異世界で総菜屋始めます

むむ

文字の大きさ
上 下
42 / 57
第二章

友情のホットドッグ④

しおりを挟む

そして、翌日。
時はやってきた。

定休日という事もあり、昼過ぎにトルーの所へ向かう。
その前に、ダダンの所へよると、お願いしていたパンを形成する所だったので、急遽、昨日作ったカスタードクリームを包んで拳のような形になるように作って見せて、同じように作って焼いてもらった。

ダダンはと言うと、中に入れたクリームの正体が気になっているようだったけど、これは後でのお楽しみだ。

そうこうしているうちに時計は3時を指している。

「そろそろ、トルーの所に行こう。」

と出来上がったばかりのクリームパンと手を加えていないローストビーフを持って外に出れば、タイミングよく声をかけられた。

「サラ、お待たせ~。」

声の主は私の友であり、トルーの想い人のリンランである。

「ごめんね、急に呼び出して…。」

と手を合わせて謝れば

「美味しいものを食べれるって聞いてるし問題ないわよ~。」

とフォローしてくれる。
本当に可愛さに磨きがかかっている。

トルーに追い帰されない為と言うのもあるけど、リンランの気持ちがわかれば、二人のわだかまりも消えるだろうという安直な考えではあるが、話ができないで終わる事はないという事だ。

因みに、リンランには今回の事は何も言わず、トルーとダダンのお店、そして一期一会の新作料理の試食と称して声をかけている。

「さ、トルーの所に行こう。」

とグイグイとリンランの背中を押せば、クスクス笑いながらも付き合ってくれる。

「「こんにちは~。」」

と二人でトルーのお店に入ればそれはいい笑顔で

「いらっしゃい!」

と返事が返ってきて、リンランの後ろの私と目が合った途端に苦い顔をされた。
そして更に続けてルヴァンとダダンが入ってくると少し驚いた顔をしていた。

何も知らないリンランが

「新作の試食に呼んでくれてありがと~。」

とトルーにニコニコと笑顔で伝えれば“えっ?”っと驚いた顔をしたのち、目をそらした私を見て少し引き攣った笑顔で

「いや、来てくれてありがとう。奥にどうぞ。」

と返していた。

どんな反応されようと、取り付く島がないよりはマシだもんね。
と自分を納得させながらリンランを筆頭に奥のスペースに進んでいき、皆がそのスペースに収まったのを確認して、思い切って話を始めた。

「えー、そうしたら三店舗の新メニュー予定の料理の試食会を始めようと思います。」

何を言ってるんだどいう顔で眉間に僅かにしわを寄せるトルー、楽しみ顔のリンラン、訳知り顔のルヴァンに、少し戸惑った様子のダダン。
四者四様の反応を無視して、はじめにクリームパンを取り出す。

「ダダンのパン屋さんからはこのクリームパン!」

先程まで一緒に作ってはいたが、まさか自分のお店の新商品だとは思っていなかったダダンは“えっ!”と声を上げたが、何も聞かなかったことにして話を続ける。

「このパンの中にはカスタードクリームと言う甘いクリームが入っていて、甘いおやつパンなの。
百聞は一見にしかずって言うし食べてみて。」

と言えば

“百聞?”と聞き馴染みのない言葉に首を傾げていた面々も“何回も聞くより一度見た方が早いって意味だよ”と言えば“なるほど”とそれぞれがテーブルに出されたクリームパンに手を伸ばした。






しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

初耳なのですが…、本当ですか?

あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た! でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

処理中です...