異世界で総菜屋始めます

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第一章

ウサギの野菜売りと小さな嘘①

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暖かくて、凄く眠い…

異世界こっちに来てから早半月、昼食を食べれば心地いい陽気に包まれていて何もしたくなくなる。
勿論、お腹は空くからご飯は作るんだけど…

メニューが決まってきて、お店も改装が終わり、看板もしくは暖簾をかければすぐにでも開店オープン出来そうだ。
だけど毎日毎日繰り返し考えても単価を下げるためのアイデアや、物価を下げて食べ物の収穫を安定させる方法が上手く捗らなくて行き詰まった。

八方塞がりって言うのはこう言う事なんだなぁ…

「ふぅ」

きっとこの春の陽気が五月病の如くやる気を削いでくれちゃってるのだ。

私がいた世界にほんは、此方に来る前日は北風が冷たくなってきて秋の味覚が美味しくなってきた頃だった

のに

突然春の陽気になんて当てられたら

「こうなるよーーー!!」

半ば逆ギレの不満をぶちまける様に大きな声で叫べば

いつのまにか近くに来ていたルヴァンが心配そうに此方を見ている。
遂にトチ狂ったと思われているのかもしれない。

「私の居た世界と気候が違ったからちょっと思うところがあって、ね…」

誤魔化すように笑えば成る程と頷いている。

「この世界の季節はサラ嬢の居た世界と同じで四季があり、今は春です。」

あ、やっぱり

と言うか、

「ルヴァン地球に詳しいね?」

「サラ嬢が此方に来ると決まってからサラ嬢が過ごしやすい様に以前住んでいた環境と此方の環境を調べ尽くしましたから」

なんでもないことの様にサラッと告げられた。

はぁ、ルヴァンがそこまでしてくれてるのに五月病とか何とかって甘えてた私がダメダメな気がしてきた。

うぅー、今は16歳でも元は26歳なのに、しっかりしなくちゃ
何もしなかったら何も変わらないわけだし。

深呼吸をして気持ちを落ち着かせる。

料理が決まったからと言って改良できる物もあるかもしれない、それにそこからの発見もあるかもだしグダグタしてる暇はないんだよね。

気持ちを奮い立たせていると来客を報せるベルの音がした。
此方に来てから初めての来客者だ。

「はーい」

此方のベルは玄関の横にある紐を引くと上の階に繋がっている鈴のようなものが鳴り、来客を教えてくれると言うかなりアナログな感じのものだ。

返事をしながら一階に駆け降りて扉を開けば小さな子供が2人、私を待っていた。

誰?

ウサギの様な耳を持つ二人はきっとウサギの獣人なのだろう。
耳を立てて此方を見ている男の子と、男の子の後ろに隠れたロップイヤーの女の子、手には大きな籠を持っている。

「あの、野菜買ってくれませんか?」

と男の子が言うと女の子が小さな声で

「キャベツと人参…があります。」

と教えてくれる。
家のお手伝いかな?

「見せてもらってもいい?」

コクンと頷けば籠の中を見せてくれる。

野菜は料金の書いた紙袋に小分けになっていて鮮度は良さそうだ、だけどマーケットの金額の大凡倍の値が付いている…

「うーん。」

買ってはあげたいけどどうしたものか
どう見ても高すぎる。

悩んでいると男の子が必死に訴えてくる。

「これが売れないとご飯が食べれないんです。」

だから…と元気が無くなってしまう。

本当か嘘かはわからない。けど中央で見る子たちよりも細く服も擦り切れている。
嘘をついている様にはみえない。

「そうね、そしたらキャベツと人参一つずつ貰おうかな?」

と言えば嬉しそうに何度も"ありがとうございます"と言われる。

何か事情があるんだろう。

いつもお取り寄せで此方の人達よりかなり節約をしてるから、今日くらいはね。

商品を受け取って料金を支払えば何度も頭を下げて二人は帰っていった。

「さて、これで何を作ろうか。」

そうだ!

スマホで必要なものを打ち込めば早速目の前に届く。
はぁ、スマホ様々だ!

早速手を洗って卵を割れば綺麗なオレンジ色の黄身が目に入ってきた。

久しぶりに卵ご飯とか食べたいなぁ。

けど今はそんなこと考えてる余裕はない。スピード勝負なのだ、卵黄だけ別のボウルに移して塩を入れてハンドミキサーで混ぜながら少しずつ酢を加えてまた混ぜる。

過去に電動のミキサーを持ってなかったが故手動でひたすら混ぜたがあれは辛かった。
なんて浸りながらサラダ油を混ぜて、ひたすら混ぜれば徐々に白っぽくなってきた。
そこでもう少し酢を加えてレモン汁を数滴入れてツノが立つくらいまで混ぜれば特性マヨネーズの完成!

スプーンに少しとって口に運べばコレコレこの味!とニンマリしてしまう。

保存が効くので煮沸消毒して熱をとった瓶に出来上がったマヨネーズを詰めて、冷蔵庫で保管すればレパートリーが広がることを喜んだ。

そしたら次だ

キャベツは数枚綺麗にめくり大ぶりな葉は避けておく、
中央の小ぶりな葉と人参、玉葱をみじん切りにしてボウル塩を加えて揉み込めば面白いくらいに水が出て少ししんなりしてくる。

水気を取って同じく微塵切りにしたハムを加えて、そこに胡椒を加えて先ほどのマヨネーズと混ぜればコールスローサラダの出来上がり!

あっという間に二品できた!

これだけスピーディに出来るなら惣菜メニューとしても優秀だ!

このままあと数品は作りたい、と言うか私が食べたいだけなんだけど…

今朝の気だるさが嘘の様に今はやる気に満ちている。
もう勢いで作るしかないよね!

人参は新鮮だったから葉が付いてたし、それを綺麗に洗って三等分ぐらいに切る、
熱したフライパンにゴマ油を入れて葉を入れたらすぐに麺つゆを入れて軽く炒める。
火の通りは早いからさーと炒めるのがポイント、そしたら火が通りすぎない様にお皿に移して胡麻を振れば人参の葉のゴマ油炒めの出来上がり!

ゴマ油の匂いに釣られてルヴァンがヒョコンと顔を覗かせる。

「サラ嬢、ご飯ですか?」

もう、何、あの可愛い生き物は!

「試作品を作ってるの、さっきお昼を食べたからこれは夜に食べよう」

って言えばちょっとションボリして見えた。

ちょいちょいとルヴァンを手招きしてコールスローサラダをスプーンですくってあーんと差し出せば、パクっと口に含み目をキラキラさせている。

私今、餌付けをしてるわ

「今はこれだけね。夜楽しみにしてて」

と言えば元気な返事が返ってきた。

そのあとルヴァンは思い出した様に、

「アンジェリカ様に呼ばれているので少し出かけてきます、夕方には帰るので私の分のごはん取っておいてくださいね!」

と念押ししてずっと何だろうと思っていた冷蔵庫の横にある小さな扉に入っていった。

ちょっと気になって扉を開いてみたけど扉の先は壁で、きっと使者しか通れない様になってるんだと納得した。

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