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第二章
友情のホットドッグ⑤
しおりを挟む「「「!!!」」」
1人満足気な顔でクリームパンを頬張るルヴァンとは違い、他の3人は初めて食べるクリームパンに驚いた様子を見せて
「甘い!美味しい~!」
「凄い…」
「……」
と三者三様の反応を見せた。
見たことの無い美味しい料理を食べた時の衝撃と感動は異世界でも共通のようだ。
その中でも食い付きがいいのはやはりと言うべきかダダン。
「本当に、本当にこれを新商品として販売してもいいんですか!!?」
「もちろん。私はハウフロートの食が発展してくれたら嬉しいし。」
ありのままを伝えれば何度も頭を下げてお礼を言われた。
そして、リンランも
「こんな甘くて美味しいパンを買えるなんて沢山通っちゃいそ~!」
と大袈裟なほどに喜んでいた。
リンランがダダンの所に通うかもしれないと知って面白くないのはトルーである。
少しムスッとしたのがわかったが、リンランがいる手前、気をつけてみていなければわからないくらいの反応だった。
「良い反応が返ってきてよかった。そしたら、次はトルーのお店で販売してもらいたいローストビーフね。」
目の前に焼かれた状態のブロック肉を置くと、そこまで良い反応は返ってこず、“焼いた肉か”くらいの反応が伺って取れる。
トルーの苛立ちも高まっていく。
「兎に角、切り分けていくからこのソースをかけて食べてみて。」
と特性のタレを取り出すも反応は変わらず、切り分けていけば、端の部分が切れた事でピンク色のお肉が顔を覗かせる。
「「「え?生の肉?」」」
揃った三人の声に笑いそうになるが、丁寧にお肉を切り、三人のお皿に乗せた。
「どうぞ。」
と声をかけるが食べる気配がない。
けど、こればかりはしょうがない。この世界では生肉を食べる習慣がないのだから。
中々動くことの無い手を見兼ねて、ソースをかけてあげるもやはりそこから動く気配はない。
どうしたものかと考えていると、横からそれはそれはいい笑顔で此方を見つめるルヴァンと目が合った。
ここはルヴァンの反応を見てもらった方が早いかな?と考え、ルヴァンにも同じように切り分けソースをかけてあげる。
待ってましたとばかりに皿を受け取り、直ぐ様に口に運ぶ。
うっとりとした顔をしながら噛み締め、頬を緩めじっくりその味を楽しんだのだろう。
“ごくり”とそれを飲み込んだ後、
「サラ!もっと、もっと食べたい!!」
とすぐに皿を突き出して来た。
“しょうがないなぁ”とおかわりを切り分け、それを、すぐさま美味しそうに口に運ぶルヴァンを見ていた他の面々も“ゴクリ”と喉を鳴らし、一番最初にトルーがローストビーフを口に運んだ。
「これ、美味っ」
つい溢れた言葉に本人も驚いてるようだ。
それでも、先程までの苦虫を噛み潰したような表情が崩れた事で、少しだけでも心が開けたのかと思うと嬉しくなる。
トルーに続いて口に運んだほかの面々も嬉々とした声を漏らす。
内心ガッツポーズを決めつつ表には出さずにトルーに
「ローストビーフを新商品にする気はあります?」
ちょっと意地悪かもしれないけど散々無視され続けたのだ、これくらいの意地悪は大目に見て欲しい。
「……許可してもらえるなら……。」
「例のものを作ってもらえるなら。」
「……わかった。」
凄く不本意そうではあるが、明らかに他のお店に差をつけることができるレシピを前に、肩を落としながらもソーセージを作ることを同意してもらえた。
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