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第一章
異世界に転移しちゃいました
しおりを挟む此処は首都ハウフロート。
誰もが1つは便利な力を持つこの世界は人間は勿論、獣人や妖精など様々な人種が共存する平和な世界。
私、久遠 沙羅はそんな異世界で今日からお惣菜屋さんをオープンする事になりました。
◇◇◇
事の始まりはひと月ほど前。
私は女神様の気まぐれで刻跨ぎ人という異世界に飛ばされる候補者に選ばれ地球から別の世界にあるハウフロートに飛ばされた。
そんな気まぐれな女神様の名前はアンジェリカ様
見た目の神々しさが嘘の様にサバサバしていて竹を割ったように中々の男前な性格で、アン様によると選抜は空箱から名前の書かれた紙を取ってコレって感じで決めたらしい。
何とも適当である。
もともと自宅の部屋で寝ていたはずの私は夢の中で金色の長い髪にエメラルドグリーンの大きな瞳の整った姿の人と出会った。
一瞬天に召されたのかもと思うくらいの神々しさに夢の中なのに頬をつねった所で可笑しそうに笑う彼女は話しかけてきた。
「其方が久遠沙羅か」
「あの、どちら様ですか?」
「妾は其方等人間で言うところの神でアンジェリカと言う。アンと呼んでくれ」
「はぁ」
いくら夢とは言えこんなに神々しい方が中二病なんて、私の夢のクオリティ…
「腑抜けた返事だな」
「だって私の夢の中ですよね?私さっき眠ったはずなので」
「此処は夢であり現実じゃ」
「はぁ」
「其方にはこの世界を離れファラーシオと言う異世界で生きてもらう。都合よく其方は天涯孤独、故に手続が楽じゃ、拒否権も無い」
嗚呼、これはお前の物は俺の物、俺の物は俺の物、的な強靭なハートの持ち主かお金で買えないものはないとか言っちゃう唯我独尊的な精神の持ち主だ。
「あー…わかりました」
「物分りが良く助かる」
だって拒否権無いって言ったじゃ無い、なんて言ったら面倒な奴に違いない。
其れに夢だし。
「明日目を覚ましたら其方はハウフロートにある家で目を覚ます。取り敢えず暫くは新しい世界になれれる様に2年くらいは豪遊しても遊んで暮らせる分のお金は与えよう」
「えっ!其れどんな好待遇ですか!」
思わず夢なのにツッこんじゃった
「妾は神だからな、其方が少しでも幸せになれる用準備をするのは妾の仕事」
そんな自信満々に胸を張ってドヤ顔しなくても…
「それに転生…否、転送者か?はチートスキル持ちと相場で決まっている様だからな、色々加護をやろう」
何それ、転生?転送?者の相場とかあるの?
「其方の頑張り次第でスキルは足していってやろう」
「ありがとうございます?」
「初めはアレとコレとソレに、あとコレとコレも…」
何やら楽しそうに私の名前を書いた用紙に色々な事を書き出している。
一人であーだこーだと言いながら唸っている。
「其方は何か希望はあるか?」
「え?」
「知る人もいない、趣味嗜好も環境も違うところに行くのだ1つくらいは希望を聞き入れてやる」
妾は鬼ではなく神だからなとまた胸を張っている。
まぁ夢でも異世界に行くと言うならば
「地球の食品を手に入れる能力が欲しいです」
「ほぅ」
「食事は慣れたものがいいから」
「叶えてやろう、勿論食事以外も手に入る様にしよう」
やった!
おっと、夢だった。
「そろそろ時間じゃな。詳細は使者に聞く様に」
ん、使者?
手を上下にパタパタと振り遠くなっていくアン様の姿をぼーっと眺めていたら視界が明るくなり急に意識が浮上した。
うーーーん
思いっきり背伸びをすれば段々と目も覚めてくる。
中々濃い夢を見た。
大きな欠伸をして周りを見渡せばいつもと同じ、そう、いつもと同じ…じゃない!?
部屋が何だかんだ豪華だし広いし何だか乙女主義な感じ、其れにベッドがふかふか過ぎる
もしかしてまだ夢?
「おはようございます、サラ嬢」
え?
「おはよう、ございます?」
誰?
「私は女神様より遣わされた使者のルヴェルトと申します」
もふんッと言う効果音が聞こえそうなほどにまあーるい羊?が首元の黒いリボンを自慢気に撫でながら挨拶してくる。
本当に丸い。そして喋ってる。大きな毛玉に手足がちょこんと生えて何ともマスコットキャラクターの様だ。
やっぱり夢?頬をつねれば痛い。現実の様だ
「ルヴァンと気軽に呼んでくださいませ」
「かっ…」
可愛すぎる!もふりたい!
現実だと言うならばそれでも良い、この可愛い生物をもふもふして過ごせるなら…
嗚呼なんて素敵なもふもふ、幸せ…
「サラ嬢!何で私はこねくり回されているのですか」
「もふもふ、幸せー」
「サラ嬢、おやめください」
あれ?私もしかして悪代官的なことしてる?
そちのもふもふは素晴らしい、さあもっと近う寄れ!げへへへ…
みたいな事になってる?
「えーと、ルヴァンごめんね?つい素敵なもふもふだったから…」
「私の毛質が素晴らし過ぎたせいならば仕方がありません」
あ、いいんだ。
ルヴァンは"おっほん"とわざとらしく咳き込めば私に向き直り
「サラ嬢、先ずはこちらをお渡しします」
とスマホを差し出してきた。
「スマホ!」
と喜べば
「ソレはスマホで有りスマホで有りません。メールや電話は出来ません。インターネットの検索とカメラ機能、あとはこのボタンから地球の物を購入することができます。価格は地球の最安値で仕入れることができます。」
「おおーー?」
スマホなのにスマホの役割を果たしてない!
