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第9章 変わりゆく世界
1 もうすぐ、新学期
しおりを挟む夏休みが終わる。明日から新学期が、始まる。宿題の追い込みに子供だけでなく、職員も奮闘する。
「どうして、全員終わってないの!!??」
桜の愚痴が、止まらない。
「桜……今度の職員検診……」
「涼子、後にして!」
「でも……」
「でも???」
「急ぐん……」
「この状況にしたのは誰!!??」
祭りで、味を占めた涼子と子供達は、桜の心配をよそに、花火に動物園、映画と夏休みを満喫しすぎた。
蒼空は、そんな桜と子供達の変わらない毎日に 、幸せを感じる。
美桜も、明日から保育園に行くことになった。
話せないから、田崎さんが同行する事になっている。
桜との約束を果たす為に、6歳の少女が、決めた決断。負けん気が、強い所が桜と似ていて、何かうれしい。
「桜さん、ちょっと出てきます」
「うん、ゆっくりね」
蒼空の今日の勤務は、休みだ。出かける事にした。
「大木先生、こんにちは!」
「おぉ、蒼空君」
「ご無沙汰してます」
前施設長の大木を訪ねていた。
大木は、バスで50分の街の中に住宅街に住んでいる。
「あがって!」
「はい、おじゃまします」
落ち着いた感じのする応接間に通された。ソファーに腰をおろす。
「あの……」
「何でも、話して!」
「……はい」
蒼空は、最近、少し子供の頃を思い出している事、祭りの後の夜。桜のお腹から見えた、紫色の煙のような物の事を話した。
「僕、あの施設にいたような気がするんです……」
「……そう」
「おかしい……ですよね?」
「そうだね……あそこは、できたばかりの施設だからね……」
「そう……ですよね……」
西野児童養護施設は、西野院長が息子の勉強為に、はじめた施設。今の7人の子供が、初めての利用者だから、ありえない。
「思い違いじゃないかね……?」
「そうですか……」
思い違い……
記憶喪失、そうかもしれないけど……
「もう、1ついいですか?」
「うん」
「色が見えるんです」
「ほぉ……」
大木は、興味を持ったのか、脚を組んで 、顎に手の甲をあてる。
省吾の事を話し、最近、空が経験した事を素直に話した。
「それは、『共感覚』かもしれないね」
「『共感覚』……ですか?」
「『シナスタジア』とも言うね……」
人が持つ特殊な感覚だそうだ。
一般人口の1~2%の人が、持つと言われる。文字に色がついたり、音に色がついて見えると言う。
「珍しいね、同じ場所に、同じ能力を持つ人間が、いるなんてね……」
「でも、僕は最近の事だから……」
「省吾と互いに、共鳴したのかもしれない」
共鳴……
蒼空は、帰りのバスの中で、省吾と出会った日の事、そうめん流しの事を思いだした。
「美桜が書いた絵……桜さんが似てるっていってたな……」
眼鏡を省吾に貸してから、省吾は色が見えなくなった。
最近、蒼空は眼鏡をかけていない。
きっかけは、わからないけど 蒼空と省吾は同じ能力を持つ。
「ただいま帰りました」
「お帰り」
食堂で、夕食の準備をする桜の回りに、黄色のボールが、跳び跳ねるように見える。
「煙のようなもの見えないけど……」
「何?」
「いえ、あぁ、お腹すいた。今日は何ですか?」
「カレーよ」
「楽しみだ!」
蒼空は、不安な心をごまかすように、夕食のカレーを子供のように大げさに喜んだ。
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