異世界で総菜屋始めます

むむ

文字の大きさ
上 下
39 / 57
第二章

友情のホットドッグ①

しおりを挟む

思い立ったが吉日!

次の日が丁度定休日だったのもあり、ダダンとトルーの所へと向かう事にした。

はじめにパン屋に行って、ダダンにお店で扱う新メニューの為に新しくパンを作って欲しいことを話した。

ダダンは栗色の髪と淡い水色の瞳をした犬の獣人、といっても、頭に某テーマパークで売っている垂れた付け耳を付けているようにしか見えないくらい普通の人間に見える。
人当たりが良いのか、柔らかい雰囲気でしっかりと最後まで話を聞いてくれた。

「……という事で、このパンを作って欲しいんです。」

試しに作ったコッペパンを目の前に差し出し反応を見る。

「これ、少し食べてみてもいいですか?」

「勿論!」

興味を持ってくれたことが嬉しくて、飛びつくような勢いで返事をしてしまう。

一つ手に取り一口分千切ると、香りを楽しむように鼻を近づける。
そして静かに頷き口に含む。

何というか、凄く大人の魅力を感じる!

「とても美味しいです。」

「!!」

「このパンの作り方を教えて貰えるんですか?」

「勿論です!」

「そうですか。このパンはサラちゃんのお店に下ろす以外に、この店でも販売していいのですか?」

「はい!」

「是非作らせて欲しいですね。納金はどうしたら良いですか?」

納金?首を傾げる私の横で、ルヴァンがダダンに

「それは、このパンの権利、またそれに伴う販売に対しての支払いの事を言っているんですか?」

「はい。あまり高額ですと難しいかと思いまして。」

えっと、そういうのって貰うものなの?
収入を増やそうとも思ってないし、もっと全体に還元できたらと思ってるだけだし。

「私としては何も考えていません。」

思ったままを伝えれば、驚いた顔を隠す様子もなく此方を見て固まっていた。

「元々、私の故郷では当たり前に知れ渡っているレシピで、私が考えたものでもありませんし、特許?とかを取るつもりもありません。寧ろ、受注する分は賃金を支払いますし、その…少しだけ普通に販売するよりもお安くして貰えると助かります。」

と言えば嬉しそうに笑って

「そういう事でしたら、この話お受けさせていただきます。」

と丁寧な仕草で深く頭を下げられた。

その後はどれくらいの金額で販売できそうかなどの相談をしつつ、ダダンさんのお店で販売する金額と下ろしてもらう金額、全てを見て今お店で出しているコロッケパンにもこのパンを下ろしてもらうことになった。

「そうしたら、明日、一度完成品をお持ちしますね。もし直すところがあればおっしゃってください。」

「ありがとうがざいます。よろしくお願いします。」

と難なくパン屋を後にした。

これはトルーの説得もスムーズにいくのでは?と軽い足取りでお隣に向かったのだが、そんなに簡単にもいかず…

商品の説明と、その商品に使うソーセージを作って欲しいというお願い。
そして試食、とここまでは順調だったのだ。
間違いなく順調だった。

な、の、に

「ダダンのところのパンと一緒に使われるなんてたまったもんじゃねー!」

と、そこから話は難航していた。

目の前の赤いたてがみを持つ青年はオレンジの瞳を光らせながら此方を威嚇でもするかのように睨みつけている。

「だけど、これにはお二人の力が必要だと思っています。」

「けど、それは自分で作ったんだろ。だったらこれからも自分で作ればいいじゃねーか!」

「確かに自分で作りました。だけど以前此方の似た商品のように私は作り慣れていないので太さを均等にすることも難しいですし、やっぱりここは専門の方に作ってもらった方が美味しいと思って貰えるものができると思ったんです。」

そこまで言って、視線を試食してもらったソーセージに落とす。

羊腸に詰めていく作業は、均等に絞ることが難しく、そこにあるソーセージはどうしても太さが均等でないものだった。

それに比べて、この店で出している保存食として用いられるという塩みの強いソーセージのような食べ物は、長さこそ少し短いが均等な太さの魅力的なものだった。

必死に説得を試みるも、トルーに頷いて貰えることはなく、その日は帰路に着いた。




しおりを挟む
感想 131

あなたにおすすめの小説

【完】お義母様そんなに嫁がお嫌いですか?でも安心してください、もう会う事はありませんから

咲貴
恋愛
見初められ伯爵夫人となった元子爵令嬢のアニカは、夫のフィリベルトの義母に嫌われており、嫌がらせを受ける日々。 そんな中、義父の誕生日を祝うため、とびきりのプレゼントを用意する。 しかし、義母と二人きりになった時、事件は起こった……。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

夫が寵姫に夢中ですので、私は離宮で気ままに暮らします

希猫 ゆうみ
恋愛
王妃フランチェスカは見切りをつけた。 国王である夫ゴドウィンは踊り子上がりの寵姫マルベルに夢中で、先に男児を産ませて寵姫の子を王太子にするとまで嘯いている。 隣国王女であったフランチェスカの莫大な持参金と、結婚による同盟が国を支えてるというのに、恩知らずも甚だしい。 「勝手にやってください。私は離宮で気ままに暮らしますので」

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

好きな人に『その気持ちが迷惑だ』と言われたので、姿を消します【完結済み】

皇 翼
恋愛
「正直、貴女のその気持ちは迷惑なのですよ……この場だから言いますが、既に想い人が居るんです。諦めて頂けませんか?」 「っ――――!!」 「賢い貴女の事だ。地位も身分も財力も何もかもが貴女にとっては高嶺の花だと元々分かっていたのでしょう?そんな感情を持っているだけ時間が無駄だと思いませんか?」 クロエの気持ちなどお構いなしに、言葉は続けられる。既に想い人がいる。気持ちが迷惑。諦めろ。時間の無駄。彼は止まらず話し続ける。彼が口を開く度に、まるで弾丸のように心を抉っていった。 ****** ・執筆時間空けてしまった間に途中過程が気に食わなくなったので、設定などを少し変えて改稿しています。

結婚30年、契約満了したので離婚しませんか?

おもちのかたまり
恋愛
恋愛・小説 11位になりました! 皆様ありがとうございます。 「私、旦那様とお付き合いも甘いやり取りもしたことが無いから…ごめんなさい、ちょっと他人事なのかも。もちろん、貴方達の事は心から愛しているし、命より大事よ。」 眉根を下げて笑う母様に、一発じゃあ足りないなこれは。と確信した。幸い僕も姉さん達も祝福持ちだ。父様のような力極振りではないけれど、三対一なら勝ち目はある。 「じゃあ母様は、父様が嫌で離婚するわけではないんですか?」 ケーキを幸せそうに頬張っている母様は、僕の言葉にきょとん。と目を見開いて。…もしかすると、母様にとって父様は、関心を向ける程の相手ではないのかもしれない。嫌な予感に、今日一番の寒気がする。 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇ 20年前に攻略対象だった父親と、悪役令嬢の取り巻きだった母親の現在のお話。 ハッピーエンド・バットエンド・メリーバットエンド・女性軽視・女性蔑視 上記に当てはまりますので、苦手な方、ご不快に感じる方はお気を付けください。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました

月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処理中です...