けどこの機能素晴らしい、だって最安値、つまりキャベツ一玉がが都会だと200円オーバーなのに田舎価格の80円とかで買えるって事か!夢のような機能だ。
「ただし生きている動物などは買えません。あ、ステータスの確認もできますよ」
あれ?
「お金ってどうすればいいの?」
「ファラーシオの通貨は地球の日本と同じなのでご安心下さい。サラ嬢はアンジェリカ様より2年は豪遊して暮らせるだけの資金を頂いてますので財布を開けば必要な額が入ってます」
そう言えばそんな話があったような、そしてセルフ銀行
「因みに此方の家もプレゼントだそうです」
「えぇー!」
いたせりつくせりだ
「先ずはこのハウフロートの街を案内しますので此方の洋服に着替えてください」
用意された服は白いブラウスにハイウエストのロングスカートに靴下、それから編み上げのブーツ
お洒落に疎いから何とも言えないがほんのりカントリーな雰囲気だ。
「お待たせ」
「先程渡し忘れましたが此方を」
小さな鞄とお財布を渡された。
「この鞄にはハンカチとティッシュ裁縫セットに絆創膏、それからアンジェリカ様から送られてくるものが入っていたりします。」
「そんなに小さいのに」
「此方は無限収納の機能が付いています、取り出したいものをイメージすればそれが手元にやってきます。試しに、お財布を中に入れて逆さまにしてみて下さい。」
言われるがままに財布を鞄に入れて逆さまにするが何も出てこない
マジック?
ハンドパワーです!みたいな?
手を入れてみても何も出てこないし、明らかに鞄の深さ以上に手を入れてるのに底がない
「次に財布をイメージしてみて下さい」
またまた言われるがままに財布をイメージすると手にしっかりと財布が触れて取り出せた。
「す、凄い」
「この鞄はサラ嬢にしか使えません。又サラ嬢以外の手元に行っても戻ってきます」
「…神アイテム」
引ったくりにあっても大丈夫!
100回あっても大丈夫!
「アンジェリカ様の加護ですから」
間違いなく神アイテムですね
「あと先程お伝えしたステータスですが、サラ嬢のギフト、この世界で全ての人種が必ず1つはもつ能力は浄化です。スマホでも確認出来ますが、サラ嬢はギフトの他にも能力を与えられているので追々確認してみて下さい。」
わからない事は聞いてくれればその都度お教えします。と胸を張っているルヴァンが可愛すぎる。
気を取り直してルヴァンを抱きしめて家の外に出て鞄から鍵を探して施錠する。
そっと見上げれば、あぁやっぱり、家の中を移動してる時にも思ったけど、気づいてたけど…デカイ
私が寝ていた部屋は3階にあったけど一人暮らししていた部屋よりでかかった。なのに、3階には4部屋は部屋があった。
一人暮らしには大きすぎる家。2世帯住宅と言われても頷けるくらいだ。
もう家を貸して生計を立てれるんじゃないか?
ただ、1階は一枚の仕切りを除いて何もない空間だったから実質2階からが居住空間だったけどね。
2階部分にも鍵付いてたし。
少し呆けているとルヴァンが心配そうに此方を伺っていた
「サラ嬢?」
"ううん"と首を振って何でもない、と伝えてハウフロートの街へと足を踏み入れた。
「わぁー凄い…妖精に狼男?あ、猫耳だ!」
「このフォラーシオと言う世界では人間だけでなく妖精や獣人と様々な種が共存しているんです」
「言葉は通じるの?」
勿論です、と頷くルヴァンは私も精霊ですのでと新しい情報をくれる
「それにアンジェリカ様が言語の能力を授けてくれているはずなので基本的にはわからない言葉は無いはずですよ」
ふーん
「あ、あれはお店かな?」
「そうですね、マーケットとと言われる市の様なものです」
「林檎とかオレンジとかあっちと同じ果物もあるんだ」
少し嬉しくなってきた
値段を見るまでは
「り、林檎一個が500円」
え?東京価格より高くない?
「サラ嬢、彼方に屋台が有りますよ」
「屋台!」
折角だからこの世界の食べ物も食べてみたいな
あれはイカ焼きかな、1本1000円…高過ぎるけど篦棒に美味しいのかもしれない、物凄い行列だし。
ものは試しだ!
最後尾に並び順番が回ってくる。
鳥の様な口、否、嘴の店主に注文して支払いをすればすぐに湯気を立てたイカ焼きが出てきた
「毎度、はい出来立てで暑いから気をつけてな」
「ありがとうございます」
少し離れた噴水広場で腰掛けて一口食べれば
「うんんん?」
何とも言えないお味
「サラ嬢、如何ですか?そこの屋台はとても人気で、この辺りの屋台で一番美味しいイカ焼きとして有名なんですよ」
これが一番…
「素材の味が活かされてていいと思うよ」
本当に、素材の味しかしないと言っても過言で無いくらいに想像していたイカ焼きと異なるのだ。
下処理されたイカに少し塩を振りかけて只焼いたそんな逸品だ。
甘辛い匂いはしなかったがまさかのまさかだ。
「只、私の世界のイカ焼きとは少し違うみたい。」
「そしたら彼方の食堂は如何ですか?この周辺では指折りの食事処でお値段は張りますが貴族の方も召し上がりにいらっしゃるんですよ」
そうよね、たった1つの食事でこの世界の食事を知った気になっちゃ駄目だよね。
豪遊しても暮らせるだけの資金も頂いてるしここはひとつ贅沢に行ってみよう。
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