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【Ⅰ章】秀吉、暗号資産に全集中をする
2話 XRPとバイオ株には手を出すな
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「トゥ、トゥアァ…TA・WA・KEEEE!!!」
信長は怒った。オフィス中に聞こえるほどの怒号が響き渡る。怒らないと約束をしていたが、頭に血が上ってしまったようだ。
「も、申し訳ございません…」秀吉はただただ頭を床にすりすりしている。
「XRP リップルとバイオ株には手を出すな、とあれほど言っておいたじゃろうが!!」
荒ぶる信長の様子を察して、2人の宿老も集まってきた。
「手を出すな?って、あれですか?乃木坂46勇士主演で実写化した作品?」
「それは映像研には手を出すな、だろ?それに乃木坂は46で終わりだから。46勇士って、真田10勇士みたいに言ってんじゃねえよ」
話に入ってきたのは、羽生長秀と柴口勝家だった。織田証券の古参社員の彼らは信長にものおじせず意見できる数少ない人物である。
「お主ら、邪魔をするな!」と言って、信長は2人の頭に鋭いジャブをかました。「イッテ」「体罰だァ」と言って、彼らはそれぞれの担当部署に戻っていく。
羽生と柴口の冷やかしによって、信長の怒りは少し収まっていた。
「秀吉よ。わが社の主力事業はなんじゃ?」
「それは、投資事業です。
株式投資軍、債券軍、貴金属軍、独立遊軍などに部隊を分けて、お客様から預かった元本を増やすことがわが社の使命だと認識しております」
「それは表向き、のことだ」
「表向き?」
「まあ、まだそこは知らんでいい」
「…?」秀吉は信長の意味深な発言に眉を曇らせた。しかし彼は賢かった。今の自分はまだ織田証券の最重要秘密を知るべき段階にはない、と自覚していたのだ。
「秀吉。今の社内の人事状況を把握しておるか?」
「はい。
今、織田証券には、4人の四天王がいらっしゃいます。
貴金属に詳しい最古参社員、柴口 勝家。
手堅く債券を運用する、羽生 長秀。
不動産を売買の第一人者、滝 一益。
株式のことならなんでもござれ、明地 光秀」
「そうじゃ。貴金属、債券、株式、不動産。投資の4つの収益柱がわが社の軸だ。四天王たちはそれぞれに得意な部門があり、軍資金と純利益を増やすために切磋琢磨しておる」
「しかし、信長様。私はその軸をメインに取り扱っていない…私に、ビットコインを買え。と命じたのは信長様ですよ?」
「なぜビットコインを買え、と命じたかわかるか?」
「わかりません」
「即答かよ。いや、もうちょっと考えろよ」
「えーと。わかりません」
「もういいよ。儂が教えてやるよ。相場の世界で、最も価格変動が激しく難易度の高い暗号資産の世界。難しいからこそ、リスクもリターンも巨大だ。そういった諸刃の剣だからこそ、お前に任せた。」
「信長様は、私に期待してくれていると理解してよいのでしょうか?」
信長は少し微笑んだ。
「期待、か。少し違うな。儂は、お主の心の奥底にあるその反骨心が好きなんじゃ。表面的な人たらしとしてのお前ではなく、復讐と欲望に満ちた深層心理が…」
「信長様、あなたは私の過去をどれだけ…」
「まあその話は置いておくとしよう。
だが秀吉。儂が指示したのは、BTCビットコインを買え。ということだけじゃ。仮想通貨といえば、ビットコイン。あの銘柄を買っておけば、あとは勝手に値段は上がるはずだった。実際、BTCは2020年、年初来安値の50万円前後から、300万円近くまで、6倍の上昇をみせている」信長は眉を曇らせた。
秀吉は険しい顔で答える。
「しかし、私は、王者・BTC(ビットコイン)や、時価総額第二位のETH(イーサリアム)ではなく、 XRP (リップル)を主力部隊に選びました。それが今回の部隊壊滅の原因です…」
「なぜ、XRP リップルを主力銘柄に選んだ?数多くの銘柄からXRPに軍資金を多く賭けた理由が知りたい」
信長は決して怒ってはいなかった。ただ純粋に、秀吉の選択について疑問に思っていた。
「な、名前が可愛いからです…」
「TA・WA・KEEEE!!!」
「う、うそです!アイコンが…可愛いからです!」
「TA・WA・KEEEE!!!」
「う、うそです!リップルは、1XRPあたり50円前後と、値段が安くて投資しやすいからです。1BTCは50~250万円前後と、なんだか高くおもえまして~」
信長はタワケ、とは言わなかった。目をカッと見開き、秀吉を睨みつけた。
「秀吉。お主はなぜ儂に嘘をつく?」
「…バレていましたか」
「別に本心を話さんでもよい。だがな、思い出せ、秀吉。お前はなぜ、数々の投資商品の中から`暗号資産`を選んだ?そのオリジンだけは忘れるな」
「オリジン…原点ですか」
「ああ。そうだ。過去に戻ることはできない。変えられるのは未来だけ。しかし、未来を変えるためには、過去の自分の選択を振り返って分析する必要がある。お前はこれからも投資の世界で戦っていくんだろ?」
「ええ。もちろん。信長様。この秀吉、少し頭を冷やして、過去を振り返ってみます…」
