57 / 57
第二章
秋はすぐそこに
しおりを挟む暑い日が続く中、ロビンさんとメイプルちゃんは毎日、一期一会を手伝ってくれた。
冷蔵庫にあたるものが高額なこの世界では、食べるものは直前に作る、もしくは買うと言うスタンスのようで、朝からお店を開けても殆ど来店もなく、お昼頃からポツポツと人が流れてるので、オープンしてから営業時間を訂正した。
今では11時半~17時が営業時間となっている。
始めのうちは夜も20時頃まで営業してたのだが、電気はあまり出回っておらず、ランプを使う家庭がまだまだ多い為、節約のために夜は早く寝て、朝早く起きると言うスタンスの家庭が多い事と、夜に出かける店、即ち飲み屋と言う流れができているのも大きい。
それ故、仕込時間を考えてもかなりホワイトな営業時間だ。
一期一会は週に2日定休日を作ってはいるが、数日出てもらえるだけでもかなり助かっているし、農家の仕事もケインさんとピーター君が二人で行うには大変だから、必要な日はいつでも休んで大丈夫だと伝えたところ、そもそも一般的に休みが週に2日あって、さらに営業時間の短い職場は少なくそれ以上休むなんて考えられないと断られた。
以前暮らしていた世界では考えられないけど、こちらの世界では小さな子供も、家の仕事のお手伝いをしながら、空いた時間で遊ぶ。
また少し大きくなれば小遣い稼ぎに外の仕事を手伝い賃金を得ると言ったのが当たり前に行われているのだとルヴァンが教えてくれた。
最も驚かれたのは賃金だった。
「いつもお総菜貰って帰ってるのに、こんなに頂いちゃっていいのかしら…」
「勿論!だって、これはお二人の働きに対する正当な対価ですよ?お総菜だって売れ残ったもので、好きなものを選んでいただいてるわけでもないし、寧ろ少なくないか心配しているくらいです。」
この国では最低賃金というシステムはなく、秀でた能力や成績を残さない限り高級取りになる可能性は限りなく低いのだ。
特に、小遣い稼ぎで働きに出た子供の日給は4時間程度働いても1000円程度なのだ。
時給計算すると250円とか、この世界では林檎一個すら買えない計算だ。
かといって大人になって見習い仕事を始めてもそのニ~三倍が平均なのだとか…
一体どうやってやりくりしてるんだ、この世界の人は。
考えただけで元の世界で普通に生活なんて送ることができるはずがない。
クラっと目眩を起こしそうになると
「サラ、気にしてもこの世界ではコレが普通の生活なんだよ。」
とルヴァンが仕方ないと言うふうに首を振った。
「それに普段の食事は各家庭で飼っている鶏から卵を手に入れて、とか、生活に苦しくなると野草を煮詰めて、とか普通らしいから。」
一年先にこの世界にやってきたルヴァンが小さく首を振りながら教えてくれる。
納得できる内容ではないが、それがこの世界の理だと言うのであればどうしようも無い。
郷に入っては郷に従え、だ。
それでも何かできることはないのか?
そう考えてしまうのは驕りなのか?
そんな日が続くなか、気づけば辺りは紅葉が進んでいた。
0
お気に入りに追加
2,238
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(131件)
あなたにおすすめの小説
忘却令嬢〜そう言われましても記憶にございません〜【完】
雪乃
恋愛
ほんの一瞬、躊躇ってしまった手。
誰よりも愛していた彼女なのに傷付けてしまった。
ずっと傷付けていると理解っていたのに、振り払ってしまった。
彼女は深い碧色に絶望を映しながら微笑んだ。
※読んでくださりありがとうございます。
ゆるふわ設定です。タグをころころ変えてます。何でも許せる方向け。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
悪役断罪?そもそも何かしましたか?
SHIN
恋愛
明日から王城に最終王妃教育のために登城する、懇談会パーティーに参加中の私の目の前では多人数の男性に囲まれてちやほやされている少女がいた。
男性はたしか婚約者がいたり妻がいたりするのだけど、良いのかしら。
あら、あそこに居ますのは第二王子では、ないですか。
えっ、婚約破棄?別に構いませんが、怒られますよ。
勘違い王子と企み少女に巻き込まれたある少女の話し。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
言いたいことはそれだけですか。では始めましょう
井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。
その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。
頭がお花畑の方々の発言が続きます。
すると、なぜが、私の名前が……
もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。
ついでに、独立宣言もしちゃいました。
主人公、めちゃくちゃ口悪いです。
成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。
ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。
112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。
愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。
実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。
アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。
「私に娼館を紹介してください」
娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
更新有り難う御座います。
さぁ、食欲の時間だ!(いつも通り)
……カボチャや芋類、栗・キノコ……。
そして穀物も収穫時期!
コメントありがとうございます!
そして更新遅くなりましたm(_ _)m
秋の味覚は誘惑が多いですよね!
更新ありがとうございます。物語はいよいよ行楽・・・食欲の秋ですねw
コメントありがとうございます!
そして更新遅くて申し訳ないですm(__)m
ようやく秋を迎えられそうです!
更新有り難う御座います。
スタッフが増えました?
コメントありがとうございます!
無事、従業員を確保できました(⌒▽⌒)