虹のした君と手をつないで

megi

文字の大きさ
上 下
16 / 65
第5章 短くなった美桜の髪

2 桜の失敗

しおりを挟む
 年の瀬も押し詰まってきた。明日から二泊三日の旅に出る。行き先は、海に面した洞窟風呂のある温泉旅館。何年ぶりだろう?子供の頃、家族旅行で来て気に入り、結婚してから家人を誘って二人で来た。今回は、その後生まれた子も一緒。車で行きにくいので、家人は乗り気ではない様子だが、一度、野外活動クラブの合宿で泊まったことがある我が子は、「あ~あそこ?」と喜んでいる。
 宿泊先の近くにある世界遺産に登録されたところにも行きたい。子供の頃、訪れた時には、「滝なんか見たってつまらない」と思ったものだが、その滝をもう一度見たい。同じく、「何で、家族旅行で神社?」と思った神社も見てみたい。今の瑠紅が、その滝を、そしてその神社を見たら、どんな感想を抱くだろう?そんなところへ家族を連れて行った、今は亡き父親の気持ちが、今の瑠紅なら分かるだろうか?色々と楽しみである。瑠紅の過去と現在、そして未来をつなぐ旅路になればいいと思う。
 なんでそんなこと考えるかというと、来月、異動があるからだ。異動先の発表は、年明けになる。勤務先が受託しているところとの契約が他社に取られ、我らは新年早々追い出しを食らう。他の受託しているところに割り振られるのだが、結構な人数、動くので、希望先に行けるかどうか分からないし、誰と一緒に動かされるかも分からない。続けるかどうかは異動先が決まってから決めるなんて人もいれば、すでに退職の意を伝え、有休消化に入った人もいる。遠方の職場を打診されたため、転職を決めてきた人もいる。なんて潔い。すがすがしささえ感じる。
 で、「人の人生掛かってるんだから、ゲーム感覚で他社のシマをとるんじゃねえ!」と相手をドヤしたいところだが、「大コケしたらいいのに」とポソッとつぶやくくらいしか出来ない瑠紅は、居残りを表明し、ガチャッと当たりが出るのを待っている。その一方で、世の中、どんな仕事があるか、ネットで探してみたりもする。そこで、気づいたのだが……。
 アルファポリスで、自分の投稿チェックをしていると、画面に広告が出るんだけど、それ、転職サイトのものなんだよね。狙ってる?瑠紅のこと。「ふんふん、どれどれ?」とタップして見てはいるが、これ、「物書きはあきらめて、定職に就きなさい」ってこと?それ、真綿で首を絞めるようなものだね?確かに、前月の確定スコア「2」とかだけどね。来月は「15」かな。桃トラのおかげで、スコア7.5倍増し……って、これで、生活できますか?悪いこと言わないから定職、探しなさいって?いや、定職には就いてるけどね。異動が……。横取りされたんだけど、他社に……。コケてしまえ!えいっ!(←闇魔法かけるの図)
 でも、近頃は、面白い仕事があるんだね。Vチューバーのマネージャー、なんてある。漫画家っていうのもあった。そういうの、求人サイトで探すんだ……。
 情報収集が好きな瑠紅は、条件を変え、あれこれ探す。そこで働いている人は、どんな人なのだろうと考えながら。ふふ、何だか、ぴゅー太になったみたい。そうそう、今回、お蔵入りしていたお話をリメイクし、アルファポリスにUPした。フレンチブルドッグのぴゅう太目線で語られる「ぴゅう太の庭」というお話だ。一時期住んでいたことのある宝塚市を舞台に、その頃に見た情景を交えて描いた作品で、恋愛~婚約~新居探しという男女が出会い結婚に至るまでの一連の流れを疑似体験できるものとなっている。カテゴリーが違う気もするが、恋愛でもライト文芸でもないように思うので、ひとまずキャラ文芸に上げてみた。これで、何スコア貰えるだろうか?
 「行け!ぴゅう太!これでスコア取ってこい!」ジロッ!……あ、すいません。何卒、よろしくお願いします(←低姿勢)。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

