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第一章
長雨と女神様と内緒話⑥
しおりを挟むそして気がついた。
冷蔵庫内に入れたものが入れてすぐに自分が望む状態になっているのなら、これはかなり美味しい機能である。
クッキーの生地も寝かせる必要もないし、煮卵も味を沁みさせるのに時間がかからない。
ぬるい飲み物も入れて取り出せばあら不思議、冷たい飲み物に!!ってことなのですよ?もう魔法のような冷蔵庫に感動すら覚え始めてきた。
シャーベットを頬張るアン様を横目に、どうせならルヴァンのものは別のものを作ろうと創作意欲も湧いてくる。
卵を卵黄と卵白に分けて、卵黄と砂糖、少量の蜂蜜をハンドミキサーでしっかりと混ぜて、少し持ったりとしてきたら別のボウルで卵白をしっかりメレンゲ状に。
フワッフワのメレンゲを見ていると何だが出会った頃のルヴァンの毛を思い出す。
そうしたら牛乳を火にかけて、ポツポツと温まって気泡が浮いてきたのを確認して先ほどの卵黄液を少しずつ加えてかき回していく…
ここまでくると甘い香りがふんわりと蒸気に乗ってくる。
そして既に甘い香りのする鍋にバニラエッセンスを入れて火から下ろして冷蔵庫へ、メレンゲと生クリームを一緒に混ぜたら、冷蔵庫で熱の取れた液体と、一緒に混ぜて深めのタッパに入れて冷凍庫。
そして直ぐに取り出せば…
凄い!本当に私のイメージした通りだ。
固まりかけの液体をもう一度スプーンで空気を入れるように混ぜて冷凍庫、またすぐに取り出して混ぜて冷蔵庫と3、4回繰り返して取り出せはひんやりとよく冷えたバニラアイスが出来上がった。
まさかバニラアイスがこんなに短時間で仕上がるとか誰も想像できないよね。
懐かしいな、それこそ熱を出した時は何時も食欲がなくなる私におじいちゃんがバニラアイスを買ってきてくれたっけ…
そんなことを思い出しながら出来上がったアイスを器に綺麗に入れていくと
「何じゃそれは!」
とシャーベットを食べ終えたアン様が興味津々にこちらを見ていた。
「バニラアイスです。」
と答えれば、
「妾にもよこせ!」
とそれはそれは予想通りの反応を返されて、少し笑いながらどうぞと差し出したら直ぐに口に運び入れて
「うーーーん、美味じゃ!」
とどんどん食べ進めていく。
そんなアン様に、
「そうだ、アン様、ルヴァンが体調を崩していて寝込んでるんですが、会っていきますか?」
と聞けば、顔色を変えて首が取れるのではと心配するほどに、ブンブンと振っている。
「会わないんですか?」
と聞けば
「今回はお忍びじゃ、奴に妾が来たことは教えてはならぬ、絶対、絶対じゃ!!いいか絶対に言うでないぞ!」
残りのアイスを一気に口に放り込んで、それじゃあな、と言わんばかりに手を挙げるとアン様は来た時同様、ボム!と音を立てて霧のようなもに視界を奪われたと思ったら、視界が晴れると同時にその場から消えていた。
何であんなに慌ててたんだろう。と言う疑問を残してルヴァンの元にアイスを届けようと階段を上ろうとしたところで声が聞こえる。
『鞄にいくつかアイテムを入れといてやる、だから絶対にルヴァンに今日のことは言ってはならんぞ。あと、ヤツには聖水を飲ませておけ、あっという間に身体も良くなろう。またな。』
と何処かから声が聞こえた。
そう言えばそんなものもあったなと、思いながら一度キッチンに戻りコップを持って鞄から聖水を取り出す。
イメージなんて湧かないからペットボトルの水をイメージしたら成功したようで、ラベルには〈神の聖水〉と書かれていた。
なんか地球とかで普通に売っていそうとか思ったけどそんなことは言わない。
きっと凄いものだと思うから。
アイスが溶ける前にルヴァンの所に急ぐ。
外は今も雨が降っていた。
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