異世界で総菜屋始めます

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第二章

失敗料理と小さな教師

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なんでこうなった。

目の前に繰り広げられた地獄絵図に思わず頭を抑える。

下準備は問題なく終わったのだ。
ロビンさんが手伝ってくれたお陰でそれはそれはスムーズに。

イカ焼きは良しとしよう。

そう。

イカ焼きは許せる。
形を作るの初めてなら難しいもん。
けど問題は焼きそばだ!ただ炒めるだけなのに。

総菜屋のメニューも味が同じになる様にレシピを作ってはいるが、屋台メニューのレシピは早急に作るべだと脳が警報を鳴らす。

ルヴァンが作る料理は消炭になるので火を使わせる事はしないにしても、ソースの味を気に入ったのか、有ろう事か中華麺4袋に対して業務用の焼きそばソースを半分以上使い切ったのだ。
窓を開けて換気をするも調理場はソースの匂いで溢れかえり、多すぎるソースは鉄板の上の麺をびちゃびちゃに浸らせていた。ソースが麺や野菜だけにシミ切らず、さらに蒸発しきっていないソースに浸っている状態だ。

下準備係はルヴァンとダダン。

カキ氷はピーターくんとメイプルちゃん。

イカ焼きの調理はロビンさんと私。

そして焼きそばの調理はトルーとリンラン。
(これはトルーが必死に作った組み合わせだ。)

勿論、このソースに浸った焼きそばを作ったのはこの2人である。

ロビンさんに焼き加減や成形に慣れてもらう為に練習して貰って、ピーターくんとメイプルちゃんにカキ氷機の使い方を説明しているチョットした時間にこの事件は起きたのだ。

「で、何か弁明は?」

頭を抑えるながら聞けば2人して顔を合わせた後、

「だって。」

「ねぇ~。」

と肩をすぼめている。

「罰として2人はこの焼きそばちゃんと食べる事。流石にこの量は多いだろうから私が半分は貰うね。」

「え~~~。サラ酷い~~~。」

「そうだぞ、リンランに失敗したものを食べさせるっていうのか?!」

「ん?私が言った量を無視して勝手に作ったんだからちゃんと食べてもらうよ?食材が勿体無いでしょう?」

少しイラッとして少し声のトーンを落として言えば2人がビクッとしたのが分かった。
そんなに圧をかけた覚えは無かったんだけどな。
それでも尚、“でも”“だって”と言う2人に呆れていればエプロンをクイっと引っ張られた。

「サラちゃん、できたの!食べて?」

「上手にできただろ?!」

どこか誇らしげなピーターくんとメイプルちゃんの指差す方にはさっきまで作りかたを教えた(と言っても削ってシロップをかけるだけ)カキ氷があった。

「凄い、上手に作れたね!これ私が食べてもいいの?」

と聞けば大きく首を縦に揺らす。
大きな瞳をキラキラとさせてカキ氷を差し出してくれる。

な、なんて可愛い…。
正直怒りなんてどこかへ行くくらい癒される。

「ありがとう」

と受け取り口にすればキーンと頭が冷えた。
なんだか懐かしい感覚に嬉しくなりつつ2人にお礼を言う。

そっか、シロップだけだと甘すぎるけど、ココに氷が入る事で程よい甘さになるんだよね。
もちろん氷だけでは味もないし楽しくもないのだ。

びちゃびちゃにソースに浸った焼きそばを見て、これを美味しく食べるにはあれしかないと手を加えることにした。

業務用の炊飯器の中を確認して、蓋を開けて粗熱を取っている間に下処理をすることにした。
本来は今日来てもらった人にせめてものお礼に食事を振る舞おうと炊いていたご飯だったがまさかの所で役に立った。

鉄板の上から救出した焼きそばの麺をまな板の上で2センチくらいに細かく刻み、具材も同じように細かく刻んでいく、あとは簡単。
余分なソースを拭き取った鉄板の上にごま油を引いて、粗熱を取ったご飯を炒めていく。
塩、胡椒を軽く振り、全体にほんのり醤油をかけ少しご飯がパリッとしてきたところで先ほどの刻んだ焼きそばを投入した。

「えっ!何やって…」

と慌てた声も聞こえたが気にしない。

さらに炒めて行って少しだけソースを足し、また炒め、味を確認してみれば適度な味付けになった。

ちょいちょいとピーターくんとメイプルちゃんを呼び熱々のそば飯を試食してもらう。

「暑いから気をつけてね?」

と言えばフー、フーと口を突き出して息を吹きかける姿が可愛らしい。
そして口に含んだ2人が声を揃えて

「「美味しい!!」」

と高らかに宣言すれば、失敗した筈の料理が劇的な進化を遂げたことに驚いている様子だった。

「さ、みんなで食べよう。リンランとトルーは食べないみたいだから6人で!」

と強調して言えば2人は何処か焦った様子だ。

「ロビンさん、よかったらケインさんの分持って帰りませんか?」

「いいんですか?」

「もちろんです。多分皆さんここでお腹いっぱいになるでしょうし、家に帰って食事を作る手間が省けるじゃないですか!よかったらイカ焼きもロビンさんが作ったものですし一緒に持って帰って下さい。」

と伝え、お店で使う容器にそれらを詰めてロビンさんに渡せば“助かります”と喜んでくれた。
6人分のそば飯を盛り付けて、6人・・で食べ始めればしゅんとした様子のリンランとトルーが視界に入った。
だけど、大人気ないかもしれないがどうしても許す気にはなれずツーンとしていれば、ピーターくんが

「なんで、“ごめんなさい”ってしないんだ?大人なのに?」

と2人に聞いていた。
そこで2人ははじめて言い訳ばかりをして反省をしていなかったことに気づいたのだろう。

それはもう。大袈裟なくらい盛大に謝罪の言葉をツラツラと並べてきた。
メイプルちゃんがくいっと私の袖を引っ張り

「ごめんなさいしたら“いいよ”って言わないと。」

と教えてくれる。
小さな2人に大人が諭されてしまったのだ。

けど先ほどまでの意固地になっていた気持ちはなくなり、残っていたそば飯を器によそい2人の前に差し出した。

「今度はレシピ通りに作ってね?」

と念を押すことは忘れない。

その後はいつも通りに楽しい時間が過ぎて行った。
2人にはお礼として後日お菓子をプレゼントしよう。
そう胸に誓った。




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