じれったい夜の残像

ペコかな
恋愛
キャリアウーマンの美咲は、日々の忙しさに追われながらも、 ふとした瞬間に孤独を感じることが増えていた。 そんな彼女の前に、昔の恋人であり今は経営者として成功している涼介が突然現れる。 再会した涼介は、冷たく離れていったかつての面影とは違い、成熟しながらも情熱的な姿勢で美咲に接する。 再燃する恋心と、互いに抱える過去の傷が交錯する中で、 美咲は「じれったい」感情に翻弄される。

わたしのことはお気になさらず、どうぞ、元の恋人とよりを戻してください。

ふまさ
恋愛
「あたし、気付いたの。やっぱりリッキーしかいないって。リッキーだけを愛しているって」  人気のない校舎裏。熱っぽい双眸で訴えかけたのは、子爵令嬢のパティだ。正面には、伯爵令息のリッキーがいる。 「学園に通いはじめてすぐに他の令息に熱をあげて、ぼくを捨てたのは、きみじゃないか」 「捨てたなんて……だって、子爵令嬢のあたしが、侯爵令息様に逆らえるはずないじゃない……だから、あたし」  一歩近付くパティに、リッキーが一歩、後退る。明らかな動揺が見えた。 「そ、そんな顔しても無駄だよ。きみから侯爵令息に言い寄っていたことも、その侯爵令息に最近婚約者ができたことも、ぼくだってちゃんと知ってるんだからな。あてがはずれて、仕方なくぼくのところに戻って来たんだろ?!」 「……そんな、ひどい」  しくしくと、パティは泣き出した。リッキーが、うっと怯む。 「ど、どちらにせよ、もう遅いよ。ぼくには婚約者がいる。きみだって知ってるだろ?」 「あたしが好きなら、そんなもの、解消すればいいじゃない!」  パティが叫ぶ。無茶苦茶だわ、と胸中で呟いたのは、二人からは死角になるところで聞き耳を立てていた伯爵令嬢のシャノン──リッキーの婚約者だった。  昔からパティが大好きだったリッキーもさすがに呆れているのでは、と考えていたシャノンだったが──。 「……そんなにぼくのこと、好きなの?」  予想もしないリッキーの質問に、シャノンは目を丸くした。対してパティは、目を輝かせた。 「好き! 大好き!」  リッキーは「そ、そっか……」と、満更でもない様子だ。それは、パティも感じたのだろう。 「リッキー。ねえ、どうなの? 返事は?」  パティが詰め寄る。悩んだすえのリッキーの答えは、 「……少し、考える時間がほしい」  だった。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。

星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。 グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。 それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。 しかし。ある日。 シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。 聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。 ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。 ──……私は、ただの邪魔者だったの? 衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

甘すぎるドクターへ。どうか手加減して下さい。

海咲雪
恋愛
その日、新幹線の隣の席に疲れて寝ている男性がいた。 ただそれだけのはずだったのに……その日、私の世界に甘さが加わった。 「案外、本当に君以外いないかも」 「いいの? こんな可愛いことされたら、本当にもう逃してあげられないけど」 「もう奏葉の許可なしに近づいたりしない。だから……近づく前に奏葉に聞くから、ちゃんと許可を出してね」 そのドクターの甘さは手加減を知らない。 【登場人物】 末永 奏葉[すえなが かなは]・・・25歳。普通の会社員。気を遣い過ぎてしまう性格。   恩田 時哉[おんだ ときや]・・・27歳。医者。奏葉をからかう時もあるのに、甘すぎる? 田代 有我[たしろ ゆうが]・・・25歳。奏葉の同期。テキトーな性格だが、奏葉の変化には鋭い? 【作者に医療知識はありません。恋愛小説として楽しんで頂ければ幸いです!】

処理中です...