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第二章
友情のホットドッグ①
しおりを挟む思い立ったが吉日!
次の日が丁度定休日だったのもあり、ダダンとトルーの所へと向かう事にした。
はじめにパン屋に行って、ダダンにお店で扱う新メニューの為に新しくパンを作って欲しいことを話した。
ダダンは栗色の髪と淡い水色の瞳をした犬の獣人、といっても、頭に某テーマパークで売っている垂れた付け耳を付けているようにしか見えないくらい普通の人間に見える。
人当たりが良いのか、柔らかい雰囲気でしっかりと最後まで話を聞いてくれた。
「……という事で、このパンを作って欲しいんです。」
試しに作ったコッペパンを目の前に差し出し反応を見る。
「これ、少し食べてみてもいいですか?」
「勿論!」
興味を持ってくれたことが嬉しくて、飛びつくような勢いで返事をしてしまう。
一つ手に取り一口分千切ると、香りを楽しむように鼻を近づける。
そして静かに頷き口に含む。
何というか、凄く大人の魅力を感じる!
「とても美味しいです。」
「!!」
「このパンの作り方を教えて貰えるんですか?」
「勿論です!」
「そうですか。このパンはサラちゃんのお店に下ろす以外に、この店でも販売していいのですか?」
「はい!」
「是非作らせて欲しいですね。納金はどうしたら良いですか?」
納金?首を傾げる私の横で、ルヴァンがダダンに
「それは、このパンの権利、またそれに伴う販売に対しての支払いの事を言っているんですか?」
「はい。あまり高額ですと難しいかと思いまして。」
えっと、そういうのって貰うものなの?
収入を増やそうとも思ってないし、もっと全体に還元できたらと思ってるだけだし。
「私としては何も考えていません。」
思ったままを伝えれば、驚いた顔を隠す様子もなく此方を見て固まっていた。
「元々、私の故郷では当たり前に知れ渡っているレシピで、私が考えたものでもありませんし、特許?とかを取るつもりもありません。寧ろ、受注する分は賃金を支払いますし、その…少しだけ普通に販売するよりもお安くして貰えると助かります。」
と言えば嬉しそうに笑って
「そういう事でしたら、この話お受けさせていただきます。」
と丁寧な仕草で深く頭を下げられた。
その後はどれくらいの金額で販売できそうかなどの相談をしつつ、ダダンさんのお店で販売する金額と下ろしてもらう金額、全てを見て今お店で出しているコロッケパンにもこのパンを下ろしてもらうことになった。
「そうしたら、明日、一度完成品をお持ちしますね。もし直すところがあればおっしゃってください。」
「ありがとうがざいます。よろしくお願いします。」
と難なくパン屋を後にした。
これはトルーの説得もスムーズにいくのでは?と軽い足取りでお隣に向かったのだが、そんなに簡単にもいかず…
商品の説明と、その商品に使うソーセージを作って欲しいというお願い。
そして試食、とここまでは順調だったのだ。
間違いなく順調だった。
な、の、に
「ダダンのところのパンと一緒に使われるなんてたまったもんじゃねー!」
と、そこから話は難航していた。
目の前の赤いたてがみを持つ青年はオレンジの瞳を光らせながら此方を威嚇でもするかのように睨みつけている。
「だけど、これにはお二人の力が必要だと思っています。」
「けど、それは自分で作ったんだろ。だったらこれからも自分で作ればいいじゃねーか!」
「確かに自分で作りました。だけど以前此方の似た商品のように私は作り慣れていないので太さを均等にすることも難しいですし、やっぱりここは専門の方に作ってもらった方が美味しいと思って貰えるものができると思ったんです。」
そこまで言って、視線を試食してもらったソーセージに落とす。
羊腸に詰めていく作業は、均等に絞ることが難しく、そこにあるソーセージはどうしても太さが均等でないものだった。
それに比べて、この店で出している保存食として用いられるという塩みの強いソーセージのような食べ物は、長さこそ少し短いが均等な太さの魅力的なものだった。
必死に説得を試みるも、トルーに頷いて貰えることはなく、その日は帰路に着いた。
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