秀吉はそう言って、自らのデスクに戻った。
彼の後ろ姿を見ながら、信長はぼそりと呟いた。
「XRP落城寸前か。`真の通貨`は、はてはて…」
信長は怒った。オフィス中に聞こえるほどの怒号が響き渡る。怒らないと約束をしていたが、頭に血が上ってしまったようだ。
「も、申し訳ございません…」秀吉はただただ頭を床にすりすりしている。
「XRP リップルとバイオ株には手を出すな、とあれほど言っておいたじゃろうが!!」
荒ぶる信長の様子を察して、2人の宿老も集まってきた。
「手を出すな?って、あれですか?乃木坂46勇士主演で実写化した作品?」
「それは映像研には手を出すな、だろ?それに乃木坂は46で終わりだから。46勇士って、真田10勇士みたいに言ってんじゃねえよ」
話に入ってきたのは、羽生長秀と柴口勝家だった。織田証券の古参社員の彼らは信長にものおじせず意見できる数少ない人物である。
「お主ら、邪魔をするな!」と言って、信長は2人の頭に鋭いジャブをかました。「イッテ」「体罰だァ」と言って、彼らはそれぞれの担当部署に戻っていく。
羽生と柴口の冷やかしによって、信長の怒りは少し収まっていた。
「秀吉よ。わが社の主力事業はなんじゃ?」
「それは、投資事業です。
株式投資軍、債券軍、貴金属軍、独立遊軍などに部隊を分けて、お客様から預かった元本を増やすことがわが社の使命だと認識しております」
「それは表向き、のことだ」
「表向き?」
「まあ、まだそこは知らんでいい」
「…?」秀吉は信長の意味深な発言に眉を曇らせた。しかし彼は賢かった。今の自分はまだ織田証券の最重要秘密を知るべき段階にはない、と自覚していたのだ。
「秀吉。今の社内の人事状況を把握しておるか?」
「はい。
今、織田証券には、4人の四天王がいらっしゃいます。
貴金属に詳しい最古参社員、柴口 勝家。
手堅く債券を運用する、羽生 長秀。
不動産を売買の第一人者、滝 一益。
株式のことならなんでもござれ、明地 光秀」
「そうじゃ。貴金属、債券、株式、不動産。投資の4つの収益柱がわが社の軸だ。四天王たちはそれぞれに得意な部門があり、軍資金と純利益を増やすために切磋琢磨しておる」
「しかし、信長様。私はその軸をメインに取り扱っていない…私に、ビットコインを買え。と命じたのは信長様ですよ?」
「なぜビットコインを買え、と命じたかわかるか?」
「わかりません」
「即答かよ。いや、もうちょっと考えろよ」
「えーと。わかりません」
「もういいよ。儂が教えてやるよ。相場の世界で、最も価格変動が激しく難易度の高い暗号資産の世界。難しいからこそ、リスクもリターンも巨大だ。そういった諸刃の剣だからこそ、お前に任せた。」
「信長様は、私に期待してくれていると理解してよいのでしょうか?」
信長は少し微笑んだ。
「期待、か。少し違うな。儂は、お主の心の奥底にあるその反骨心が好きなんじゃ。表面的な人たらしとしてのお前ではなく、復讐と欲望に満ちた深層心理が…」
「信長様、あなたは私の過去をどれだけ…」
「まあその話は置いておくとしよう。
だが秀吉。儂が指示したのは、BTCビットコインを買え。ということだけじゃ。仮想通貨といえば、ビットコイン。あの銘柄を買っておけば、あとは勝手に値段は上がるはずだった。実際、BTCは2020年、年初来安値の50万円前後から、300万円近くまで、6倍の上昇をみせている」信長は眉を曇らせた。
秀吉は険しい顔で答える。
「しかし、私は、王者・BTC(ビットコイン)や、時価総額第二位のETH(イーサリアム)ではなく、 XRP (リップル)を主力部隊に選びました。それが今回の部隊壊滅の原因です…」
「なぜ、XRP リップルを主力銘柄に選んだ?数多くの銘柄からXRPに軍資金を多く賭けた理由が知りたい」
信長は決して怒ってはいなかった。ただ純粋に、秀吉の選択について疑問に思っていた。
「な、名前が可愛いからです…」
「TA・WA・KEEEE!!!」
「う、うそです!アイコンが…可愛いからです!」
「TA・WA・KEEEE!!!」
「う、うそです!リップルは、1XRPあたり50円前後と、値段が安くて投資しやすいからです。1BTCは50~250万円前後と、なんだか高くおもえまして~」
信長はタワケ、とは言わなかった。目をカッと見開き、秀吉を睨みつけた。
「秀吉。お主はなぜ儂に嘘をつく?」
「…バレていましたか」
「別に本心を話さんでもよい。だがな、思い出せ、秀吉。お前はなぜ、数々の投資商品の中から`暗号資産`を選んだ?そのオリジンだけは忘れるな」
「オリジン…原点ですか」
「ああ。そうだ。過去に戻ることはできない。変えられるのは未来だけ。しかし、未来を変えるためには、過去の自分の選択を振り返って分析する必要がある。お前はこれからも投資の世界で戦っていくんだろ?」
「ええ。もちろん。信長様。この秀吉、少し頭を冷やして、過去を振り返ってみます…」
秀吉はそう言って、自らのデスクに戻った。
彼の後ろ姿を見ながら、信長はぼそりと呟いた。
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