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第3章 不思議な少年
2 子供達の夜
しおりを挟む夕食が終わると、子供達は、それぞれの宿題をする。その後は、21:00までは自由時間。コミュティールームで、テレビを見たりカードゲームをしたりと、思い思いの時間をすごす。
省吾は、部屋の隅に座り、本を見ている。そんな様子を、他の子供達は、遠巻きに見ている。
21時15分に就寝となる。
「それじゃ、帰るね」
「大木先生、おばさんをよろしくお願いします」
「わかってるよ」
子供達の就寝を確認すると、大木は、春子を車に乗せて帰っていく。
「省吾は、ここで、上手くやっていけるのかなぁ……」
蒼空は、肩まで湯船につかり、立ち上る湯気の中に、省吾の姿を思い出す。
「まぁ……初日だしな……」
「ちょっと、蒼空ぁ! 何で、私よりも先にお風呂に入ってるの!?」
「あぁ……ごめんなさい」
「昨日も、言ったよねぇ……」
「はいっ! 今、出ますから」
桜は、自分よりも、先に、風呂に入る蒼空の事を、許せない。
もう、何度も注意される。
蒼空は頬を人差し指で、ポリポリと、かきながらたじろぐ(ハハハ……厳しい)。
施設の夜は、気が抜けなくて、就寝する子供達の見廻りも、蒼空達の仕事の1つ。
子供達の中には、眠れない子もいる。
「お腹が痛い……」
なんて、言う子もいる。
そんな時は、看護師の桜が、つきっきりで看病してくれる。
今晩も、扉を開け、部屋を覗く(よく寝てる……)。
入所したばかりの省吾の無垢な寝顔に、ホッとする。
蒼空は、自分の部屋に戻ると、窓から差し込む穏やかな月の光が、部屋の中に、差し込んでいる。
明かりを点けずに、しばらく、ベッドの上に立て膝をついて座り、窓から見える、薄い琥珀色の月を眺める。
「僕も、子供達と一緒だな……この場所しか、ないんだなぁ……」
子供達が、いつまでも、安心して眠ることができるように、静かに願う。
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