしてるけど…」
「信長様は残業大好きなのに、利家くんは周りの冷たい目にも耐えて帰ってきてくれるよね。嬉しいよ!」
「危機感、もあるかもね。はじめは家事が苦手なまつをみて、おっちょこいちょいだけど可愛いなあと思っていたさ。けど、付き合うのと一緒に生活をするのは違う」
「だから家事に積極的に参加してくれてるんだよね?ありがとう」
「俺がより、家事に参加することで、まつの睡眠時間を確保したかったんだ」
まつの睡眠時間は異常に長かった。
「私も最近は10時間くらい寝たらなんとかなるよ!でも本当はもっと寝たいけど…」
「どれくらい寝たいの?」
「1日16時間、かな」
利家は天を仰いだ。
「コアラかな?」
「間違えた、1日20時間は寝たい」
「ナマケモノかな?」と、利家は天を仰いだ。
織田証券株式会社清州支店に勤務する新婚の前 利家は、公私ともに幸せな生活を送っていたが、とあることに頭を抱えていた。
ガチャン…
「キャー、お皿が飛んでいった~」
ゴトン…
「アー、利家くんが信長様からもらった茶器が床に~」
ギュイーン…
「ヒェー、利家くんが徹夜で作った原稿を掃除機が吸い込んでいく~」
「まぁつ~!もうええからじっとしておいてくれぇ~!!!」と言って、利家はまつをギュッと抱きしめた。
利家の妻、まつは可愛かった。160cmに満たない身長、愛くるしい目元。しかし、利家は結婚してから気付いてしまったのだ。彼女の料理と掃除スキルは`1`だったことに。
*
「のう、まつ。ちょっと座ってくれ」
いつもならイチャイチャTIMEに入るはずの週末の夜9時。利家は深刻な表情でテーブルに座っていた。
「なに?利家くん?」まつは、今日もにこにこしている。
利家は、`今日もかっわいいな~`と思いながらも、心を鬼にした。
「まつ、今日は大事な話があるんだ」と言って、大学ノートに六角形を描きはじめた。
「この絵はなに?凄いバランスの悪いチャートだけど?」
「君の家事スキルを可視化してみた!」
まつは嫌な予感がした。これは、面倒な時の利家くんだ、と。まつにとって利家は、優しい夫ではあったが、分析、PDCAを回せ、と科学的な行動を求めてくるときは厄介でもあった。
利家は、「厳しいことを書くがこれが客観的な分析結果だ」と、六角形に頂点にそれぞれ数字と文字を書いていった。
料理 1
買い出し 30
掃除・片付け 1
まつはそれを見ながら「え、私の家事スキル、低すぎない!?転生してやり直そうかしら?」
と、驚嘆の声をあげる。
利家は、「大丈夫。ここからは高得点ゾーンだ」と文字を書き続けた。
洗濯 70
ゴミ出し 90
一生懸命 100
「やったー!一生懸命が100だ!」と喜ぶまつをみて、利家はさらに言葉を続ける。
「まつはとにかく一生懸命だ!それにゴミ出しも上手い!」
「ゴミ出しに上手いとかあったっけ?」
「いや、ある。まつが出したゴミはきちんと分別されていて、回収に来てくれる職員さんも嬉しそうにしているはずだ!」
「やったー!」と喜ぶまつを二度見して、利家はにやりと笑った。まずは褒める、褒めて、褒めて、褒める。
しかし、耳が痛いことも言わなければならない。
「料理1、掃除1の理由はわかるね?」
「料理、7くらいはあると思う!」
「どんぐりのせいくらべやないかい!」
「わぁー!」
「たしかにまつの料理はおいしいんだ。けど、1回の料理に3時間かかるのは、超高級シェフの仕事だから。俺たちみたいな共働き世帯は、1回30分以内の時短料理でいいんだよ?」
「わかってるけど、だって、利家くんに美味しい料理を食べてもらいたいんだもん!」
「まつは優しいなあ」と言って利家はまつの頭を撫でた。
そして心の中で`だめだ!こうやってうやむやにしてきたから、今、夫婦生活がある意味破綻の危機なんじゃないか…!?`と叫ぶ。
「まつの気持ちは嬉しいんだけどね。俺はあの織田証券でもう数年近く働いているんだよ?働き方改革なんて言葉がなかったころは、深夜帰宅があたりまえ。晩御飯だってカップ麺だけ、なんて日が続いた。それでも問題なかったんだ。粗食に強いのが、武士の末裔だからね」
「そうなの…?かわいそう…」
「そうなの。でも大丈夫!だから料理はもっと手を抜いていいんだよ?その代わりもう少し早い時間に食べるようにしたいんだ…」
「うん、わかった!それで、この買い出し30っていうのは?」まつは首をかしげながら尋ねた。
「まつの買い物は、毎回が年末年始なんだ…」
「え?」
「買ってくる食材が、豪華で豪華で、さらに量が多い…」
「だって、たくさん食べた方が嬉しいよ!!」
「一応、予算を決めたじゃないか…一緒に暮らし始めて3か月。未だ食費が予算内に収まったことがない…」
うつむく利家をみて、まつもしょぼくれる。
「ごめん…」
「謝らなくていいんだよ!」と慌てる利家。
「だって、まつは正社員として働いてくれているんだし、仕事に家事に大変だと思う」
「うん!フルタイムワーカーだよ!でも、家事との両立ができなくて、あわあわしてる。利家くんも家事を手伝ってくれる」
「そう、そして疲弊してきたよね。」
「うん、疲れてきたよ…正社員で共働きはしんどいよ」
「俺もなるべく早く帰るようにしてるけど…」
「信長様は残業大好きなのに、利家くんは周りの冷たい目にも耐えて帰ってきてくれるよね。嬉しいよ!」
「危機感、もあるかもね。はじめは家事が苦手なまつをみて、おっちょこいちょいだけど可愛いなあと思っていたさ。けど、付き合うのと一緒に生活をするのは違う」
「だから家事に積極的に参加してくれてるんだよね?ありがとう」
「俺がより、家事に参加することで、まつの睡眠時間を確保したかったんだ」
まつの睡眠時間は異常に長かった。
「私も最近は10時間くらい寝たらなんとかなるよ!でも本当はもっと寝たいけど…」
「どれくらい寝たいの?」
「1日16時間、かな」
利家は天を仰いだ。
「コアラかな?」
「間違えた、1日20時間は寝たい」
「ナマケモノかな?」と、利家は天を仰いだ。
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