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第二章
友情のホットドッグ⑥
しおりを挟む今回はトルーの作ったものではないが、ホットドッグを食べて貰えばそれもまたいい反応で、とりあえず料理の件はまとまった。
後はトルーとダダンの仲を修復しなければならない。
どうしたものかと考えを巡らせていると、リンランののんびりとした声が聞こえてきた。
「そう言えば、最近二人は一緒にいないのね~?」
「「えっ?」」
「二人の仲のいい姿を見ていると、男の子の友情?っていうのかしら?私、好きよ~。」
「!?」
その言葉に“ギクリ”という効果音が似合うほど焦った様子を見せたのは、勿論トルーだった。
そしてすぐさま
「…お、俺らは仲良しだからな!」
とダダンの肩に腕を回し、何とも分かりやすいアピールをし始める。
戸惑いながらもトルーの反応に嬉しそうに
「うん…もちろん!」
と返すダダンの笑顔はそれはそれは眩しいものだった。
何だかんだ纏まって、ほっこりした気持ちで三人を見守っていたのだけど、この平和な空気に更なる爆弾を落としたのは他でも無い、先程二人の仲を纏めたリンランである。
「こんなに美味しい料理を作れるサラって凄いわ~。サラが男の子だったら絶対に恋しちゃう。」
とニッコリとこちらを見て妖しく微笑んだ。
もしかしてリンラン気付いてる?
胸はバクバクと音を立て、汗が背中を伝う。
悪い事をしたわけでもないのに、二人の仲裁のダシに使われて、更に料理の事で利用されたと感じられてしまったかもしれない。
いや、その通りではあるんだけど…
リンランに嫌われてしまう!
そんな私の葛藤に更なる追い討ちをかけるのは、トルーの鋭い視線だ。
攻撃的な視線からは“同性だからと言って許さない”という声がビシバシと伝わってくる。
すぐ隣にいたルヴァンの服を掴み必至に助けを求めるも、小さく首を振り“諦めろ”と言わんばかりの表情を向けられた。
一難去ってまた一難。
この後に待ち構えるリンランへの謝罪とトルーへの弁解。
どうにも手がかかりそうな内容に小さく肩を落とした。
ーーーおまけーーー
「おい、アイツを出せ!」
銀色の髪を束ねた青年が、噛み付くのではないかという勢いでこちらに身を乗り出してきた。
“アイツ”とは“サラ”の事だろう。
偉そうな態度をとるこの男に再三辛辣な視線を向けてやるも、ヤツは気にする素振りすら見せない。
それどころかさらに図々しさを見せてくる。
「聞いてるのか?」
「サラは忙しいのでお断りします。」
「なっ!?」
きっぱりと断れば鳩が豆鉄砲を食ったような顔を見せた後、こちらを凄い顔で睨みつけている。
「俺が誰だかわかっての物言いか?」
「勿論ですよ、殿下。」
嫌味たっぷりで微笑むも、彼にはその嫌味すら通じないようだった。
「なら呼べ!」
この煩い男のせいでサラがこちらを気にしてチラチラと様子を伺ってるのがわかる。
これ以上長引かせるわけにもいかない。
「殿下、お耳を…」
そっと耳元で呟けば、悔しそうにしながら口をモゴモゴとさせて静かになった。
いつまでこの方法が通じるものかと頭を悩ませながらも、当分は使えるであろうこの方法で乗りきるしかないと、小さく息を吐いた。
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