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第一章
禁断の果実はお手軽に
しおりを挟む他愛のない話、
楽しい食卓、
楽しいお酒、
美味しいチーズ、
そして、ルヴァンの事、
全ての事を思い出しながら、台の上を眺める。
この量の食材、どうしよう…
見たことのあるものから、初めて見るもの。多くの食材で溢れかえっている。
実際、形状と味が一致しないものがあると言うことも分かったので、此処はリンランに貰ったルーペの出番だ!
………
……
…
「うわぁ…」
何これ?
ひたすらルーペで鑑定していたら、林檎に混じって不思議なものを発見した。
見た目はどう見ても周りの林檎と同じなのに、表示がおかしい…
ーーーーーーーーーー
名称:魔林檎
禁断の果実
見た目、味は林檎であるが、土地の魔力を多く吸収することで、ごく稀に育つ果実。高級品。
食べたものの魅力を最大に引き出すことから、魅了の果実と呼ばれ、惚れさせ薬とも呼ばれる。
瀕死の状態で食べると、大地の魔力を魅了する事で、回復を手伝う。
ーーーーーーーーーー
惚れ薬は聞いたことあるけど、惚れさせ薬って…
相手に食べさせても意味がなくて、自分で食べて相手を惹きつけるってヤツなのね。
そして、高級品。
この世界の食べ物で、高級品とかどれ程の価値があるんだろう…
考えてみたけどわかるはずもなく、違う方へと考えを飛ばした。
これを食べれば、少しは私にも色気とやらが出るかもしれない。
そして街を歩けば、リンランみたいにモテモテ…
大きく頭を振って、その考えを否定する。
顔見知り程度の人に、突然好意を寄せられても怖いだけでしかないだろう。
それでこそ、ニュースとかでよく見た、
一人暮らしでご近所さんに挨拶しただけで、好意を持ってると勘違いされて、ストーカーになって、挙句、事件に巻き込まれる。
そんな事になるかも知れない。
そこまで妄想して、はたと気付いた。
なんで魅力が増えた事でモテると思ったんだろう。皆無に等しい魅力が増えたところで、普通の人がちょっといい人、程度の変化だろう。
図々しい考えをした。
取り敢えず、私が持ってても持て余してしまう。
リンランに返そう。
そう決めて鞄に手を伸ばす。
と
「光ってる?」
え?故障?鞄なのに?無限収納の影響?
恐る恐る触れれば、ブワッと目の前にルーペで見たときのように四角いフレームが浮かび、鞄の中身を表示している。
スクロールして下に進めば、女神からの贈り物、という項目があって
ーーーーーーーーーー
〈女神からの贈り物〉
神酒×∞
禁断の果実×∞
圧力鍋
聖水×∞
ーーーポーション×∞
ーーーーーーーーーー
なる、謎の項目が増えていた。
ちょいまて、知らないうちに、禁断の果実が無限にあるよ!そして、何だか凄そうなお酒と水に混じって圧力鍋あるんですけど!
そもそも凄そうなものがお手軽入手って…
「はぁ…」
アン様、圧力鍋は嬉しいけど、他が色々おかしすぎるよ!チラリと手に持った果物を見て
鞄にしまった。
どっと疲れがきて、出かける気分では無くなってしまったのだ。リンランには次に会った時に返そう。
ダメになっても無限にあるのだ。
そう考えて椅子に、深々と腰掛けた。
いっそ、禁断の果実を数滴入れた惣菜でも作ろうかしら。此処の料理を食べると、魅力が増し、恋が叶う。的な噂とかになったりして?
否、それは何だかヤバイ薬のようではないか…
安価で美味しい物を、を目指しているのに、これを作ったら作ったで違う趣旨のお店になってしまう。
ただの林檎なら使い道も多くて、嬉しい事このうえないのに…
神酒と聖水も鑑定したほうがいいとは思うけど、見てもいいことがない気がする。
見てしまったけど、見なかった。
私は見なかった。
自己暗示をかけながら、数日後に控えた価格決定の時用の下準備を始めるのだった…
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