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第7章 変化
2 蒼空と省吾
しおりを挟む明日には、新しい施設長が、やって来る。
施設長室を掃除する桜さんが、何だか嬉しそうだ。
蒼空は、そんな桜を見ていると、あの夜のできごとが、何だったんだろう……と、不思議に思ってしまう。
「桜姉ちゃんの色が変わった……」
「うん!? それじゃ……」
「桜姉ちゃんを包んでいた、青色が消えたみたい」
桜を見ていた、蒼空の隣に省吾が来て、そう言う。
「今は、どんな色をしてるの?」
「緑色かな……緑色と黄色の音符のような形が、とびはねてるよ」
「へぇ……」
あれから、省吾はよく話しかけてくる。
自分の事を少しでも話せた事が、嬉しかったみたいだ。
「省吾、いつも、見えてるの?」
「うんうん……」
色は、相手が、強い感情を抱いたときに、不意に見えるらしく 、今はコントロールできないらしい。
他の子供達と相変わらず、視線をあわせないようにしているが、よく話をするようになった。
以前、美桜が描いた絵を見て、自分と省吾が似ていると言ったことがあった。
蒼空は、少し子供の頃を思い出していた。
自分も、人見知りが強く、省吾のように他人の顔を見れなかったような 気がする。
成長するに従って、苦労はしたけど、いつからか、人の顔を見て話せるようには、なった。
省吾が、過去のでき事に苦しんだあの時から、今見る光景が、自分の記憶と重なる事がある。
まさか、自分も親の愛情を受けてこなかった……
そんな、不安がわき上がる。
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